第十三話 大蓮池の鉄骨とモグラ(後編)
ドテッコツと同様、ドリュウズも未知なる力を発揮して形勢逆転されたシラヌイ達。そこへ、ドリュウズの下にドテッコツが現れて―――
〜☆〜
「早かったな、ドテッコツ」
ドリュウズは振り返りながらドテッコツに言うと彼の身なりを見た。
「なに、これでも充分てこずった方さ」
「………そうみたいだな」
ドテッコツは話を終えて、ドリュウズが相手にしていたシラヌイ達の様子を見て、ドリュウズの状態も見た。
「お前もてこずったそうじゃねぇかよ、相手が悪かったのか?」
「そんな所だ」
二人がそんな会話をしていると
「………っ、うっ………!」
ドリュウズの一番近くで倒れていたミレイナが痛みに耐えながら起き上がろうとしていた。それを見たドテッコツはドリュウズに訊ねた。
「ドリュウズ、あいつだけ俺の獲物にしてもいいか?」
「………好きにしろ」
ドリュウズはそれに対して吐き捨てるように言うと、ドテッコツはゆっくりと近付いてミレイナを掴みあげた。
「お前らの力には驚いたぜ、なんせ俺達に力量の半分を出させるくらいなんだからな」
「(半分!?あれだけの強さで半分なんて!?)」
ありえない真実を知ったミレイナは心の内で驚くと同時に、信じられないというような顔をした。
「クックックッ、その顔がいいんだよなぁ、圧倒的な相手にそれ以上の事を明かされた時の顔が溜まらねぇんだよなぁ」
不気味に笑うドテッコツにミレイナは、恐怖感と同時に脂汗がどっと溢れてくるのを感じた。
〜☆〜
不意に、シラヌイは目を覚ました。
起き上がろうとすると、腹部から途方もない痛みを感じた。思わず右手で腹を抑えると掌(てのひら)に濡れた感触があったので見てみると、赤く染められた右手が目の前にあった。
「(………そうだ。俺はあの時)」
シラヌイは自分の中で数分前の出来事を思い返していた。
自分はドリュウズに瓦割りを食らわせたのに、まったく効いていないような様子を見せるとこちらに反撃してきた。攻撃は届かなかったはずなのに、いきなり爪が伸びたかと思ったら気付いた時には地面に転がっていた。
「(まさか、リーチを伸ばしてくるとは………)」
シラヌイは何とか起き上がろうとしたが傷が深かったせいなのか、痛みが体全体に走るような感覚に襲われて起き上がれなかった。
「クックックッ、その顔がいいんだよなぁ、圧倒的な相手にそれ以上の事を明かされた時の顔が溜まらねぇんだよなぁ」
前方から声が聞こえてきたのでそちらの方を向くと、アビス達と戦っていたはずのドテッコツがミレイナを掴んで何かを楽しんでいた。シラヌイからはミレイナがどんな顔をしているか分からないが、彼からはミレイナが小刻みに震えているように見えた。
「(ミレイナ………!!ッ!!くっ………!!)」
シラヌイは助けに向かおうとしたが、傷は彼が起き上がろうとする事を阻むように強烈な悲鳴を上げた。
「(くそっ!!こんな時に………!」
そんな事をしている今にもミレイナに迫る危機はカウントダウンを告げようとしていた。
「(くそっ!動け!動け!動け!動けよ!!動かないと俺の、俺達の仲間がやられるんだ!!だから、動けよッ!!)」
どれだけ心の中で、自分の体に叱咤を掛けても深い傷は彼の動きを阻む。
また叱咤を掛けようとした時であった。
―――まただらしねぇ闘いやってんのか?―――
「(!!)」
シラヌイの耳に、聴いた事のある声が頭に響いた。
「(その声は、確か、ツノ山の時に………)」
―――ああ。で、どうするんだ。また力が欲しいか?―――
「(………ああ、頼む。力を貸してくれ)」
