第五話 不思議のダンジョンとオーラ
シラヌイ達は『ディザスター』が位置する町、ライトタウンで倉庫にある道具の整備をして『ツノ山』に向かったが―――?
―ツノ山 入口―
「ここがツノ山か………」
シラヌイは目の前にそびえ立つ山を見て痛感したがシラヌイは心の中で、まんまだな………と思った。その名の通り頂上が角のような形をしているからである。
「一番気になったんだが、何で三匹はリボンやスカーフを身につけてんだ?」
シラヌイはミレイナが首に巻いているピンクのスカーフを指した。
「え、これ?これはラミナスから探検隊を結成したときに貰った道具の中にあった物の一つなんだよ」
クルスが自分のしている赤いスカーフを外してシラヌイに見せた。
「………そうなのか」
シラヌイは右手を顎に当てて、クルスのスカーフを興味深そうに凝視した。
「シラヌイ……?シラヌイ!」
「!ああ悪い、何か用か?」
シリアがシラヌイを呼ぶと彼は我に返って、シリアに謝った。
「クルスのスカーフに何か付いているの?」
シリアはクルスが両手で広げているスカーフを見るが、目立ったものは特になかった。
「いや、何でもないんだ。そろそろ行こうぜ」
シラヌイは先に洞窟の奥へと進んでいったが、三匹はさっきの行動の意味が分からずに首を傾げた。
―ツノ山 4F―
四匹はツノ山の四階まで進んでおり、野生のポケモンと交戦中だった。
「電光石火!!」
ミレイナは目の前のネイティに電光石火を噛ますと、ネイティは目を回した。
「十万ボルト!!」
一方でシラヌイはダンジョンの通り道からやって来たアゲハントに十万ボルトを放つ。電撃を食らったアゲハントは地面に落ちて気絶した。
技の出し方はダンジョンの入口に着く前に、三匹から聞いたので慣れていた。
「これで終わりだな」
シラヌイは周りを見て野生のポケモンがいない事を確認してから言った。
「そういえば、三匹はこの『ツノ山』に関して何か知っている事はあるのか?」
シラヌイは自分の隣にいるクルスに訊ねた。
「え?僕たち……?う〜ん、そんなに詳しくはないけどシリアがダンジョンの知識を色々と蓄えているから問題ないよ。ね?」
「やれやれ、たまには自分で詳しく知って覚えてほしいものなんだけど………」
シリアは呆れながら言っているところを見ると、よっぽど困らされているらしい。
「大変な目にあっているようだな、シリア」
「うん、クルスが何度も同じ事を聞いてくるから呆れられているの………」
ミレイナは少し苦笑い気味に言った。ミレイナ曰く、見ている方まで呆れるらしい。
「フッ、物覚えが悪いというかなんと言うかって―――」
シラヌイが喋っているのを聞いていたミレイナは声が途切れた事に気付いて振り返ると、今まで後ろにいた筈のシラヌイが消えていた。
「えっ!?シラヌイ!?」
先に前を歩いていた二匹はミレイナの声に気付いて彼女の元に寄った。
「どうしたのよミレイナ、シラヌイは!?」
「分からない、突然消えちゃったの!!」
「消えた!?」
シリアがミレイナに訊ねて何が起こったか聞き出して、それを聞いたクルスはその返答に驚嘆した。
三匹はシラヌイがさっきまで歩いていた道を辿るとそこには―――
「ワープスイッチ………」
不思議のダンジョンに設置されている罠の一種、ワープスイッチがあった。
「はぁ、間が悪い時に………」
「そんな事言うより、早くシラヌイを探さないと!!」
溜め息をついたシリアにクルスが急かした。
(side:シラヌイ)
ったく、何が起こったんだ……?ミレイナの会話を普通に聞いていたら、いきなり目の前の風景が変わったからマジで驚いたぞ。
それになんだよこれ………
待ち伏せていたのか知らねぇけど、モルフォン×2とウソハチ×2ってなんだよ。あれか?一種のドッキリか?なんて言ってる暇無いんだけどな。
モルフォンの片一方がこっちに向かって超音波を放ってきた。
軽々とそれを避けるが、もう片一方のモルフォンが銀色の風を放ってきた。
「あんまり面倒な事はなるべく避けたいところなんだけどな!十万ボルト!!」
俺は避けながらモルフォンに向かって十万ボルトを放って銀色の風を相殺して回避した。
コンビネーションかよ、と少々愚痴を呟いていると二体のウソハチは岩落としを使ってきた。
