番外編
第八.五話 収穫祭だ!!(前編)
ここはとある大陸の一角に存在する街の一つ、ライトタウン。
このライトタウンでは季節が秋になる頃に年に一度の収穫祭が開かれる。
ライトタウンはレストランや商店、銀行等といった感じで施設が幾つも建ち並んでいるが裏側では木の実を育てるための畑、それに人間が居た時代から引き継がれた野菜を収穫している事もあった。
収穫祭が始まった原点というのは街のポケモン達によって育てられた物が自分達のためだけではなく、何かの役には立てられないかと考えた事が発端となり収穫祭に成り立ったらしい。







 〜ライトタウン〜



「これが……収穫祭……」

ライトタウンの広場でギルド『ディザスター』の探検隊『エクストリーム』のリーダーであるピカチュウ――水無月 不知火(ミナヅキ シラヌイ)は感嘆の声をもらしていた。

彼はライトタウンの一角にあるギルド『ディザスター』の親方、ラミナス=フランからこう言われた。






『一週間後にこの街で収穫祭が行われるの。その時はこのギルドの活動もそれに合わせて停止しているから、あなた達は楽しんでらっしゃい!』






とこれまでにない満面の笑みで言われたので、その言葉に甘えさせてもらい収穫祭を楽しむ事にした。

そして今に至り、シラヌイは自分の探検隊のメンバーを広場で待っていた。彼は心の中で、そろそろかな?と思っていた時だった。

「シラヌイ〜!」

真後ろから声が聞こえたシラヌイは振り返るとこちらに向かって走ってくるポケモンがいた。
緑色をした蛇のようなポケモン――草蛇ポケモンのツタージャで首には青いリボンを付けていた。
彼女の名前はシリア=ヴァリエ、シラヌイが率いるチーム『エクストリーム』の一員であった。

「ようシリア、早かったな」

シラヌイは手を上げながら挨拶をした。

「まあね、でもポケモン混みから中々抜け出せなかったからここまで来るのに時間を掛けたよ」

シリアは手で汗を拭う様子を見る限り少し苦労したようでシラヌイはその様子を見て、御愁傷様と差しておいた。そんなやり取りを二匹でしていると

「あ!いたいた!」

「シラヌイ〜!シリア〜!」

と大きな声で手を振りながらこちらに向かって二匹のポケモンが走ってくるのを確認した。
一匹は茶色と白の毛並みをしているポケモン――イーブイで首にはピンクのスカーフを巻いていた。もう片一方のポケモンは二足歩行で青と黒の毛並みをしたポケモン――リオルであり、首には赤いスカーフを巻いていた。
イーブイのミレイナ=ハバグとリオルのクルス=セロである。この二匹もシリアと同じく『エクストリーム』の一員であった(手を振って走っていたのはクルスである)。

「ハァハァ……やっと着いた。ポケモン混みが中々落ち着かなかったから態々遠回りしたのに、またポケモン混みが待っていたからミレイナと強行突破してきたよ……」

息を切らしながら自分達がここまで来るまでの道のりを説明するクルスは首に巻いているスカーフを取って汗を拭い、再び首に巻いた。

「だけど、シラヌイのコートのおかげで場所をすぐに判別できたよ」

ミレイナは前足をシラヌイに向けて言った。
そう、シラヌイは他のポケモン達とは違って真っ白なぶかぶかのコートを着ていた。それは自分自身が元々の姿の時に着ていた物であるからだ。

「そんなことより早く収穫祭に行こうよ!!」

「そうだよ!シラヌイ早く早く!」

ミレイナとクルスは無邪気な笑顔で収穫祭にて開かれている屋台に駆けて行った。

シラヌイとシリアは、やれやれと言った感じで二匹に付いていった。







一方、ここはライトタウンの出入り口で五匹のポケモンがいた。

「ここが、ライトタウン……!」

その内の一匹のポケモン、リオルのレオは初めての光景に目を輝かせていた。
彼は自分の故郷であるデルト村以外の街や村の光景は見たことあるのだが、こんなにも賑わっている街を見るのは初めてで体の内側から高揚感が溢れてくるのである。

