第九話 共同任務
ツノ山での力試しが終わって一時の休息を得た『エクストリーム』は―――?
〜『ディザスター』地下三階 朝礼場〜
「揃ったな。今日は特に連絡事項は無し、それでは解散!」
『ディザスター』の朝礼場ではメンバー全員が集まっており、ティラの一言でそれぞれの持ち場に戻っていった。
『エクストリーム』も上の階に上がるため梯子に向かおうとした時だった。
「おーいお前達!」
ティラが四匹を呼び止めた。
「どうかしたかティラ」
「ラミナス親方がお呼びだ。来てくれ」
ティラが四匹を手招きするとシラヌイ達はそれに釣られて彼と共に親方部屋に入っていった。
〜『ディザスター』地下三階 親方部屋〜
「お?着たみたいだな」
ティラと四匹が部屋に入ると奥にはラミナスが椅子に座っていて、一歩前の両サイドにはツノ山に行く前にガルーラ倉庫前で出会ったチーム『ブレイヴ』の二匹、ヒトカゲのアビス=グランドとアチャモのメイル=ソルテがいた。
反対側には黄色い背中が特徴のポケモン――サンドとその隣には小さい体の後頭部に大きな口が付いているポケモンのクチートが立っていた。
「あれ?何で『ブレイヴ』と『サハラ』の四匹がいるの?」
クルスは自分達以外の探検隊が居ることに首を傾げるが、その謎はラミナスが言う事によって解けた。
「疑問を持つのは良いんだけど、あなた達にはこれからやってもらいたい事と聞いてもらいたい事があるから覚えておいてね」
ラミナスがそう言うと、八匹は彼女の方を向いてティラはラミナスの隣に移った。
「単刀直入に言うけど、これから協同任務に当たってほしいの」
『協同任務?』
その場にいるラミナスとティラを除いた全員が首を傾げたがシラヌイは数秒間考えた後、あぁと声を上げてラミナスに問うた。
「つまり、ここにいる八匹で一つの依頼をこなしてほしいっていうことだな」
「まあそういう感じ。任務の内容を改めて話すからね」
ラミナスは立ち上がって机に置いてある不思議な地図を開いて八匹を招くとある一点に指を指した。
「ここが私達の居るライトタウンとなっているわ。ここから少し離れた所に新しく開拓された不思議のダンジョン、睡蓮峠に向かってもらうわ」
ラミナスが今指している場所から少しずつ右下にずれてゆき、山の形を模した所に止まった。
「ラミナス、俺達はこれからその睡蓮峠っていう奴に向かうのは分かったがそこで何をするんだ?」
ラミナスは話を続けるために声を発しようとした所でシラヌイはそのダンジョンへと向かう意味を訊ねた。
「あら、そういえばシラヌイにはまだ話していなかったわね。この『ディザスター』は通常の探検隊活動の他、新たに開拓された不思議のダンジョンの調査も任されているの。調査の結果、そのダンジョンの特徴を派遣した探検隊の報告をギルドマスターである私にしたら調査はお仕舞い。まあ、こんな感じかしらね」
シラヌイはラミナスの長い説明を聞いて理解した。
つまり今回のダンジョン調査は自分達に任されたという事になるが、少し不審に思った。
「ん?待てよ。その割りには人数が多くないか?」
そう、普通探検隊というものは最大二匹から四匹までのチームを組んで活動を行うものだが、今回の人数は八匹とオーバーしていた。
そんなシラヌイの謎をラミナスが直ぐに解いてくれた。
「確かに人数は多いけど、こういう特別な任務の時のみ大人数での活動ができるのよ」
シラヌイはそれを聞くと、あぁと納得した。
「睡蓮峠の場所は地図に記載されているはずだから、頑張っていってらっしゃ〜い」
ラミナスは八匹に笑顔で手を振って見送った。
