第十四話 報告ついでに一休み……とはいかず
シラヌイはツノ山で発揮した力を使いドテッコツを追い詰めたが、後一歩の所で戦意喪失しピンチとなった。しかし、そんな四人の窮地を救ったキュウコンとシザリガーのおかげで、ドテッコツ達は撤退していった―――
〜☆〜
〜『ディザスター』地下三階 親方部屋〜
「そう、そんな事があったのね」
ラミナスは、目の前にいるシラヌイから睡蓮峠で起こった出来事について聞いていた。
するとそれを気に、クルスがドテッコツ達の事を(大部分は省いた)説明をした。
「ほんっと強かったんだよ!なんか訳の分からない技を使った瞬間、いきなりパワーアップしたんだからさ!」
「パワーアップ?」
「ああ、それに目的は分からないが、奴らはその池にいたギャラドスを狙っていたようなんだ」
「なるほどね………ありがとう、有益な情報をくれて」
ラミナスがそう言うと、シラヌイはよかったという顔をしながら懐にしまった報告書を彼女に渡した。
「これが今回の報告書だ」
「ありがとね」
ラミナスは満面の笑みでシラヌイからの報告書を受け取った。
「ラミナス。そういえば、俺達を助けてくれた彼らは一体誰なんだ?」
シラヌイはラミナスに聞きながら振り返ると、そこにはミレイナ達三人と『ブレイヴ』と『サハラ』の四人と、彼らを助けてくれたキュウコンとシザリガーがいた。
「彼女達はここの探検隊よ」
「そうなのか!?」
「ええ。ティラから睡蓮峠に、ギャラドスの群れがいるっていう話を聞いて私は彼女達を送り出したの」
「それに、この人らは強いんだからな!」
説明を聞いていたシラヌイに、アビスが当たり前な説明をすると「そんなの言われなくてもわかるでしょ」とシリアの突っ込みが入る。
「始めまして。私はチーム『ティタルア』のリーダー、アルナス=フレイヤよ。種族はキュウコン」
キュウコンもといアルナスは、シラヌイに笑顔を見せながら自己紹介した。それに伴いシラヌイも自己紹介をする。
「始めまして。俺はチーム『エクストリーム』のリーダー、シラヌイです。種族はピカチュウです」
「噂は時々聞いているわ、あなたは私達ベテランの間では期待の新人君なのよ」
アルナスがシラヌイに関しての情報を聞いていた事を言うと、彼は謙虚に答えた。
「いえ、そんな。俺は期待されるほどのポケモンではないですよ」
「フフッ、謙虚なのね」
アルナスはそれを聞いて、シラヌイを暫く見ていた。彼は彼女に声を掛けようとした途端、シラヌイに向かって歩き出した。
「いい目をしているわ」
「え?」
そしてシラヌイの目の前に止まると、アルナスは九本の尻尾で彼を優しく包み込むと自分の方に引き寄せた。
「なあぁっ!?」
「えぇっ!?」
「ちょっ!?」
「「「「!?」」」」
アビス、クルス、コルムは驚嘆して他の四人は目を見張った。
包まれているシラヌイは、自分の胸がすごく脈打ちしている事を感じながらアルナスに訊ねた。
「あ、あの〜………アルナス、さん?」
――あなたに、光の導きがあらんことを――
シラヌイの耳に、心行くまで染み渡る声が広がった。
アルナスはそれだけ言い終えると、部屋の扉に向かって行き目の前で立ち止まると振り返ってシラヌイに言った。
「突然ごめんなさいね♪」
アルナスは笑顔で言うと、扉を開けて部屋を出た。シラヌイ以外の七人は未だに唖然としていた。その頃合いを見計らったのか、シザリガーがシラヌイに声を掛けた。
「びっくりしたか?」
「は、はい。でも今のって一体………」
「アルナスがいた村でやっていた事なんだよ、祈りに自分の思いを込めて相手の無事を願うためのものなんだよ」
シラヌイはそれを聞いて「そうなんですか」とあの祈りを不思議そうに思いながら納得した。すると、シザリガーは自分の事を紹介していない事に気付いて自己紹介した。
「おっと自己紹介がまだだったな。俺は『ティタルア』の一員、シザリガーのシルス=ザーネルだ。よろしくな」
「あ、はい。よろしくお願いします」
自己紹介を終えたシルスは「じゃあな、期待の新人君」と言い残して部屋を出た。「俺は期待されるほどの奴じゃないんだけどな………」とシラヌイは小さく呟いた事は、誰も気付く事はなかった。