「レオ!偶然かもしれないけど、私たちここに来れて良かったよね!」

レオが右隣を見るとそこには、自分と同じデルト村の出身であるピカチュウのアルビダがとても喜んでいるようだった。

「ホントに偶然ですけど、あの時チラシを拾っておいて損はありませんね」

レオの左隣には先程の『エクストリーム』のシリアと同じ種族であるツタージャがいた。

「マロンの言う通りでごさるな。それにしてもこの収穫祭、中々に見応えがありそうでござる」

レオの真後ろにいたのは腰の両サイドに二つのホタチを付けているポケモン――フタチマルで、彼は独特な口調を醸しながらツタージャの名を口にした。
彼はフタチマルのムサシ。ほんの気まぐれでデルト村を出て旅をすることになったレオとアルビダに出会い、マロンと共に二匹の仲間になった。

「とりあえず、どこから回った方が良いんだろうね」

ムサシの右隣でレオに訊ねたのは緑色の両目と羽を持った特徴的なポケモン――ビブラーバのクレメンス。彼は訳あって向かった遺跡の中で敵と遭遇したものの、加勢してきたレオ一行と共に敵を撃退して仲間に加わったのだ。

「私あそこから行きた〜い!」

アルビダが指を指した先には一つの屋台があり、そこには『ひんやり冷たい木の実のシャーベット』と書かれてあった。
すでに何匹かのポケモンが屋台の前で列を作っていた。

「何か珍しそうな屋台ね。木の実シャーベットなんて」

「まぁ、この収穫祭では木の実とか売られている以外に変わった食べ物があるらしいから、そこらへんを食べに―――」

行こうか、という所まで言おうとしたレオだったが自分の右側から何かが走って横切ったのでそれを目で追うとアルビダが真っ先に屋台に向かって走っていくのを確認した。

「ほらほら!早く行かないとシャーベットなくなっちゃうよ〜!」

「アルビダさん、そんなに慌てて走るとこけてしまいますよ?」

「平気よ平気、子供じゃないんだから―――へぶっ!!」

と言った瞬間、アルビダは偶然にも足元にあった石に躓(つまづ)いてしまい見事にこけた。

「あいったたたたた……」

「大丈夫か……?」

顔を思いっきり地面にぶつけて痛がっているアルビダは声をかけられて渋々顔を上げると、そこには自分と同じ種族で何故かぶかぶかの白いコートを着て手元に容器を持ったピカチュウが立っていた。

「……」

「?どうかしたか?」

アルビダはピカチュウの瞳の色に気を取られて訊ねたのを聞いていなかった。
ピカチュウの瞳の色は他のピカチュウとは違い、黒曜石のような艶のある黒い瞳でずっと見ていると吸い込まれてしまう感じにとらわれそうだった。

「手を貸そうか?」

ピカチュウはアルビダがケガをして立てないんじゃないかと思って、左手を出した。

「え、いや。その、大丈夫です……」

アルビダはとりあえず立ち上がって体の埃を払った。すると、屋台の方から声が聞こえてきた。

「木の実シャーベット!ラスト一個だよ〜!」

「え!?やば!!」

アルビダは屋台に向かって猛ダッシュした。

「うおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!」

アルビダはラストの一個に向かってスライディングの勢いでシャーベットの入れ物を取ろうとしたが

「くださ〜い」

「へぶっ!!」

ひょい、とシャーベットの入れ物をちょうど現れたゴーリキーが持ち上げてアルビダは掴み損ねた挙げ句またもや地面に顔をぶった。

「まいどあり〜!」

屋台の店主であるユキカブリはゴーリキーからポケを受け取ると屋台の奥に入ってしまった。

「そんな……そんなぁ……」

アルビダは悔しそうにしながら顔を埋めた。
ここでしか食べられないようなものなら、是非とも食べかったという悔しい思いがこみ上げてきていた。アルビダは顔を埋めるのをやめて立ち上がると、さっきのピカチュウがこちらに寄ってきて手元に持っているシャーベットを差し出しながら言った。

