第一話 闇夜の嵐にて
ピシャアアアァァァァーーーーーン!!
雷鳴が響き渡り、激しく降り注ぐ雨、吹き荒れる風
そんな中―――
〜☆〜
「ハァ……ハァ……ハァ……」
夜の森を必死に駆ける二人、いや一人と一匹がいた。
「大丈夫!?」
一匹の方は年頃な女の子の声で、休む間もなく共に走り続ける一人に訊ねた。
「ああ!それより急ぐぞ!」
一人の声の主は女の子とは反対に青年は声変わりの時期にも関わらず、低音と高音の境目の声音は誰しも魅了するようなとても良いものだが、もて余す余裕のない焦り声で答えた。
二人は走るペースを上げて真っ直ぐ森を抜けた先は、崖になっていた。
ザパアアアアァァァン………
崖から真下を見ると、激しい風と共に荒波を立てていた。
「行き止まりか………」
「そうね、なら急ぎましょう。早くしないとあいつらが―――
探しましょうと言おうとした瞬間、彼らが通った道の茂みから黒い光線が放たれた。
「!!」
「クソッ!!」
放たれた光線は、一直線に女の子の方へ向かっていく。しかし青年の方は、それに構わず自分の隣にいた女の子を庇うように地面に伏せた。
「だ、大丈夫………!?」
「ああ、何とか………!」
女の子は心配そうに声を掛けると、青年は立ち上がりながら答えた。
すると、茂みの中から青年達を追っている者達が現れた。
「クックックッ。諦めの悪い貴様らもこのような状況となると手詰まりのようだがどうする、また先程のように足掻いてみるか?」
追っ手はジリジリと青年達に歩みより、崖の先端へと追い込む。
「どうするの!?」
「ちいっ!!」
追っ手が彼らに、更に一歩と歩みを進めた瞬間――
ピシャアアアァァァァン!!
突如、青年達と敵の間に雷が落ちた。
「きゃっ!?」
「うわっ!?」
「ぬおっ!?」
地面が雷によって砕け崖側に立っていた二人の内、女の子は岩肌の僅かに尖っている部分に手を伸ばして掴んだが青年の方は
「手を!!」
「ぐっ!!」
手を伸ばした。
しかし、手と手の距離はほんの数センチ届かず海に落ちていく。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
荒波を立てる海に、落ちる友へ手を伸ばすがその手は届かない。
「●●●●ーーーーーーーーッ!!」
女の子は海に落ちていく友の名を呼ぶ、しかし友には荒波を立てる音によって聞こえることはなかった。