ポケモン不思議のダンジョン―エクストリーム―希望へ誘う意志の力 - 番外編
第八.五話 収穫祭だ!!(後編)
「波動を……?」

「ああ、実質波動って言うのはクルスの使う波動弾みたいな使い方以外に探知や居場所の特定も可能だからだよ」

シラヌイは自分にどうやって犯人を探そうかという事を訊いてきたクルスに詳しく波動の使い方を教えた。

「シラヌイは出来るの?」

「出来なければ言わないさ」

シリアは彼に訊ねてきて、シラヌイはそう言い返しながらに行動した。彼はその場で目を瞑り、右手をステージの床に手をつきながら意識を集中し始めると着ているコートが風も吹いていないのに揺れる。

「すいません」

三人はシラヌイが場所を特定出来るまで彼の様子をじっと見ていたが、ミレイナは声をかけられて振り向くとそこにはリオルとピカチュウ、ツタージャ、フタチマル、ビブラーバの五匹のポケモンがいた。

「な、何か……?」

「そちらのピカチュウはさっきなんと言いましたか?」

先程ミレイナに訊ねたリオルは、馴れない敬語を使いながら彼女に訊ねる。

「先程の事ですか……?彼は波動があれば探知にも使えるという事を――」

「見つけた」

最後まで喋ろうとした彼女の言葉はさっきまで目を瞑っていたピカチュウが遮った。

「三人共、先に行っているぞ。神速!!」

シラヌイの言葉と共に、八人の前から彼の姿は消えていた。

「嘘だろ!?」

リオルは広場の方へと視線を向けると予想した方向にピカチュウは神速を使いながら観客の波間を抜けながら街の出入り口の方へと向かっていった。
その姿をリオルと同じように見ていた四人は、その動きに目を丸くした。

「何ていう早さなの……そういえば、ピカチュウって神速を使えたかしら?」

疑問を持ったツタージャは隣にいるアルビダへと目線を向けた。彼女も彼と同じ種族のピカチュウだが神速は使えない。
呆然とする五人を訊ねたのはシリアであった。

「……所で今更なんだけど、あなた達は誰なの?」








「はぁ……はぁ……はぁ……」

ライトタウンの街の通り沿いから外れた所では、息を荒くしながら必死に走ろうとするポケモンがいた。

「お、お姉ちゃんまだなの?」

幼い女の子の声で自分の姉に訊ねたのは、頭の周りが黄緑色に包まれていて額と後頭部に赤い角のようなものが付いていて白く小柄な人型のポケモン――ラルトスであり、その娘の隣には同じラルトスが一匹いた。

「アルマス、アウラ。もうすぐだから!」

メスのラルトス――アウラとオスのラルトス――アルマスの名を呼んだのは二人の先頭を走り続けるキルリアであった。彼女達は三人で大きな袋を持っていた。

「(もうすぐ……もうすぐだから!待っていて、お母さん)」

キルリアは少しペースを上げながら心の中で親を呼んでいると

「ここにいたか」

「「「!!」」」

キルリア達は、突然声がした方向を反射的に向くとその先には白いコートを着たピカチュウこと、シラヌイが立っていた。キルリア達は引き返そうとしたがそれは出来なかった。目の前に一匹のイーブイが現れて、また逃げようとしたが左右にリオルとツタージャが現れてしまい囲まれた。

「すぐにそれを渡してくれないかな、あんまり手荒な真似をするのはごめんなんだ。」

シラヌイは優しくキルリア達に語りかけたが、それが引き金となったのかキルリアは懐から種を一つ取り出して食べた。それに釣られて二人のラルトスも懐から種を取り出して食べようとしたがシラヌイはそれをさせなかった。