「まぁ、何はともあれみんなお疲れさま。ゆっくり休んでね」
ラミナスの言葉に釣られて、シラヌイ達は部屋を出てそれぞれの部屋に向かった。
〜☆〜
次の日、『エクストリーム』はリンゴの森にいた。居る理由は勿論、お尋ね者退治である。
「十万ボルト!!」
「グラスミキサー!!」
「波動弾!!」
「シャドーボール!!」
四人が一辺に放った技が、真っ直ぐお尋ね者のヤルキモノに命中した。
「いぃぃぃぃやああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」
「逮捕ニゴ協力イタダキ、アリガトウゴザイマス。コチラガ今回ノ報酬デス」
四人は『ディザスター』に戻っており、お尋ね者のヤルキモノを懲らしめた彼らは地下二階の掲示板前でジバコイル保安官から依頼の報酬を貰っていた。
その後ろには、先程シラヌイ達が懲らしめたヤルキモノが涙目になりながらコイル達に拘束されていた。
「ソレデハコレデ失礼シマス」
ジバコイルはそう言うと、ヤルキモノを連れていった。
「さて、今日も一通り終わった所で、食堂にいきますか」
「うん」
「賛成」
「おー!」
シラヌイは背後の三人に声を掛けると、それぞれ返事をしてくれたのを聞き、共に地下一階へと続く梯子に向かう途中だった。
「いたいた。お前達〜」
シラヌイ達は声を掛けられて、その方を向くと『ディザスター』親方代理のムクホーク、ティラ=ヴルツェルがこちらにやって来た。
「食堂に向かう途中すまないが、ラミナス親方が呼んでいるんだ。少し付き合ってくれないか?」
「ラミナスが?」
「そうだ」
それを聞いた四人は顔を見合わせた。
「(なんだろう、ラミナスに迷惑かけたのかな………)」
「(あ、そういえば僕心当たりが………)」
クルスとミレイナはそれぞれの妄想を思い浮かばせて若干の脂汗をかいていたが、シラヌイとシリアはそんな二人を見て察したのか「それはないだろ/ないよ」と同時に心の中で呟いていた。しかし、そんな二人の心配もティラによって振り払われた。
「どうやら、少し特別な話をするようなんだ。お前達だけに」
それを聞いた四人は思わずティラを一瞬見て、再び顔を合わせた。重要な話と言われて、彼らはいつも通りの顔付きになった。
「わかった。話を聞こう」
シラヌイが代表して返事をすると、ティラは地下三階へと続く梯子に向かい、彼らもそれに続いていった。
〜☆〜
〜『ディザスター』地下三階 親方部屋〜
「ラミナス、話ってのは?」
シラヌイはラミナスに訊ねて、用件について聞いた。
「………」
「ラミナス………?」
シラヌイはもう一度彼女に訊ねてみるが、目を瞑ってその場から微動だにしないフローゼルは無言を貫いていた。
すると―――
「Zzzzz〜」
この場にいた四人はそれを聞いて思わずずっこけた。そう、ラミナスは目を瞑って立ち寝をしていた。その証拠に彼女鼻から鼻提灯が膨れ上がっていた。仕方ない、と呆れながらもシラヌイはラミナスに寄った。
とんでもない末路になるとも知らずに―――
「お〜い、ラミナス。ラミナ―――」
シラヌイが彼女に、手を掛けようとした瞬間
「水の波動〜」
「すううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーー!!!!??」
ラミナスの口から放たれた水の波動が、射線上にいたシラヌイに向かって放たれた。直前でシラヌイは体を後ろに曲げて退けたおかげで、スレスレで避ける事ができた。
シラヌイを通過した水の波動は、三人の間を通って部屋の扉に当たると扉は吹き飛んだ。
「おいぃっ!!」
立ち上がったシラヌイの掛け声を拍子に鼻提灯は割れて、ラミナスは目を覚ました。
「ん〜、どうかしたかしら?」
「どうかしたかしらじゃねぇよ!危ないわ!!」
「何?もしかして、あたしが悪いの?だったらごめんなさいねぇ………」
「ごめんなさいねぇ、じゃねぇっての!!」
十分ほどこのやり取りが続いた。後に、ティラから聞いた所によると、ラミナスを起こす時はああいう被害を被る事があるので、起こす時は細心の注意が必要との事だそうだ。