「よかったら、俺のシャーベットをあげようか?」

「え!?」

アルビダは突然の事に目を見張って驚いた。

「い、良いんですか!?これはあなたの……」

「良いんだよ、俺はなんとなく軽い気持ちで買っただけだからよ。君の様子を見て、あげても良いかって思っただけさ」

ピカチュウは少々苦笑い気味に後ろ頭を掻きながら言った。

「あ、ありがとうございます!」

アルビダは心の中で、感謝感激の気持ちで喜びながらピカチュウに頭を下げた。

「礼はいいよ、じゃあな」

「あ!待ってください!!」

アルビダが大きな声で走ろうとしたピカチュウを呼び止めると、その声に反応して振り返った。

「わ、私の名前はアルビダです!あなたの名前は!?」

「………シラヌイだ!!」

ピカチュウは自分の名を告げるとポケモン混みの中に走っていった。
アルビダは、走り去った後を見ながら心の中でもう一度ありがとう、と呟いた。

「アルビダ〜!」

「アルビダさ〜ん!」

彼女は振り返ると、自分の仲間達がこちらに走ってきた。

「アルビダ、ケガはないか?」

「どうやらないようですけど、派手に転びましたね」

「それより誰かと話していたように見えたけど、どうかしたの?」

レオ、マロン、クレメンスは一遍にアルビダに訊ねたが彼女は

「ううん、何でもないよ……」

アルビダは手元のシャーベットを見つめながら静かに呟いた。

「優しいポケモンだったな……」

アルビダは右手に持っているスプーンを握って、シャーベットに入れ込むとシャリッとした音と共に一部を掬い上げると口に入れた。
ひんやりしていて口の中で甘味が広がる味は、どことなく嬉しさがこみ上げてくる味だった。








アルビダに別れを告げたシラヌイは仲間のいる所へと走って向かっていた。
一分程走り続けていると仲間の姿を確認した。

「あ!来たよ!」

クルスはシラヌイが走って来るのを見て、のんびり座りながらシャーベットを食べているミレイナとシリアに言った(クルスものんびり座りながらシャーベットを食べているのたが)。

「遅いけど、何かあったシラヌイ?」

「悪い、シャーベットを買うかどうか迷っていたら売り切れていたから戻ってきた。」

本当は違うのだがシラヌイはあえて、適当な嘘を付いて誤魔化した。

「シラヌイもこういう事で迷う事があるんだね」

「まあな」

ミレイナにはそう言われたが、シラヌイは、誰でもあるだろうと心の中で呟きながら一つ空いてる椅子に座った。

「それよりさ!見てよこれ!」

クルスはテンション高めに懐から一つの紙を取り出した。
そこにはNo.0036と書かれた数字とその上には

「「収穫祭 in the 運試しくじ引き?」」

と、シラヌイとシリアの二匹の声が重なりながら同時に呟いた。

「そうなんだよ!実は僕とミレイナが集合までにちょっぴり遅かった理由は―――






『『収穫祭 in the 運試しくじ引き?』』

時は遡り、クルスとミレイナは出かける前にラミナスに声をかけられて一枚の紙を渡され、説明された。

『ええ。毎年収穫祭が開かれると必ず行われるんだけど、ライトタウンの広場に沢山のポケモンが集まってくじ引きをするの。番号は一から三百まであってその中から5つの番号をくじ引きで当て、当てた順から景品が得られるとんでもないくじ引きよ。私もこれに出たかったけど、参加したことのないあなた達にあげるわ』






「軽いノリだな」

クルスの言った回想部分を聞いたシラヌイはラミナスの能天気さに思わずそう呟いた。

「にしても、とんでもないわ。三百分の五の確率で景品を貰えるなんてホントに運試しね」

実際、シリアの言う通りである。

三百なんてまだまだ少ない方だがその中から5つの番号が選ばれる可能性なんて運が良いにも程があるし、本当にその確率で当たったら自分はそんな事で運を使ったという事にもなる。
それを思うと、逆に参加しない方がまだ増しかもしれない(因みにこのくじ引きの景品、一等が百万ポケ、二等が十種類の木の実一年分、三等が野菜三種類と木の実三種類セット、四等が金のリボン×8、五等がレストラン無料券×5となっている)。

「だけどくじ引きなんて滅多にないし珍しいし!」

「ミレイナの言う通りだよ!こんなとんでもない運試しに挑むっていうのも、ありなんじゃないかな!?」

完全にクルスとミレイナの二匹はくじ引きに心を奪われて虜になっているようだった。
その様子を見たシラヌイとシリアは顔を合わせて、仕方ないかといった感じで椅子から立ち上がると