「能力アップの種のようだけど、させないよ!影分身!!」

シラヌイは多量の分身を作り出して三人の周りを囲み、安全に確保出来る技を使った。

「催眠術!!」

あらゆる方向から放たれた催眠術は三人に避ける暇も与えず、くらわせた。

「はぁ。あっさりと終わったけど、少し焦ったよ」

ミレイナは一息ついてからそう言った。

「まぁ、百万ポケを盗もうなんていうポケモンがどんな輩かなって思ったけどまさか子供なんてね」

クルスはキルリア達に関心しながら言った様子だが、シリアはそれに対して「盗んだ犯人を関心するのはおかしいんじゃない?」と彼に呟いたがそれを聞いていなさそうだった。

「それより今はこの子達を――」

「運ばなくちゃ」とクルスが言おうとした瞬間いきなりシラヌイがバタン、と倒れた。

「シラヌイ!?」

「ど、どうしたの!?」

「大丈夫!?」








「「「ご、ごめんなさい!!」」」

キルリア達は大声で謝りながらシラヌイとレオ達(とその他)に頭を下げた。
あの後倒れたシラヌイの様子を確認した所、寝息をたてていたのだ。キルリアとラルトスの特性、シンクロによって彼女達を眠らせた事が原因で彼も眠ってしまったのだ。
三人でシラヌイと彼女達と百万ポケの入った袋を運ぶのは少し難があって困り果てていると、後からミレイナ達を追いかけてきたレオ一行が合流し手を貸してもらった上で広場に戻り今に至る。
シラヌイはとっくに目覚めて景品を盗んだ彼女達の前に立っていた(話を聞こうとした時、シラヌイが行方不明になり五分程探した挙げ句にステージに戻ると何事もなかったように戻ってきて怒られたのは別の話)。

「まあ、謝るのはいいとして名前を教えてくれないかな?」

シラヌイ達は自分達の自己紹介を終えた上でそう訊ねた。

「は、はい私の名前はアナンです。こっちのラルトスが次女のアウラで、こちらのラルトスが三男のアルマスです」

アナンが二人を紹介するとアウラとアルマスは小さくペコリと会釈した。

「そしてこちらが、オオスバメのサイガさんです」

アナンは自分の隣にいるオオスバメ――サイガを紹介すると彼はぺこりと頭を下げた。
すでに分かったかもしれないが、サイガは先程景品選びを迷っていたオオスバメだ。アナン達の百万ポケ奪取を協力した彼は、収穫祭のくじ引きに参加してアナン達が百万ポケを盗んで距離を取る事の時間稼ぎをしてくれたらしいのだ。

「本当に、申し訳ありません!」

サイガは勢いよく頭を下げた事で地面に思い切り、ぶつけたが彼はそれを気にしていないようだった。

「も、もう良いって。それで本題に入るけど、どうして景品の百万ポケを盗んだんだ?」

レオは彼女達に訊ねた。広場には未だにくじ引きを楽しみにしていたポケモン達が残っており、盗んだ犯人を見届けようと残った者達は子供三人が盗んだ事に目を丸くした者や声を上げて驚く者もいた。

「……私達は一つの小さな村に住んでいました。とても貧乏で贅沢な生活を送る事はままなりませんでしたが、それでも村に住むポケモン達は必死に自分達の出来る事をしながら生きていきました」

キルリアは昔話を話すように語った。

「私達には母がいました。たった一人で私達姉弟を育ていてとてもとても張り切りの良い母で、私達に色々な事を教えてくれました」

シラヌイはそれを聞いて、まさか不思議玉の事じゃないだろうな……と先程種を食べようとした彼女達の行動を思い浮かべ、心の中で少々怖いことを呟いていた。
しかし、アナンは次に何かを話そうとした時少し暗い顔になって俯いた。

「ですが、二週間前に母は突然倒れました。重い病気で今はベッドに寝たきりの生活を送っています。村には誰一人と医者はおらず隣街の医者に聞いてみると治せる事まではわかりました。ですが……」

「手術には五十万ポケはいるが、術後の症状を抑える作用を施すために五十万ポケ。つまり合計百万ポケを必要とするからこの収穫祭のくじ引きの景品の百万ポケを宛に盗もうとした。そういう事かな」