それを聴いた声の主は応えた。
―――いいぜ、今日は気分がいいからな。少しサービスしてやる―――
声の主がそう言った途端、前と同じように傷が癒えると同時に、頭の中に色々なイメージが流れ込んできた。
「………いける」
シラヌイは静かに呟いてドテッコツを視野に入れて尻尾を構えると、それは突然と輝き出した。
〜☆〜
「さて、そろそろお前の命を貰うとするか」
ドテッコツがそう呟き、鉄骨を地面に刺してミレイナに向けて拳を構えた。
ミレイナはドテッコツの手から離れようとじたばたしていたが、彼女を殺さない程度に掴む力を強めた。
「暴れるんじゃねぇよ。どうせ足掻いても助からねぇんだから、せめて楽に逝かせてやるってのに」
ドテッコツは右手を後ろに構えて力を込めた。
「これで終わりだ」
ミレイナはもうダメだ、と言わんばかりに目を瞑って痛みが襲い掛かってくるのを待った。そして、ドテッコツの右手がミレイナに振り掛かってきた瞬間だった。
ドテッコツの左側から一つ、空気の刃が彼に向かって襲い掛かってきた。
「!?」
突然の事だったので、ドテッコツは思わず掴んでいたミレイナを離して攻撃から免れた。
宙に放り出されたミレイナは、地面に落ちる前に通り掛かった者に空中キャッチされて助けられた。
「大丈夫か、ミレイナ」
声を掛けられたミレイナは、目を開けると目の前に自分達のチームのリーダーがいた。
「シ、シラヌイ………」
彼はミレイナをそっと降ろすと、振り返ってドテッコツ達の方へと向いて言った。
「ミレイナ、シリアとコルムの回復をしたら安全な場所に避難してくれ」
「で、でも………」
「頼む、ミレイナ」
何かを言い掛けたミレイナに、シラヌイは振り返って真剣な眼差しを彼女に向けた。
すると、ミレイナはその眼差しを見て小さく頷くと二人の所に走っていった。シラヌイはそれを確認し再びドテッコツとドリュウズの方を向くと、二人に向かって歩き始めた。
「へっ、いい度胸じゃねぇか。一人で俺達の相手をしようなんてな」
ドテッコツはこちらに歩いてくるシラヌイに対して、鼻で笑いそう言った。それを聞いたシラヌイは立ち止まった。
「………フッ、わざわざ一人で相手をする理由なら簡単だ」
「あ?」
シラヌイは右手の人指し指をドテッコツに向けて言った。
「お前の相手ぐらい、俺一人で充分すぎるからだ」
その挑発的な発言を言われたドテッコツは、今にも爆発しないとばかりに顔を真っ赤にし、額には青筋を浮かべていた。
「貴様ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!」
ドテッコツはその場から猛スピードで飛び出して、シラヌイの眼前までやって来ると怒りに任せて爆裂パンチを振るった。
「遅い!!」
シラヌイはドテッコツが振るった爆裂パンチを、姿勢を低くして避けるとドテッコツの腹に電気の塊をぶつけた。
「雷塊《らいこん》!!」
「がっ!!」
「おおぉっ、らあっ!!」
シラヌイは雷塊をぶつけた勢いで、ドテッコツをぶっ飛ばした。地面に転がったドテッコツは起き上がると、こちらに向かって走ってくるシラヌイの姿を捉えた。
「ならば、岩雪崩!!」
ドテッコツがそう言った瞬間、シラヌイの頭上に沢山の岩が現れて雪崩のように彼に降ってきた。
しかし今のシラヌイには、そんな攻撃が食らう筈もなかった。軽やかなフットワークで落ちてくる岩を避けると雷の纏ったパンチをドテッコツに向けた。
「雷パンチ!!」
ドテッコツは持っている角材を盾代わりにして雷パンチを防ぐと、角材を振り回した。シラヌイはそれを避けると、一旦ドテッコツとの距離を取った。