「退屈しのぎにはなるだろうし、何もないよりか増しだな」

「ええ。当たるかどうかは別として、見届けるのも悪くないわ」

「決まりだね!じゃあ行こう!」

クルスは自身の掛け声でミレイナと共に走り出し、後ろから小走りで追いかけるシラヌイとシリア。
四匹はライトタウンの広場へと向かった。

この後、クルスが言い忘れた事があって聞いてみるとくじ引き券はライトタウンのありとあらゆる場所に隠されていると言われたので「探して参加すれば良いじゃん!」と言われたものの、探すのが面倒なので二匹は率直に却下した。








『エクストリーム』の四匹が広場へと走り出した頃、レオ達は広場にいた。

「くじ引きの集合場所はここであっているのか?」

レオは右手にあるチラシを見ながら場所を確認した。
何故この場所にレオ達がいるのかというと、数分前アルビダが突然いなくなったと思って見回すとすぐに戻ってきたので叱ろうとしたが、アルビダがくじ引き券を見つけたと聞いたので見せてもらいアルビダは、二等が欲しい!と言ったので景品を見ると四匹は参加しても良いかという事になった。

「それにしても、くじ引きだけでござるのにこんなにもポケモンが集まるとは予想外でござるな」

ムサシは周りの様子を見ながら言った。
単なるくじ引きだというのに辺りは凄くざわめいて中には楽しそうにしている者も居れば、落ち着きを隠せない者も居た。
アルビダもムサシと同じように周りを見回しているとアルビダはあるポケモン達へと視線を止めた。
至って普通の風貌であるイーブイ、リオル、ツタージャ。そしてもう一匹―――

「あれ?」

アルビダは広場のくじ引きのために来たと思われる四匹のポケモンのうち、一匹だけぶかぶかの白いコートを着たピカチュウに目を止めた。

「シラヌイさん……?」








「さあさあ!くじ引き券を持っているポケモンも持っていないポケモンも寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!」

広場では作られたステージでペラップが一般ポケモン達を引き寄せようと宣伝をしていた。

「ずいぶんと大きい声だね」

広場の一角で『エクストリーム』の四匹がおり、ペラップの様子を見ていたクルスが張り切りようを見てそう呟いた。

「いや、あれは大きいを通り越してうるさいわ」

シリアはクルスの言った事にちょっと付け加えてペラップを睨んだ。勿論、ペラップは宣伝に夢中になっているので気付くはずもない。
それを聞いていたシラヌイは、違いないと微笑気味に言った。

「さあさあ!くじ引き券を持っているポケモンも持っていないポケモンもステージにちゅうもーく!!」

ペラップはさっきの宣伝の時よりも大きい声で広場にいるポケモン達の視線をステージに移した。(その件の中で、多数のポケモンがうるさいと思ったのは言うまでもない)

「これより!収穫祭 in the 運試しくじ引きを開催しまぁす!!」

ペラップの大声と共に広場のポケモン達は、わああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!という歓声を上げた。

「さあさあ!おじいちゃんおばあちゃんから子供まで、一度ここで素晴らしい運試しに挑んでみてはいかがですか!!」

「(あいつ絶対に嫌われ者だろ……)」

シラヌイはあえて口には出さなかったが、声を段々大きくするペラップを呆れた目で見ていたが本人が知るはずもない。

「さぁ〜て!今回行われるくじ引きの一等から五等までの景品はこれだぁ!!」

ペラップは自分の後ろに置かれた長いテーブルの上に被せてある赤い布を翼で持ち、勢いよく、バッと取った。そこには五つの景品の名前が書いてある紙と五つの景品が置かれていた。
広場のポケモン達は、おおおおぉぉぉぉぉーーーーーー!!という驚いた声を上げた。

「さあ!今回の一等の景品はこちらの百万ポケ!この景品を手にするのは一体誰なんだ〜?」

ペラップは広場のポケモンに訊ねると、俺だ俺だ俺だ俺だーーーーーー!!と気合いの入った声を出しているポケモンやバッと手を上げるポケモンにピョンピョン跳ねるポケモンもいた。
ペラップは再びテーブルに赤い布を被せるとゴーリキーが二匹出てきて、テーブルをステージの左脇に運んでいった。