アナンが言おうとした言葉を代わりに話したのは彼女達の母親の事情を知るはずもないシラヌイだった。彼の周りにいた者達は突然の事に驚いた。

「は、はい。そうですけど、何でお分かりに……?」

「さあな、それは話すべき事じゃないけど……」

シラヌイはペラップの隣に置いてあった百万ポケの入った袋を掴んだ。

「今やるべき事は分かっている」

君もそうだろ?とシラヌイはレオにそうやって聞くと彼は分かったように、あぁと声を出して右手の拳を左掌に叩く。シラヌイは三人の前に袋を出した。

「こいつを持っていきな」

「えっ!?」

「シラヌイ!?」

「うそっ!?」

「なんで!?」

アナン達に百万ポケを差し出したシラヌイに会場はどよめいた。

「い、良いんですか?これはあなた方の景品なのに……」

「細かい事はいいんだよ。俺らは軽い気持ちでこのくじ引きに参加したようなもんだからよ」

「で、でも……」

「遠慮はするな。こういう時はありがたく受け取っておくんだよ。それと、一つ付け足す事があったな」

シラヌイは空の方に目をみやるとそれにつられた一行も空を見ると何かがこちらに飛んでくるのが目に入った。
接近してきて分かった。片一方は手足と翼を備え、山吹色の体と頭部に一本の角と太い尻尾を持ったドラゴンポケモン――カイリューでもう一つは銀色の体に銀色の翼、鋭い嘴と長い足を持った鳥ポケモン――エアームドであった。
二人はステージに着地するとアナン達の方に向いた。

「失礼致します。依頼人のアナン様でよろしいでしょうか?」

カイリューは執事のように礼儀正しい言葉でアナンに聞いた。

「は、はい……」

突然の事で彼女は動揺しながらも答えた。

「申し遅れました。私はギルド『ディザスター』の探検隊『アルヴリード』のリーダー、レベリオ=ルダレルと申します。」

そう言いながらカイリュー――レベリオは左手を体に添えて一礼した。

「俺は『アルヴリード』の一員、ジャイロ=ゲイルだぜ。よろしくなぁ」

レベリオの隣にいるエアームド――ジャイロは真面目なのか不真面目なのか分からない挨拶でアナン達に言った。

「ジャイロ殿、少しは真面目に挨拶をするようにといつも言っているではありませんか」

「何言ってんだよレベリオの旦那。世の中旦那が思っている程、お堅くはねぇぜ」

レベリオはジャイロを注意するも、彼は少々うんざりした顔付きで言った。彼らの様子を見るにおそらく普段通りのやり取りなんだと捉えられる。

「……ともかく、三人は二人に乗って百万ポケと共に村へと帰るんだ。これは俺からの、いや……







   ――君達からの正式な依頼として受け入れているからな」

「えっ!?」

ステージの上にいる全員は衝撃的な発言をしたシラヌイの方を向いた。

「そ、それってどういう……」

「クルス、シリア。二人もレベリオ達に乗ってくれ、一応護衛という意味で行ってほしいんだ」

シラヌイに指名された二人は顔を見合わせて一瞬迷いを見せたが、二人は頷き快く受け入れた。
アルマスとアウラとクルスはジャイロの上に、シリアとアナンはレベリオの上に乗り百万ポケを彼が持つことになり出発を決めた。

「よし、準備は万端だな。レベリオさん、後の事は頼みます。クルス、シリア。二人の事を守ってやれよ」

「お任せください」

「心配ならいらねぇぜ」

「分かったわ」

「頼りにしててよ!」

レベリオとジャイロは翼を広げるとすでに空へと飛んでいるサイガの後をついて飛んで行き、やがて自分達の視野より見えなくいった。

「ねぇシラヌイ」

「ん?」

ミレイナは飛んで行くレベリオ達を最後まで見届けるシラヌイを訊ねた。

「さっきアナンちゃんに何かしら言って的中したようだけど、何で当たったの?」

シラヌイとアナンは初対面のはずだ。面識もない彼が身内でもない彼女の母の事など知るはずもないのにまるで知っているような口振りで話したので不思議に思ったのだ。

「さっきの事か?別に――」

大したことはしていないと話そうとした時だった。広場の東側から突然爆発音が響き、次々とポケモン達が我先に逃げ出そうとしていた。
爆発音がした方向を見るとそこには三人のポケモンがいた。一人は巨大なサソリのようなポケモン――ドラピオン。二人目はドラピオンの右隣にいて二足歩行で腕に左右対称の一本の鉤爪を持ったポケモン――ドクロッグ。三人目はドラピオンの左隣で大型のクモのようなポケモン――アリアドスの三人の構成となっていた。
そしてその後ろからは三十匹程のゴルバットがついていた。