「(ちっ、あの角材が厄介だな………)」
シラヌイは雷パンチをした右手を振りながら思った。腕が痺れるくらいに硬かったため、こんなに硬質とは思っていなかったからだ。
「(角材を常に持っているぐらいの事だから、振り回すぐらい簡易だが………)」
シラヌイは角材を盾に使われる前に攻撃を仕掛けられないかと考えていた。
「ボーッとしてんじゃねぇぞ!!」
「!!」
シラヌイはドテッコツの怒声を聞いて我に帰ると、ドテッコツはこちらに向かって走り出していた。
「アームハンマー!!」
ドテッコツはシラヌイに向けて勢いよく拳を降り下ろした。シラヌイはそれを見て「やば!」と小さく呟き、その場から飛び退いた。
「岩落とし!!」
ドテッコツは自分の一歩手前に向けて岩落としを使った。アームハンマーを避けたシラヌイは、ドテッコツの奇妙な行動に疑問を持った時だ。
ドテッコツは岩目掛けてジャンプをすると、片手で持っている鉄骨を両手で持つとその岩に降り下ろした。岩は鉄骨に叩かれて砕けると、尖った破片がシラヌイに向けて襲い掛かってきた。
「ちっ!」
シラヌイは守るを使い、自分の周りに緑色のシールドを張った。岩の破片は次々とシールドに弾かれて、シラヌイは無傷で済んだ。
しかしこの後、シラヌイは驚愕される事となる。
「食らえっ!!」
何と、ドテッコツが自ら突っ込んでくるとシールドに爆裂パンチを何度も何度も当ててきたのだ。
「(こいつ、一体何のつもりだ!?)」
シラヌイは意表を突かれた。守るはほとんどの技を無効化できる便利ものだが、連続使用すると失敗する難点がある。
フェイントという技があれば守るを破る事は可能だが、力押しでどうこうできる技ではない事ぐらい向こうも知っているはずだ。
今のシラヌイにはそう思っていた。だがその考えはあっさり破られる事となる。
ピッ………
ドテッコツが爆裂パンチを大体十発目ぐらい当てた所で聞こえたきた音。否、シールドに亀裂が入ったのだ。
「(なっ……!?嘘、だろ……!?)」
シラヌイは心中驚き、すぐにその場を離れようと考えたがそれはできなかった。
守るのシールドはその場を離れたら解除されるからだ。下手に動けば、ドテッコツから追撃を食らう事になる。
ピキッ……ピキピキピキ………
亀裂は殴っている所から段々と広がっていき、全体的にもあと一発当てられたら壊れてるしまいそうだった。
そしてドテッコツは最後の一発を噛まそうとシールドに殴ろうとした。
「(破られる!!)」
シラヌイがそう思った瞬間だった。
「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!」
すぐ近くから悲痛な叫び声が聞こえた。
〜☆〜
ドテッコツが爆裂パンチでシールドを殴り始めた頃、すぐそばでその様子を見ていた。
「(あれはピカチュウの負けだな………)」
ドリュウズはシールドの中にいるピカチュウ、シラヌイを哀れむ様に見ていた。
「(あいつに対して防御なんかしていたら、自分を自分で苦しめるも当然だ………)」
ドリュウズは勝負の行方は分かっているが、一応見届けようと思った時だ。
ガサガサガサ
背後から草を派手に揺らす音を聴くと同時に、視線を感じた。ドリュウズは振り返って警戒心を高めると草むらに一歩ずつ近寄った。
一歩、二歩と草むらに近付き、ちょうど三歩目に入ろうとした瞬間―――
「どおおぉっらああああぁぁぁぁぁっ!!」
目の前の草むらから、雄叫びを上げながら大きな炎の塊が出てきた。
「ぐふっ!!」