「さあそれでは!ここで五つのくじを引いていくぞ!引いたくじの番号を言っていくから、同じ番号のくじ引き券を持っているポケモンはステージに上がってくれ!」

ここでステージの右側から箱を持ったミルホッグが現れて、ペラップの右隣に置いた。
説明の時でもうるさいなぁ……とミレイナは心の中で呟いたが、口には出さなかった。

「みんな行くぜーーーー!!まず、一枚目!」

ペラップは箱を左右に五、六回程振ってから箱の中に翼を突っ込み一枚の紙を取り出した。

「くじ引きNo.0077!!」

「うおおおおしっ!!」

シラヌイ達と広場のポケモン達は声を上げた方向を向くと、先にはガッツポーズをしているメスのピカチュウとその仲間らしき四匹のポケモンがいた。
シラヌイはふと、そのピカチュウに視線を止めた。

「(?あのピカチュウ、確か……)」








『わ、私の名前はアルビダです!あなたの名前は!?』








「(アルビダ……?)」

彼はシャーベットの屋台での事を思い出した。
クルスはアルビダ達の方向へと視線が行っていたが、すぐにステージの方に戻すとシラヌイがボーッとしている事に気付いて声をかけた。

「シラヌイ、どうかしたの?」

「え……?ああいや、何でもない」

シラヌイはクルスの呼び掛けに気付いて我にかえりそれに応えた。

「おいおいアルビダ、興奮し過ぎだ。選ばれて嬉しい気持ちは分かるけど、一回それを抑えろ。な」

アルビダの隣にいたレオはアルビダの肩を叩いて、更に喜ぼうとした彼女を止めた。

「それじゃあ次行くぜーーーー!!」

ペラップは箱の中に手を突っ込みまた一枚紙を掴むと取り出して読み上げた。
それを二回続けて読み上げた結果、No.0015とNo.0044、そしてNo.0039が選ばれ最後のくじ引きになった。

「さあ!くじ引きも残りラスト一回!!果たして最後の切符を手にしているのは誰なんだーーーー!!」

ペラップが広場にいるポケモン達にまた聞いてみると、頼む!!幸運の女神よ!最後の最後で俺に勝利を!!と手を合わせて願うポケモンが居れば、ピンチはチャンスにも変えれるんだ!!と熱くなっているポケモンもいた。

「(まあ、流石に俺らはないな)」

「(可能性は0に近いね)」

「(はぁ、ここまで来てお仕舞いかな……)」

「(そこまで運が良いなら嬉しいけど……)」

シラヌイ、シリア、クルス、ミレイナの順に思いっきり諦めていた。こういう時に選ばれたらそれは奇跡と言っても過言ではない。
そしてペラップが箱の中に翼を入れて紙を取り出して読み上げた。

「最後に運良く選ばれた番号は―――








   No.0036!!」

「0036か……」

「0036ね……」

「0036かぁ……」

「0036なんだ……」








「「「「0036ぅ!!!?」」」」

四匹は声を揃えてその番号を復唱したら周りのポケモン達はシラヌイ達に視線が注がれた。
彼らはそれに構わず自分達が持っているくじ引き券を取り出して書いてある番号を確認すると、そこにはNo.0036と書かれていた。

「そちらの四人の方々、もしかしてくじが当たったのかい?」

ステージにいるペラップは四人を訊ねると、シラヌイの右隣にいるクルスが「は、はい!!」と声を裏返りながらも答えた。

「さあ!くじ引きはこれでお仕舞い!!番号が当たった方達はステージに上がってくれ!!」

ペラップは手招きをしながら言うとシラヌイやレオ、他のポケモン達も次々とステージに上がってきた。
ただシラヌイはこの世界では見掛ける事がない白いコートを着ているので広場のポケモン達は物珍しそうに彼を見ていた。