「ここかぁ!?例の百万ポケが用意されているっつう所はよぉ」

中央のドラピオンは辺りを見回すような素振りをしながら言った。

「兄貴!多分彼処(あそこ)んところにあるんじゃないですか?」

右隣のドクロッグはシラヌイ達が立っているステージを鉤爪で指しながら言った。

「あそこっすよ!アニキ、さっさと行きましょうぜ」

アリアドスはドラピオンに、どうぞどうぞというように道を進めると彼らは次々と広場のポケモン達を退かしながらステージに着いた。

「おいてめぇ、この街に百万ポケがあるっつう話を聞いたけどよ。どこにあるか分かるか?」

ドラピオンはくじ引きの司会を担当していたペラップに上から目線のように話しかけた。

「ひゃ……百万ポケですか……?」

ペラップは少し怯え気味にドラピオン達の狙うものを復唱した。
ペラップは判断した。こいつらはやばい、それを思うと怯えずにはいられなかった。

「ああ、どうなんだ。まさかとは思うが、無いなんて言うんじゃねぇだろうな?」

「あ……いや……その――」

「そんなものはない」

ペラップが迷いを請じた一瞬、シラヌイはドラピオンに向かってハッキリと告げた。

「ない、だと……?」

「ああ、そもそも百万ポケはこの収穫祭のくじ引きで貰える景品だ。それなのにただで貰おうなんて思っていたとはな」

シラヌイはドラピオンに対して少し挑発的に言うと彼は青筋を一つ浮かべていた。

「てめぇ……誰に向かってものを言ってやがるんだ?」

「そうだぜ!ここにいらっしゃるのは我らが盗賊団『イレイザー』のリーダー、ワイル=エボロ様だぜ!」

「俺らのリーダーに逆らおうなんて思ったような口振りをしやがるとは、てめぇは相当命知らずのようだ――」

「知ったこっちゃねぇ」

アリアドスが最後の最後でセリフを決めようとした所でシラヌイは二人を睨みながら言った。

「『イレイザー』?フッ、そんなもの見たことも聞いたこともないな。言っただろ、百万ポケはくじ引きの景品だ。欲しければ自分らで稼ぎな、へっぽこ盗賊団共」

シラヌイの言った事がワイルを怒らせる引き金となった。挑発的な態度や口調にイラついていたワイルは青筋を次々に浮かび上がらせ、顔を真っ赤にしながら怒りを露にした。

「貴様、相当死にたいようだな!」

ワイルは何の素振りも見せずにシラヌイに向かっていきなり炎の牙を噛ました。しかし、彼はそれを軽々と飛び退いて避けた。

「よっと!やれやれ、力で押してきたか」

「決めた!貴様は最初に潰す!覚悟しやがれ!!」

完全に頭に血が上っているワイルは怒りに道溢れ、今にも大暴れしてしまいそうだった。

「ミレイナ、お前はレオ達と協力して雑魚共を片付けてくれ。俺はこいつを相手にするから」

「うん、任せて」

ミレイナはそう返事をすると広場で暴れ回っているゴルバット達の中に向かっていった。








「シェルブレード!!」

「蔓の鞭!!」

シラヌイがワイルと向き合っている一方、レオの仲間であるマロンとムサシは背中合わせでゴルバットを相手にしていた。

「数が多すぎるでござる!」

「諦めかけてはダメよムサシ!」

「そういう事だ!空波動!!」

レオの放った見えない波動に四匹程ゴルバットにヒットしたようだが、倒れる事はなく空中で態勢を崩しただけで終わった。

「雷槍!!」

しかし、ゴルバット達の真横からアルビダが槍の形をした電撃で追い討ちして四匹が倒れた。

「ナイスだアルビダ!」

レオはアルビダを誉めると彼女は左手で親指を立てて片目を閉じ、ウインクした。

「竜巻砂漠!!」

レオのいる位置から近い場所ではクレメンスが六匹のゴルバットに向けて技を放ってノックダウンにさせていた。

「バラバラになっていてはダメだ!一点に固まろう!」

レオはそう指事すると背中合わせしているマロンとムサシの所に集まるよう誘導した。
しかし、集合途中で一匹のゴルバットがアルビダの真後ろから襲撃しようする瞬間をレオは見逃さなかった。

