第六話 頂上で待つのは山の主達(前編)
ワープスイッチで飛ばされたシラヌイは不運が重なり四体の野生のポケモン達と相手をすることになったが、何故か使えるようになった技で圧倒した後に三匹と合流して再び頂上を目指していったが―――?
―ツノ山 頂上―
シラヌイ達は苦労の末、ツノ山のダンジョンを乗り越えて頂上にやって来た。
「やっと着いたぁ!!」
クルスは両手を上げて喜んだ。
実はここまで来る道の途中、モンスターハウスに出くわしてしまったのだ(モンスターハウスとは、野生のポケモン達の巣窟となっている場所でダンジョンの部屋に入った瞬間に現れるという、ドッキリみたいなものだ。モンスターハウスの特徴はその部屋に道具が沢山落ちてある事が目印となっている)。
しかもモンスターハウスのある部屋には階段があるため、ここを避けて通れないのだ。
シラヌイはそれを見た瞬間、シラヌイを除く三匹は慌ててこの状況を脱するための方法を考えたが、シラヌイが三匹を探している途中に拾った不思議玉の一種である縛り玉のおかげでそこから抜け出す事ができたので運が良かったと言える。
「さて、頂上に辿り着いたんだ。さっさとこいつを打ち上げないとな」
シラヌイはそう言いながら肩に掛けたトレジャーバッグの中から、打ち上げ台と信号弾の代わりとなる光玉を取り出して発射の準備を始めていると―――
「「岩雪崩!!」」
「「「「!!」」」」
突如、四匹の頭上から大量の岩が降ってきた。
四匹は間一髪で避けたものの、シラヌイは打ち上げ台をその場に残してしまって岩の下敷きにしてしまった。
「何だ何だ!?」
シラヌイ達は周りを確認するといつの間にか四匹のフォレトスと二匹のウソッキー、そしてこの六匹のリーダー格のようなポケモン――プテラがその中心にいた。
ほんの少しの沈黙が訪れた後、プテラが口を開いた。
「ようやく姿を現したか………」
「ようやく………?どういう事だ………?」
シラヌイはプテラの言った事の意味が分からず首を傾げる。
「惚けてるつもりか?お前らなんだろ!?最近俺の部下を拐っていく輩は!!」
「部下を拐っていく………?」
四匹はプテラの言った事に不思議そうな顔をした。
確かにここにいるポケモン達にとってはシラヌイ達はよそ者に等しいのだが、彼らがここにやって来たのは一時間程前の事なので‘最近’という単語を使うのは不自然ではあるが、輩という単語もおかしかった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!僕達はついさっきここにきたばかりで―――」
「問答無用だ!野郎共、やっちまえぇ!!」
「「「おおおぉぉぉぉーーーーーー!!」」」
プテラの合図で部下達は掛け声を上げた。
「どうする、避けられそうにないぜ」
シラヌイは構えながら三匹に問いた。
「何言ってるの、避けられないのは大体見当がついていたから」
「うん、僕もやれるだけの事はやってみるよ!!」
「わ、わたしも!!」
シリア、クルス、ミレイナの三匹はとっくに覚悟は決まっていた。
「そうか、行くぜみんな!!」
シラヌイは自分の掛け声と共にプテラに向かって走り出した。舐められたものだな、と呟いたプテラは片方の翼を上げると二体のウソッキーが行く手を立ち塞がった。
だがシラヌイはそれに構わず走り続けた。その理由は
「今だシリア!!」
シラヌイの合図と共に、シリアが彼の真後ろから飛び出てきて技を繰り出した。
「蔓の鞭!!」
「「!!」」
シリアは繰り出した技を使い、二体のウソッキー縛って動きを封じた。
シラヌイは二体の間を通ると、走る勢いで飛び上がって技を繰り出した。
「十万ボルト!!」
シラヌイが強力な電撃を放つと、プテラはその場から飛んで避けると彼に接近して攻撃した。
「噛み付く!!」
「よっと!」
シラヌイはプテラの強靭な牙から出した噛み付くを飛び退いて避けると至近距離から雷を纏った拳をプテラの頭に向かって殴り付けた。
「雷パンチ!!」
「ふぐっ!!」
プテラは避ける暇もなく地面に叩き付けられたが、直ぐに体勢を立て直して周りの岩を使った。
「原始の力!!」
「ぐっ!!」
シラヌイは反応が遅れて原始の力が命中するも、岩でプテラとの距離が離れた程度に終わった。
二匹は互いを見合うと笑みを浮かべ
「やるじゃねぇか」
「あんたもな、プテラ」
戦いは段々と激化の方向へと進んでいった。
一方、シリアは一匹だけで二匹のウソッキーと対峙していた。
「まったく……いくら相性で有利だからといっても、相手が厄介なんだから……」
シリアはウソッキーの岩雪崩を避けつつ相手対してに弱冠愚痴をこぼした。
ウソッキーは岩タイプなので相性で言えば草タイプのシリアが有利のように見えるが、ウソッキーは岩タイプの中でも強力な技を使える事が多い方だ。
どんな技を隠し持っているか分からないので、警戒しながら戦っていた。
「リーフブレード!!」
「瓦割り!!」
シリアは上に飛んで回転しながら黄緑色に染まった尻尾をウソッキーに叩き付けようとしたが、ウソッキーは瓦割りで応戦した。
「騙し討ち!!」
「くっ!」
片一方のウソッキーがシリアの技を受け止めるともう片方のウソッキーが騙し討ちを繰り出して命中させた。
シリアは空中で体勢を整えてから着地した。