「よっと!!」
くそったれ、見逃してほしいけど今は頑張らねぇとヤバイからな、数の時点で不利すぎるってのによ。有効打になる技の一個や二個はほしいぜ………なんて叶わぬ事を思っていると―――
――――――――尻尾を構えろ―――――
「えっ?」
突然声が聞こえた。周りを何回か見てみるがいるのは俺と四匹の野生のポケモンだけだ。
「(何だ今の?)」
考えてもしょうがないか、と思っていると―――
ドクン
「!!」
鼓動が聞こえた後、何か技のイメージが流れ込んできた。
「(これは……何だ……?一つ、二つ………いや三つか)」
何でこんなものが?と考えていると、二体のウソハチはまた岩落としを使ってきた。
「(ちっ、考えるよりやってみた方が早いな)」
俺は飛んでいるモルフォンに狙いを定めて、一回転しながら技を放った。
「エアスラッシュ!!」
尻尾から放たれた空気の刃はそのままモルフォンに直撃すると、そのまま地面に落ちて気絶した。
残ったモルフォンは俺に向かって銀色の風を放ってきたが、俺はそれを技で回避した。
「神速!!」
技の直線上から逃れた俺はモルフォンに一気に近付いて、目にも止まらぬ早さでモルフォンに連撃した。
モルフォンはノックアウトして地面に落ちた。
俺は着地して残ったウソハチ二体を一睨みすると急に泣き出した。
だが俺はなんの抵抗もなく二匹のウソハチに接近して黄緑色に染まった尻尾を振るった。
「リーフブレード!!」
技が二体に当たると吹っ飛ばされて目を回した(あいつらの得意な嘘泣きをしてくれたおかげで攻撃のチャンスを見逃さずにすんだからな)。戦闘が終わった俺はバッグの中にあるリンゴを一個取り出すとかじりついた。
「(やれやれ面倒な事は片付いたが、今度はこっちが探さないといけないからな)」
俺はリンゴを食べ終わると周りを見回した。
え?周りを見ても何も見えないだろだって?まあ、その通りなんだがよ。見えるんだよ、三匹の位置がな
「(この固まって動いているやつがミレイナ達だな………)」
俺の目線で見ると、さっきの何処からか聞こえた声を聞いた瞬間、急にさっきの野生達からオーラみたいなものが見えたんだよ。
何でそんなものが見えた理由?知らん。四体を倒した後も見えているから、周りを見たらオーラが壁の向こう側からも見えるから納得したんだよ。
もしかしたら三匹の位置も分かるかも知れないってな、でもってさっき三つで固まって動いているオーラを発見したから多分三匹だと思ったんだ。
「(じゃあ動きますか)」
俺は三つのオーラの位置を確認しながら、動き出した。
(side:out)
シラヌイがモルフォンとウソハチを倒した頃、ミレイナ達はワープスイッチによって逸れてしまったシラヌイを探していた。
「見つからないね………」
ミレイナが二匹にふと呟いた。
先程から歩き回って野生のポケモンを倒しながら進んでいるが、一向に見つからない。しかも同じ所を何度も回ってまで探しているにも関わらずに見つかっていないのだ。
三匹は立ち止まって辺りを警戒しながら何もいない事を確認すると二匹は座り込んだが、クルスは座り込んで直ぐ大の字になった。
「はぁ〜、あれから結構探してるはずなのに何で見つからないの〜」
クルスがもう疲れたと言わんばかりに溜め息をついていると
「お前達が動きすぎているんだよ………」
「「「!?」」」
三匹は突然声がした方を向くと視線の先には白いコートを着たピカチュウ、シラヌイが立っていた。
「シ、シラヌイ!?いつからそこに!?」
「ついさっき」
シラヌイは驚いて飛び上がったクルスを軽く受け流して、クルスとミレイナの間に座り込んだ。
「やれやれこっちもこっちで大変な目に合ったんだからな、急に目の前から三匹は消えるわ、野生が待ち伏せているわ、しかも四体もいるわで結構疲れたんだよ」
「それは災難だったね………」
ミレイナはシラヌイが疲れた顔をしながら、説明する様子を見て苦笑いをした。
「じゃあ、充分休憩した事だしそろそろ頂上に行く?」
「ああ、行きますか」
シリアが立ち上がりながらシラヌイに聞くと彼も立ち上がり、後からミレイナ、クルスの順に立って四匹は頂上を目指していった。