不意打ちを噛まされたドリュウズは炎の塊に数歩後ろに押された。
ドリュウズが止まると、塊からは炎が消えて正体を表した。それは、ドテッコツの強力な一撃を食らってのびていたはずのヒトカゲ、アビスであった。
「貴様………どう、やって………」
アビスはニヤリと笑みを浮かべるとすぐにドリュウズから離れ、口から炎を放った。
「火炎放射!!」
「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!」
炎に焼かれたドリュウズは、避ける処かガードをする暇ももなく、炎に包まれた。
〜☆〜
「今のはまさか………!?」
ドテッコツは、聞き覚えのある声が聞こえてきたので思わず繰り出そうとしていた拳を止めて叫び声のした方を向いた。
シラヌイは一瞬の隙も見逃さなかった。彼はすぐにシールドを解除して、不思議な力を帯びた右手の拳を振りかぶるとドテッコツに噛ました。
「サイコパンチ!!」
「がっ!!」
シラヌイは左、右、左と同じ技を噛ますと次のパンチでアッパーを繰り出してドテッコツを上へ突き飛ばした。
「せやあっ!!」
「ぐふっ!!」
ドテッコツは宙を舞うと、シラヌイはドテッコツに向かってジャンプすると不思議な力を帯びた右手を繰り出した。
ただし、サイコパンチではなくサイコパンチを連撃させた強化版。
「サイコバレット!!」
「があああぁぁぁぁっ!!」
強力な一撃を浴びさせられたドテッコツはドリュウズと同じく悲痛な叫び声を上げて宙から落ちていった。
〜☆〜
炎に包まれたドリュウズは、自分の体が焼ける事から解放されるとフラフラになりつつも、やっとの思いで立っていた。
「く……そ……が………」
「んだよ。まだ立っていたのか」
アビスは呆れた様子でドリュウズを見ていた。不意打ちの一撃をまともに食らわせて、全快の火炎放射を浴びせても立っていた事は凄いと思えてきた。
しかし、そんな思いを抱いていたのはほんの数秒だった。ドリュウズはほんの少しぐらつくと前のめりに倒れて動かなくなった。
「あ………?何だよ、作戦が無駄になったじゃねぇか」
アビスがその一言を言うと、後ろの茂みからフィスナ、クルス、メイルの三人が彼に向かって歩いてきた。
「お、終わったの?」
クルスは恐る恐るアビスに聞いた。アビスは確認のために、ドリュウズを数回ほどツンツンと触ってみるが、起き上がる様子はなかった。
「どうやらそうみたいだぜ」
「な、何とか勝った〜」
「そうだね〜」
アビスが確信を突くと、クルスとメイルは一息付いてその場に座り込んだ。
「まぁ、綿密な作戦立てておきながらそれが無駄になったのは、どうかと思うけど」
フィスナは作戦を立てた第一責任者への悪態を突くと、その第一責任者が「う……」と声を上げた。
「ま、まぁなんだ。とにかく勝った事には変わりねぇんだから、気にすんな」
アビスは冷や汗かきながら言っているが、クルスそんな彼を見て心の中で「いや、気にしてるでしょ………」と思っていたが彼はそういう事は無しにしておいた。
「あれ、おっかしいな」
「アビスお兄ちゃん、どうかしたの?」
三人の前に立っているアビスが、何か様子がおかしい事を首を傾げていた。メイルはそれに気付いて彼に声を掛けた。
「なんかわかんねぇけど、こいつ転送されねぇんだ」
「転送されない………?バッジの故障じゃないの?」
「だといいんだけどよ」
アビスは幾度も探検隊バッジをドリュウズにかざしてみるが、やはり転送されない。
彼は飽きてきた様子で七回目のバッジかざしをした
次の瞬間―――
ボフンッ!!