「アルビダ後ろ!!」

「えっ……?」

アルビダは背後のゴルバットに気付かず走っていた。振り返る時にはすでに遅く目の前まで接近しようしていた。
レオは波動弾を構えようとするが、ここから放てばアルビダに技の衝撃が襲う可能性があったので下手に打てなかった。マロンの蔓の鞭でも遅すぎる。
このままじゃ、と思った瞬間だった。

「シャドーカタール!!」

そう聞こえた瞬間、ゴルバットの横から黒いブーメランが飛んできてゴルバットにヒットして倒れた。

「大丈夫ですか?」

アルビダの下にメスのイーブイ――ミレイナが駆け付けてきた。レオ達も急いで彼女の下へ駆け寄った。

「ケガはないですか?」

「は、はい。大丈夫です」

「アルビダ!無事か!?」

「う、うん。大丈夫、こちらの彼女が助けてくれたから」

アルビダが視線を隣のイーブイに向けてレオ達もその視線の先を見て、レオはミレイナにお礼を言った。

「ありがとうございます。えっと……ミレイナ、さんでしたっけ?」

「あ、はい。ミレイナ=ハバグです」

ミレイナの自己紹介とレオ達とのやり取りをしているうちにいつの間にかゴルバット達に囲まれていた。

「さて、ここからはお互いの背中を預ける時だ。ミレイナさんも兼ねて、みんな行けるか?」

「平気よ!!」

「大丈夫です!!」

「心配無用でござる!!」

「僕も行けるよ!!」

「頑張ります!!」

レオがみんなに訊ねると上からアルビダ、マロン、ムサシ、クレメンス、ミレイナの順に返事をした。
すると――




 バゴオオォォォン!!




「クロスポイズン!!」

「はっ!!」

ステージ側ではワイルの投げた機材を避けつつ、繰り出したクロスポイズンをシラヌイが後ろに大きく飛び退きながら避けているのを六人が確認した。








「瓦割り!!」

「ちっ!!」

シラヌイの戦いは防戦一方だった。相手はドラピオン、アリアドス、ドクロッグの三人で、あまり手子摺る訳ではないのだが彼らは手数で攻めてくるのだ。
ドラピオンが攻撃し、それを避けたらドクロッグが攻撃、それを避けたら次はアリアドスと同じ事を繰り返してこちらに攻撃の隙を与えず攻めてくるのでどうしようもない。