「ステージに上がった君達はくじ引き券をこちらに渡してくれ」

ペラップはまた手招きをしながら言って、五匹はそれぞれのくじ引き券を彼に渡し元の位置に戻った。

「よし全員同じだな!それでは〜景品カモーン!!」

ペラップが反対側のステージ脇に向かって自分の右手(翼)を回すと奥の方からゴーリキー二匹が赤い布が被せてある五角形のテーブルを運んできた。

「さあその五角形の角のうち代表者一名が一つを選んでくれ!テーブルの角には景品が一つだけ置いてあるもんで、そいつが自分達の貰える景品になる!角を選ぶ順はさっきくじ引き券を当てた順番で選んでくれ!以上だ!!」

「まずは俺達からか」

そう言いながらアルビダの隣にいたレオがテーブルの前に立った。

「考える依然に、一目見て決まっているんだなこれが」

レオはそう言いながら奥にある角のうち左側の角を選んだ。
次にNo.0015を当てたニューラ、No.0044を当てたノコッチ、そしてラスト二択。
四番目のオオスバメと五番目のシラヌイだけとなった。

「ふ〜む。どっちを選ぼうか……」

オオスバメは自分の翼で顎を触りながら考えていた。この状態が続いて約二十分が過ぎていた。

「おいおい!早く選べって!」

「そうだそうだ!俺らは早く中身が見たいんだからよ!」

広場でくじ引きに選ばれなかったポケモン達はオオスバメにブーイングを浴びせていた。
彼はあまりそれに対して動揺の色合いが見られない、が

「(何か……隠しているのか……?)」

他のポケモン達やオオスバメに最も近いとされるクルスとミレイナですら気付いていなかった。
先程からオオスバメは目線を少し観客席から外れた位置に移しているような気がした。シラヌイはすぐに様子がおかしい事に気付いてオオスバメをずっと観察していた。
彼は案の定オオスバメが気にしている方向を確認するも特に何かがあるわけではなかった。

「(何だ、いったい何を見ているんだ……?)」

結局オオスバメはもう五分程悩んだ末に左側の角を選んだ。シラヌイは残った右側を選び、全ての角が埋まった。未だに彼はオオスバメの行動に疑問を持ち、後ろ髪引かれるような気持ちでいた。

「それでは!テーブルの角は埋まったので中身を開けるぜーーー!!」

ペラップはパタパタと飛びながらそう言うと両足で赤い布の真ん中の部分を掴んだ。

「3……2……1……オープン!!」

ペラップは急上昇し、一気に布を取ると景品がズラリと並べられていた。
ニューラの前には五等、ノコッチの前には三等がありオオスバメの前に四等でレオの前にはアルビダが狙っていた二等が置いてある(この時アルビダは心の中で歓喜の叫び声と共にガッツポーズをとった)。
残る景品である一等を当てたのはシラヌイ――のはずだが

「な……ない!?」

彼の目の前にあるはずの百万ポケが置かれていなかった。この現状に会場はどよめきを隠せないでいた。

「おいおい!どういう事だよ!」

「まさか盗まれたのか!?」

「おい!お前が盗んだんじゃねぇだろうな!?」

「てめぇ!何根拠も無しに言ってんだよ!」

広場でくじ引きの経過を見ていたポケモン達は自分の周りにいるポケモンを疑い始めて騒ぎを起こしていた。

「みなさん!落ち着いて!気を静めてください!」

さっきまで声を大きくしながら威勢のいい運試しくじ引きを実況していた様子はどこへ行ったのやら、ペラップは慌てた様子で広場のポケモン達を宥めていた。その様子を見ていたシリアは、情けないオスねぇ……と心の中で若干失礼な事を呟いていた。








「レオ!どうするの!?」

アルビダもペラップ程ではないが、慌てていた。

「どうするったって、盗んだ犯人を探すしかないだろ?」

「そうと決まれば動こうと思うけど、どうやって探すの?」

クレメンスはレオに対処法を訊いた。広場ではくじ引きの経過を見たいがために集まったポケモンが大勢いる。こんなに沢山の中から犯人を見つけ出すなど到底不可能だ。
しかし、そんな事などレオにとっては簡単な事だ。

「単純さ、俺の――」

「波動を使えばいい」

「「「「「!?」」」」」

レオが言おうとした言葉を遮ったように声を出したのは、アルビダが出会ったピカチュウ――シラヌイだった。

Nazelu ( 2013/10/03(木) 11:07 )