「だったら、グラスミキサー!!」
シリアは緑色の竜巻を発生させると二体のウソッキーに向けて放った。
「「まねっこ!!グラスミキサー!!」」
だがウソッキー達はそれに得意技のまねっこを使ったグラスミキサーで応戦した。
シリアのグラスミキサーはウソッキーのグラスミキサーとぶつかって消えたが、もう片方のグラスミキサーがシリアを襲った。
「しまっ――きゃあっ!!」
シリアはその場から退避しようしたが一歩反応が遅れて竜巻に打ち上げられた。すると、それを予知していたかのように二匹のウソッキーが上にジャンプしていた。
「「ウッドハンマー!!」」
「かはっ!!」
ウソッキー達は自分達の胴体をシリアの体におもいっきりぶつけると、シリアは地面に叩き付けられた。
「う………つ、強い……!」
「あったり前だ!俺達兄弟のコンビネーションを舐めるなよ!!」
右のウソッキーが言うと
「そうだ!俺と兄さんがいれば――」
左のウソッキーが手を上げると右のウソッキーも手を上げて手を重ねてシリアに向けた。
「「どんな敵/奴でもイチコロ/ボッコボコだぜ!!」」
「何で敵なんだよ!!奴だろ!!」
「それはこっちのセリフだぜ兄さん!!ボッコボコってなんだよ!!」
シリアはウソッキー兄弟のケンカを見ながら、早く立たないと、と心に思いながら軋む体に叱咤を掛けて起き上がろうとしていた。
ウソッキー兄弟がケンカをしている一方、クルスとミレイナの二匹は
「もう!こっち来ないで!!」
ミレイナは逃げながらシャドーボールを後ろに向けて放った。
見事にシャドーボールはミレイナを追いかける二匹のフォレトスの内、一匹に命中したが
「そんなの利かないだすよ〜!」
フォレトスはびくともしていなかった。
「早く止まるだす!ミラーショット!!」
シャドーボールが当たらなかったフォレトスは体から閃光を放ちながら光を発射した。
「うわあ!!」
ミレイナはミラーショットをスレスレに避けて再び走り続けた。
「もう追いかけないで〜!!」
ミレイナは走りやめて穴を掘るを使って地面の中に逃げた。
「そんなとこに逃げた所で、無駄だす〜!!」
二匹のフォレトスはその場でじっと止まって待ち伏せをした。
体を光らせてミラーショットの準備を始めた瞬間だった。
地面にヒビが入り中から何がが出てきた。
「「今だす!/そこだす!ミラーショット!!」」
二匹のフォレトスは同じタイミングでミラーショットを放った。しかし
「だす!?」
地面の中から出てきたのは一つのシャドーボールだけだった。
ミラーショットはシャドーボールに命中すると消えてしまい、小さな爆煙が起こった。
「く、くそ!どこにいるだすか!?」
二匹は周りを見るが、視野には煙しか映らないため最悪だった。
煙が晴れて、二匹はようやく探せると思った瞬間
「悪いけどこの勝負
―――僕達/わたし達の勝利だ/勝利よ!!」」
「「!!」」
後ろの声に釣られて振り返った二匹のフォレトスの視界には、クルスとミレイナが技を放とうしている時だった。
「シャドーカタール!!」
「波動連弾!!」
ミレイナは剣とブーメランの形を模した黒い塊を、クルスは多数の波動弾を放った。
「「だすううううぅぅぅぅぅぅーーーーー!!!!」」
あまり断末魔とは言えない声と小規模の爆発が響き渡った。
爆発で起こった砂煙が晴れるとそこには二匹のフォレトスが転がっていた。
「やったよクルス!!」
「うん!作戦はうまくいったね!!」
二匹の考えた作戦とは、先ずミレイナが怖がるフリをして逃げる、そしてつられたフォレトス達にシャドーボールを放って少しずつダメージを与えた後にクルスが残りの二匹をはっけいで麻痺させたら、ミレイナに手で合図を送り穴を掘るをさせる。
そしたら確実に待ち伏せをしてくるのでミレイナはシャドーボールを地上に向かって放った後、掘った穴から出てきてフォレトスの背後を取って姿が見えたら今二匹が使える最大威力を誇る技を放つ。
やがてクルスが麻痺をさせた二匹のフォレトスがこちらにやって来た。
「さあ、残ったのは君達二匹だ!」
クルスは指を指しながらセリフを言うと
「だす、だすすすすすす!」
「だすだすだすだすだす!」
二匹のフォレトスは変な笑い方をしながら二匹を見た。
「な、何が可笑しいの!もう勝負は決まっているのよ!」
ミレイナは笑う二匹に言うが、彼らの笑い声は収まらなかった。
クルスが言葉を言おうとした瞬間だった。
「うわあっ!?」
「きゃあっ!?」
急に背後から重みを感じたと思うと何がが自分達の背中に乗ってきた。
クルスとミレイナは首を動かして正体を見た。
「!!こ、こいつらは!!」
二匹は目を見張った。
背中からのしかかってきたのは先程の作戦で倒したはずのフォレトス達だった。
「だすす、奥の手は最後まで取って置くべきだす」
クルスの上に乗ったフォレトスがそう言うと二匹は突然光を放ち出した。しかも光は弱まるどころか、段々と輝きを増していった。
クルスとミレイナの二匹はその光を見て、自分達の中の警告音が激しくなっているのを感じた。
二匹はフォレトスから抜け出そうとするが、重すぎて動く事が儘(まま)ならなかった。
そして光を放ち出して数十秒、フォレトスから放たれた光が二匹を包み込んでいった。