「(クソッ、このままでは攻撃が命中するのも時間の問題だ)」

彼は一つの考えを浮かび上がらせ、それをすぐに実行へと移した。

「影分身!!」

シラヌイは影分身を使って三人の周りを囲んだ。ワイルはその行動を見て鼻で笑った。

「フンッ、撹乱したつもりなんだろうが……そうはいかんぞ!!」

ワイルとアリアドスとドクロッグは背中合わせをするとそれぞれ技を放った。

「ミサイル針!!」

「毒針!!」

「ヘドロ爆弾!!」

三人は全体に降り注ぐように技を放つと周りを囲んでいた影分身に命中し、全て消えた。

「何!?本体はどこへ!?」

三人は辺りをキョロキョロと見ていると、ワイルの真下の地面が盛り上がって―――

「穴を掘る!!」

「ぐはあっ!!」

地面から奇襲したシラヌイの一撃は見事にワイルへの不意討ちとなった。

「「兄貴ィ!!」」

「余所見していて良いのか?雷パンチ!!」

シラヌイは一気にドクロッグへ接近して電撃を纏った右手の拳を振るうが、避けられてしまった。

「(避けられた……だが、少しは楽になったかな)」

彼はすぐに距離を取って、技の構えに入った。








シラヌイがワイルを倒した一方で、レオ一行とミレイナは残り四匹となったゴルバット達と対峙していた。

「空波動!!」

レオがゴルバット達を怯ませた隙にマロン、ムサシ、ミレイナ、クレメンスが技を放った。

「グラスミキサー!!」

「シェルブレード!!」

「シャドーボール!!」

「竜の息吹!!」

それぞれの技がゴルバット達に命中すると、一匹一匹地面に落ちて目を回した。

「よし、これで終わりだな」

レオは辺りを確認しながら落ちたゴルバットを運んで、積み込まれた山に向けて投げた。

「少しばかり手子摺ったね」

「だが、あまりにも手応えがなさすぎるでござるな」

「数が数でも、弱いのは当たり前だからだよ」

「私はこれからお楽しみに触れるわ。雑魚は雑魚でも少しは甚振(いたぶ)りがいがありそうね。フフフフフ………」

アルビダ、ムサシ、クレメンスは素直な感想だがマロンに関しては片方の蔓の鞭で二匹のゴルバットを吊し上げていた。
ムサシとアルビダ、クレメンスはこれから何が始まるか大体察しがついていた。マロンの右手には鞭が握られていてとっくに振り上げられていた。次の瞬間、バチンッ!!というとてつもない音が響いた。
三人はゴルバット達を哀れむような目で見ていたが、ミレイナは顔を引きつりながら「怒らせないようにしよう……」と心の中で誓っていた。








レオ一行とミレイナ達がゴルバット達を倒した一方で、シラヌイは未だに残りの二人と交戦中であった。

「十万ボルト!!」

「おっと!!」

シラヌイの放った電撃はアリアドスに当たらずそのまま直進して行き消えた。

「毒針!!」

「はっ!!」

シラヌイはアリアドスの毒針を後ろに飛び退いて避けた。ワイルがやられてからというもの、このやり取りが続いてばかりで勝負の終局が見えそうに無かった。

「(おかしい……どうなっているんだ。さっきとは違って二人が避ける事に専念している気がする……それになんだ。この違和感は………)」

戦いながらではあるが、シラヌイは感じ取っていた。ワイルがやられてからの二人の様子、格下のゴルバット達全員がやられて自分達だけになっても動揺の色ですら見られない事への違和感、シラヌイはそれを見込んだ上で技を使った。

「電磁波!!」

「うぐっ!?」

「ぐがっ!?」

シラヌイは二人に少量の電流を送り込んで動きを止めた。シラヌイは波動を使って感知に集中した。
目を閉じるとそれぞれの波動の形が表れ出した。まず目の前の二人、少し離れた所にレオ一行とミレイナ(約一名可笑しな行動をしているが)、そしてレオ達が倒したゴルバットの山。異変が感じられないシラヌイは感知できる範囲を更に広げると

「(!!これは……!)」

シラヌイは驚いた様子で一つの波動を感知すると、すぐに感知をやめると目を開いてその場から走り出した。








広場では先程までゴルバット達を甚振り楽しんでいたマロンが、最後のゴルバットへの拷問(と自分自身の快感)を味わい終わって山に向けて投げた。

「フフフフフ、堪らないものだったわ……」

不気味な笑みを浮かべながら笑うマロンの顔はあまり表現するにはよろしくないものだった。レオ達は彼女からとてつもない悪意と黒いオーラを感じ取って引いていた(特にレオとムサシ)。

そんな彼らの背後では――








「(クックックッ、笑っていられるのも今のうちだぜ……)」

レオ達がいる広場のすぐ傍にある茂みの一つに、シラヌイが倒した筈のドラピオン――ワイルが潜んでいた。

シラヌイはワイルの唯一の弱点である地面タイプの技を噛まして、倒したように見えた。
しかし、完全に倒せる事はできなかった。ワイルは自分が倒れた事により、シラヌイがあの二人を倒す事に集中することを考え、その場から退避。後は主力であるシラヌイを抑える事が出来さえすればどうにでもなるものだった。