「うおっ!?」
「ひゃあっ!?」
「うわあっ!?」
「きゃっ!?」
突然、ドリュウズが煙となって弾けると一瞬にして消えてしまった。
「き、消えた………」
「な、なんだったの!?」
アビスは急な事で茫然とし、クルスはビビり気味に言った。
あまりにも不自然な事だが、フィスナは多少動揺しながらも頭の中を高速回転させた。
「(どういう事………?確かにアビスの攻撃は確実にドリュウズを捉えていたはずなのに、それが消えてしまうなんて………)」
フィスナは、あの状況の中でどうやって回避できるかを考えた。
「(恐らくあれは本体ではない。相当な高等技術が必要だけど、あのドリュウズがそこまで技術力があるとは思えない。それに、影分身を使って逃げたとは限らないし、ましてや本体そっくりの………)」
ここで、フィスナの思考が止まりある一つの考えが浮かんだ。
「そんな………まさか………!」
「?どうしたんだ。フィスナ――」
フィスナはアビスが聞いてきた事を無視して、急いである所へと向かった。
「お、おい!待てよフィスナ!!」
「え、ちょ、ちょっと!アビスお兄ちゃん待ってよ!」
「え!なになに!?僕を置いていかないで〜!」
急に駆け出したフィスナに追い付こうと、三人は慌てて彼女の後を追った。
〜☆〜
ドテッコツが倒れてから、ほんの五分ほど静寂が訪れた。
シラヌイが決めた技が相当効いたのかは分からないが、起き上がりそうになかった。それでもシラヌイは、警戒を怠らずにドテッコツの様子を見ていた。
すると――
「………っ………くっ………」
「!!」
ドテッコツがゆっくりと立った。効果のある技は、一発も外れる事なく当てたにも関わらずにだ。
「往生際が悪いな、もう少し痛めつけた方が良かったか?」
シラヌイはまた、先程の技を噛まそうとドテッコツに歩いていこうした途端
ドクン
「(ッ!なん、だ………)」
突然、自分の中で鼓動が聞こえてきたと思うと体から涌き出る力が抜けていくのを感じ、片膝を付いた。
「(どうして、急に………)」
「シラヌイ!」
「!!お前ら………!」
シラヌイの前に、傷付いて物陰に隠れていたはずのミレイナ、シリア、コルムの三人が立ちはだかった。
「やってくれたな小僧、俺を本気で怒らせてくれるとはいい度胸だ………!」
ドテッコツは、これまでにないような怒りを表情に表した。それはまさしく鬼、そういったものを具現化させた顔だ。
「てめえだけは、ぶっ潰してやる!!」
ドテッコツが技を発動しようとした次の瞬間
「バブル光線!!」
「!!ちっ!」
草むらの方から泡が光線のように飛んできた。ドテッコツはすぐさまそれに気付いて、バブル光線を避けた。
すると、草むらから勢いよくドテッコツに向かってポケモンが飛び出すと技を繰り出した。
「シザークロス!!」
「アームハンマー!!」
ドテッコツは繰り出された技に応戦した。互いの技がぶつかり合い、二人は後ろに下がった。
現れたポケモンは、朱色をしており両腕にはかいりきバサミというものが代わりに付いていた。そのポケモンは、シザリガーと呼ばれるポケモンであった。
「アルナス!!」
シザリガーはそう叫ぶと、草むらからもう一人、ポケモンが現れた。現れたのは、黄色が少し混じったような白い毛並みをして九本の尾を持ったポケモン、キュウコンだ。
「火炎放射!!」
キュウコンは、アビスの使う火炎放射よりも強力な火炎放射をドテッコツに放った。
「くっ!!」
ドテッコツは避ける事が間に合わない事を思ったのか、持っている鉄骨を盾代わりに使おうとしたが
「ドリルライナー!!」
突然、横割に入ってきたものに火炎放射を掻き消された。それは、シラヌイ達が相手にしていたドリュウズであった。
「ドリュウズ!」
「退くぞ、ドテッコツ」
「な、なんだと!?俺はまだ奴らと――」
ドテッコツが何かを言い掛けた所で、ドリュウズは彼の真横に並ぶと小声で言った。
「忘れたのか?俺達は計画の糧となる奴らの回収が優先なんだ。とはいえ、今の状況からすればそれは叶わない」
「だ、だからといって――」
「いいから今は退くぞ、このままではやられるのがオチだ。」
結局、ドリュウズに考えを推されたドテッコツはこくりと頷いた。
「逃がすか!」
シザリガーは、ドリュウズ達が逃げるのを阻止しようとバブル光線を放つが、それより早くドリュウズは不思議玉を取り出すと彼らは光に包まれて消えていった。
「(奴らは、一体………)」
シラヌイは彼らが消えた後を見ながら、正体不明のドリュウズとドテッコツの事を考えていた。