閉じた瞳と記憶の全て
「恨み 憎しみ 恐怖 これらの"記憶"を綺麗に消す事が出来るとしたら君はどうする?ただし…やっぱり私も機械じゃないんだもの。一部分を消す事なんて出来ないわ。ふふ…察しの悪いあなたはわからないか…なら、身を持って知りなさい…?そして全てを忘れましょう。」
「やめてゥお願い、もうどんな苛め方されたって我慢するァするからそんな事しないでァ」
だって私は アレ をしないと…
「ふふ…もう遅いよ。ムースちゃん?最後の最後まで哀れな君を見れて良かったよ。さよなら」
「ーァ」
口答えの間もない内に私の意識は飛んだ…。
・:*:・゚'★.。・:*:・゚'☆・:
「…。」
目が覚めた。フカフカした場所だけど体が動かない。
その上麻痺したかのように全身ヒリヒリして微妙に痛い。吐き気もする。
恐らくお腹が極限の状態なのだろう。視線をスライドする。
丁寧に皿に木の実が盛られている。メモみたいなのもある。けれど、メモは皿の横だからよく見えない。
私は無理矢理体を動かして、自分の肩から掛かってるバックの中身を見る。
メモ帳とボールペンとボールペン用消しゴムって書いてある消しゴム。
メモ帳には私のプロフィールが書かれていて、記憶は中途半端に消されたと書かれている。
何で私はこんなくだらない事を書いたのだろう。
そんな事を考えていた。
すると奥のドアが開いた。
「あ、起きた?」
…。この子誰…?知らない…
「えっと…ムースちゃん?」
見た目が可愛いエネコロロはそう言ってきた。
「…誰ですか…?」
不信感を覚えた。
何故私に自己紹介をしたのか?
そもそもベットがあって、エネコロロが奥のドアから出てきたという事はここはエネコロロの家…
ならどうして私を連れてきたのか。意識が無い合間に。
しかも木の実まで用意してるし…安全とは言えないだろう。
「え…っと、忘れたの?僕はココロだよ。」
「何が目的なんですか…Pなら持っていません…ァ」
私は少し睨んでみる。だって本当にお金は持っていないのだから。
「あ…。本気なのかな…あはは……。ムースちゃん、倒れてたから。確認するね?名前は?」
「……ムース。」
一瞬迷った…この知らないエネコロロに名を名乗るべきかどうか…だけど見た感じ悪いポケモンでは無さそうだから…
「良かった…名前は覚えてる…じゃあ、ムースちゃんは種族としてはどれに入るの?」
「…ピカチュウとイーブイの雑種類。」
「これも大丈夫…そうだ、お腹空いてる?そこの木の実、食べて良いよー」
「……。」
まさか、あの木の実…毒とか入ってないよね…
「どうしたの?あ、木の実ジュース?忘れてたよー。今持ってくるから…」
そう言うとエネコロロ…ココロは奥のドアへと消えた。
逃げるなら今しかないけど…体が動かない。こんな時くらい動いてよーゥ
ガチャッ
「お待たせー…って 何してるのィ」
ココロの視界に映ったのはベットの上でじたばたしてるムース。しかも動く度に
「痛ぁゥ」とか
「うぁぁぁ」みたいな事を
言ってる。
「ムースちゃんィ落ち着いてァ痛いのィ」
「うぁぁ…痛い〜ォ」
ココロは手荒くコップを置くと
「病院行かなきゃァ今すぐにゥ」
勘違いされたけど病院で治れば動けるよねゥ
・:*:・゚'★.。・:*:・゚'☆・:
車に乗せられて15分程度で病院が見えてきた。
病院に着くと、ハピナスが出迎えてくれた。
「今回はどのようなご症状で?」
「体を動かそうとしたら痛いんです…」
「ふむふむ…筋肉痛とかそういう…」
「筋肉痛を通り越してます。」
「骨にヒビとか…」
「多分それは無いかと…。」
「寝違え…」
「そんな事で病院に来ません。」
私はつい突っ込みをいれてしまう。周りの視線が刺さるから控えめにしておこう。
「コホン。とりあえずごめんなさい。私を治して下さい。」
周りの視線が刺さる。その目は
「とりあえずって何だよ」
と言ってるように見える。
「…すいません。調子に乗りました。私を治して下さい。」
そこまで言ってようやく周りの視線から解放される。
だからポケモンって生き物は嫌いなんだ。見ず知らずの子供に大人気ない視線を向けて。
それに…
それにーー?
思い出せない…もっと重要な…いや、最大の理由があった筈…
なのに思い出しそうでわからない。
体の内側が痒いようなこの感覚。私はこの中途半端な感じが嫌いだ。
そうこうしていると順番が来た。
「ほら、ムースちゃん行くよ」
「え?ちょ…痛っゥ」
「あっ…ごめん」
私はココロに引っ張られて奥の部屋に入った。
調べてもらった結果、原因不明。痛み止めの薬をもらった。
「お医者さんでもわからないのか…何でだろうね」
「薬…これ効くのかな…」
「…あの〜ムースちゃん…つかぬことを聞きますが……その…家あるの?」
「何でそんな事を?」
「いや…えっと、その…ね。言いづらいんだけどムースちゃん、外で拾ったから…」
「…え?」