ワイルはシラヌイを抑える為、一匹のポケモンに狙いを定めていた。標的は、マロンを見て引きつった笑みを浮かべていたイーブイ――ミレイナであった。

「(確かあのイーブイの小娘、白いピカチュウの仲間のようだな……あいつを人質さえすれば、下手に身動きが取れなくなるだろうな)」

ワイルは不適な笑みを浮かべて、クロスポイズンの構えに入ると両手の爪が段々毒々しい紫色に染まっていった。

「(強がっていられるのも、これまでだ!!)」

ワイルは勢いよく茂みから飛び出してミレイナに両手の爪を突き出した。

「クロスポイズン!!」

決まったとワイルは思っていた。しかしそこにいた筈のミレイナがいなかった。

「何っ!?」

ワイルは辺りを確認するとすぐにその理由が分かった。さっきまで二人と戦っていた白いピカチュウことシラヌイがミレイナを抱えていたからだった。








「フッ、やってくれたよ。へっぽこ盗賊団のくせに」

シラヌイはワイルを睨みながら言った。その顔は普段の落ち着いた表情ではなく、怒りを露にしたものだった。

「シ、シラヌイ……あの……えっと……」

「?」

「お……降ろして////」

「え?……あぁ、悪い」

シラヌイはミレイナを両手で抱えている状態になっていた。所謂(いわゆる)お姫様抱っこというものである。彼はミレイナをそっと地面に降ろした。

「さて……お前確か、『イレイザー』のワイル=エボロとか言ったな?」

「ああそうだ。だからなんだ?」

「お前もその頭にしっかり刻んでおけよ。俺の名を……」

シラヌイは姿勢を低くして両足に、ぐぐっと体重を乗せた。

「俺はチーム『エクストリーム』のリーダー







   ―――シラヌイだ」

名を告げたシラヌイは地面を思い切り踏みしめると、さっきいた場からワイルの目の前まで来ていた。

「え……?」

突然の事でワイルは行動出来る筈もなく技を食らった。

「波動雷掌!!」

「げはあっ!?」

シラヌイの平手はワイルの顔面に食い込むと思い切り吹っ飛ばされて地面に倒れるとその場で伸びた。
シラヌイは白目を向いて動かなくなったワイルに告げた。

「俺の仲間に手を出したら……容赦しねぇぞ」








その後『イレイザー』達は『ディザスター』と保安官の手によって逮捕となった。
その十分後、『アルヴリード』とクルスとシリアが戻ってきて経過を聞いてみるとアナン達の母親は無事に手術が成功し、元気になったそうだ。

今回の騒動についてライトタウンの町長でもあるラミナスが謝辞と安全宣言をした上で収穫祭は再開した。

そして今、収穫祭は終盤に近付き『エクストリーム』とレオ一行はテーブルの一角で談笑しながら楽しんでいた。

「へぇ〜!レオ達は色々な所を回って旅をしてるんだ!」

クルスは目をキラキラさせながら興味津々にレオ達の話を聞いていた。

「それにしても随分と長旅をするものね」

「ああ、時々躓(つまづ)いて凄く落ちこんじまう事もあったけど、仲間が傍に居てくれれば明るくなれるんだ」

シリアに訊ねられたレオは呟きながら、傍らで騒いでいる仲間達に目をやった。アルビダは隣で屋台の食べ物を凄い勢いで食べまくり、マロンとムサシはカップル(?)的な事をしており、クレメンスは彼女を推すように小さく応援していた。

「ずっと一緒に居てくれるから、頼もしく信頼し合える存在で居てくれるから、俺は寂しくないんだ」

レオは真剣で明日を見つめるような眼差しで地平線の彼方を見ていた。

「(ずっと一緒に居てくれる……)」

ミレイナはそれを聞いて左隣のシラヌイを見て思った。

「(ずっと一緒に……これからも、ずっとずっと……)」

すると、ミレイナに見つめられている事に気付いたシラヌイは彼女の方へ振り返った。

「ミレイナ、どうかしたか?」

「え………い、いや、べ、別に何でもないから、気にしなくていいよ!!あ、あはははは!!」

「??」

顔を赤らめながら笑うミレイナに、四人は首を傾げた。

それから彼らは残る時間の中で色々なものを見ていき、仲間と笑い合い、今を有りの儘に楽しんだ。








 ―――ずっと傍に居てくれる、存在と共に―――








場所は変わって、ここはとある空間。

「へっ、あの野郎いっつも冷静で他人に考えを明かさない奴だってのに、俺の苦労も知らずあんな楽しそうな顔をしやがって」

灰色な空間の中、黒いコートを着たピカチュウは座って映し出された映像を見て吐き捨てるように言った。

「まあ、あいつのああいう顔を見るのもいいかもしれないな………」

ピカチュウは少しの間俯いていると立ち上がって右手の指で、パチン!!と鳴らすと映像は消えていった。

「さて、感傷に浸っている暇はねぇや。俺は俺でやるべき事をやらねぇとな」

ピカチュウはそう独り言を呟くと黒い渦の中に入り込んで消えた。


Nazelu ( 2013/10/22(火) 09:14 )