――睡蓮峠 入口――
「ここだな……」
と周りを見ながらそう言ったのはアビスである。
入口には自分達が立っている一本道と両サイドに二つの池と数枚の蓮が浮かんでいた。
「さて、進むのは良いんだがまず『サハラ』の御二方のお名前を教えて頂けないかな?」
シラヌイは随分と丁重な敬語で後ろにいるサンドに話し掛けた。
シリアは思わず、仲間なんだから私語でよくない?と心の中で呟いたが口には出さなかった。
「ああうん、そうだね。ボクはコルム=サイフォス、種族はサンドだよ。で、ボクの隣にいるのが――」
「フィスナ=シアルよ、種族はクチート」
少し幼さが残ったサンドのコルムは隣のチームメンバーのクチート――フィスナを紹介すると彼女はぶっきらぼうに答えた。
「コルムとフィスナか、よろしくな。俺は水無月不知火(ミナヅキ シラヌイ)だ。シラヌイって呼んでくれ、種族はピカチュウ」
「ミナヅキシラヌイ………ん?もしかしてお前、苗字が先になっているのか?」
アビスは不思議そうに彼の名前を復唱した。
「ああ、ミナヅキが苗字でシラヌイが名前だ」
「へ〜、苗字が先なんて不思議だね。別の大陸から来たの?」
「ん?まあそんな所だ」
実際、シラヌイには記憶がないため住んでいた場所が分かるはずもない彼は適当に答えた。
「取り合えず互いの自己紹介が終わった事だし、そろそろ行くか」
一応このチーム全体を率いているのはシラヌイらしいので、彼はそう言いながら先頭に立ち後から続く七匹と共に睡蓮峠の中に入っていった。
――睡蓮峠 奥地――
シラヌイ達が睡蓮峠に入った一方、ここ睡蓮峠奥地の大蓮池があるこの場所では
「スパーク!!」
「ぐはあっ!!」
電気技を食らった鮫のようなポケモン、サメハダーが吹き飛ばされてそのまま池に落ちて暫くすると浮かんできた。しかもその池には同じサメハダーが合わせて十匹程浮かんでいる。
「さて、後はお前だけだ」
スパークを放ったポケモン――ドテッコツは手に持っている鉄骨を担ぎ直してが目の前にいる凶悪ポケモンのギャラドスに言った。
「くっ……!貴様ら、一体何者なんだ!」
手下が全員倒されたギャラドスは動揺しながらもドテッコツに正体を聞いた。
「言っただろ?俺達の糧となるものに喋る事は無いと……」
ドテッコツは勢い良くギャラドスに向かって走り出すと、ギャラドスはそれに対して応戦した。
「竜巻!!」
ギャラドスは尻尾の先端を回転させて竜巻を起こし、ドテッコツに向けて放った。
「ふん!!」
それに対してドテッコツは走りながら右手に持っている鉄骨を両手に持ち変えて左から右に振り払うと竜巻は一瞬して消えた。
「何っ!?」
「お前ごとき……本気を出すまでもない」
ドテッコツはそう言いながら体から電気を発して技を使った。
「スパーク!!」
「がはっ!!」
ギャラドスはもろに食らってしまい、そのまま池の中に落ちてぷかぷかと浮かんで動かなくなってしまった。
「やれやれ、時間が掛かりすぎじゃあないのかドテッコツ」
ドテッコツの後ろから声を掛けたのは、両手が鋼でできた三本の爪を持ちモグラのようなポケモン――ドリュウズであった。
「すまんなドリュウズ。あまりにもこいつらの手下共がしつこくてな」
「はいはい、お前が理由を説明をすると時間がもっと無駄になる」
ドテッコツが理由を説明仕掛けた時、ドリュウズはそれを手で制した。
「まぁいい、今は一刻も早くこいつを運ばねぇとな」
「ああ
――全ては計画のために」
ドテッコツは岩影に隠してあった道具を取り出してドリュウズと共に準備を行っていった。