番外編
出張『エクストリーム』 その1
仕事をしていると誰だって経験する事がある。
その一つが出張というものだ。自分がいつも仕事をしている場所とは違う地域に一定期間臨時で派遣される事である。




 〜☆〜




そしてここ、ライトタウンにもポケモン達だけが暮らす世界の中で存在する職業の一つ――探検隊というものがある。








ライトタウンの近くにある海岸では一匹のポケモンが技の練習に励んでいた。

「波動槍《オーラースティンガ》!!」

そのポケモンは黄色い毛並みに耳の先が黒く、ギザギザな尻尾をしたポケモン―――ピカチュウであった。ただ、そのピカチュウは少し違いがあった。黒い服を着ており、両目が黒曜石のような艶のある瞳をしている事であった。
ピカチュウは右手を前に出し、左手を後ろに構えると掌を通って細長い一本の青いオーラの槍が表れた。しかしその槍の先端はただ尖っているだけのシンプルで素朴な槍だった。

「だっ!!」

ピカチュウは大きく一歩踏み出しながら握っている槍で目の前の岩を一突きした。構え直すと後ろに下がりながらまた一振りする。

「はあっ!!」

一歩下がったピカチュウは槍を右手で握って投げる態勢に入って力を集中した。

「はあああああっ!!」

すると、槍の先端は変形して両刃形の槍となった。
ピカチュウは自分の位置から数メートル離れた岩に狙いを定めて思いっきり振りかぶり槍を投合した。

「せやあっ!!」

槍は一直線に岩へと向かっていくが、シラヌイは右手を岩に向けて構えると

「シェイプウォール!!」

そう技の名を呼ぶと槍の標的となっている岩の全体に五角柱型の緑の防壁に包まれた。防壁と槍は、ガキイィィィン!!というぶつかり合う音をたてながら衝突した。
槍は、音をたてながら消えてゆき残った防御壁は未だに維持されたままだった。

「どんな感じだ?」

ピカチュウは防壁を撫でながら“自分の中にいる”者に話しかけた。

『まぁまぁだな。防御壁の方は』

ピカチュウの話を聞いてくれたのは、彼と同じ種族のピカチュウで彼の第二人格――睦月 莇喝墾(ムツキ アシド)であった。
ついこの間にアルード跡地調査中で遭遇したお尋ね者のボーマンダをピカチュウの体を借りた上で倒してくれた者だが、彼の存在はあまり言わないでくれと本人から口止めされたので自分以外知らない。
そしてこの技、シェイプウォールは彼の考案した技の一種で、今こうして試しているのだ。

『お前はどっちかって言うと、防御力よりも形成を優先させちまうからな。形成に気を取られると防御が劣る、防御を意識すると形成が遅れる。発案した俺が言っちゃ悪ぃが、この技の難題がそんな所だな』

「何だ?お前随分とまともに考えているな」

ピカチュウは彼を少しばかり茶化すと「フン、黙れ」と返した。

『まぁいい、何よりつまらない事でやられてもらっちゃあ困るからな。さっさと実力つけて俺無しでの戦いぐらいできるようになれよ』

正直ピカチュウは、彼が自分を手助けしているのか貶(けな)しているのかどっちか分からない言葉を言うので対処が難しい。

『これでいいだろ。後は自分の好きにすればいいさ、じゃあなシラヌイ』

アシドは彼の名を言うとそれっきり声が聞こえなくなった。「ヒントもくそもないな」と心の中で呟いたが、それを知るのは彼だけだった。
彼の名は水無月 不知火(ミナヅキ シラヌイ)。元人間であり、ライトタウンのギルド『ディザスター』の探検隊『エクストリーム』のリーダーだ。
この海岸の岬で倒れていた所をチームの一員に見つけてもらい自分に居場所を与えてくれたのだ。
シラヌイは傍の岩に置いてある白いコートを着るとその近くにあったリンゴに手を掛けて齧(かじ)り付いた。
そろそろギルドに戻ろうか、と思い始めた時遠くから声が聞こえた。

「シラヌイ〜!」

遠くから声を掛けられたシラヌイは手に持っているリンゴを後ろに隠してその方を向くと、その先には首にピンクのスカーフを巻いた一匹のイーブイの少女がこちらに走ってくるのが見えた。
彼女の名前はミレイナ=ハバグ、探検隊『エクストリーム』の一員である。

「ハァ………ハァ………やっと見つけたよ」

「どうしたんだミレイナ、そんなに慌てて」

シラヌイは息を切らしながら話す彼女に訊ねた。

「実は、ラミナスから………話が、あるって………」

「ラミナスから………?」

シラヌイは自分が就いているギルドの親方の名を言いながら首を傾げた。

「うん、シラヌイがいないから探し回っていたけど………何をしていたの?」

「………いや、ちょっと散歩してただけだ」

シラヌイは訊ねてきたミレイナに適当な訳を話すと「そうなんだ」と言って聞き入れた。

「それよりも、速くラミナスの所に行こ。クルスやシリアも待ってるよ?」

「ああ、わかってる」

シラヌイは残り少なくなったリンゴを齧り終わると先に行ったミレイナを追うように急いで自分達のギルドの下へ走った。




 〜☆〜




 ミレイナは急ぎ足で梯子を降りて行き、シラヌイは梯子を一段飛ばししながら地下へと降りていった。

ここ、ライトタウンの一角に探検隊の活動拠点であるギルドが建っていた。
ギルド『ディザスター』、それがこのギルドの名前だ。彼らはここを活動拠点として探検隊をしていた。








カチャリという音を立ててシラヌイは親方部屋の扉を開けた。

「やっと来たわね」

シラヌイとミレイナの視線の先には一匹のポケモンがいた。オレンジ色をしており首から腹の辺りまで黄色い浮き袋を下げたイタチのようなポケモン―――フローゼルであった。
このフローゼルこそ、ギルド『ディザスター』のギルドマスター、ラミナス=フランである。

「随分遅かったけど、どうしたの?」

ラミナスの左側には一匹のポケモンが立っていた。赤いスカーフを首に巻き青と黒を基調とした毛並みで、両方の耳元からは一つずつ房(ふさ)が付いている二足歩行のポケモン―――リオルであった。

「対した事じゃないさクルス、ちょっとした散歩だ」

シラヌイは訊ねてきたリオルの名を言いながら応えた。
彼の名はクルス=セロ、シラヌイ率いる探検隊『エクストリーム』の一員であり、ミレイナの幼馴染みでもある。

「へぇ、散歩っていう割には結構長いねぇ………」

ラミナスの右側にいるポケモンは水色のリボンをつけ、緑色の体をして首には黄色いものがあり、尻尾の先は三つに分かれて葉っぱに見えなくもないものが付いており、蛇のような姿をしたポケモン―――ツタージャがいた。

「シリア、俺だって散歩ぐらいのんびりするもんだよ」

シラヌイは、疑問に思うような訊ね方をしてきたツタージャの名を言って応えた。
彼女の名前はシリア=ヴァリエ、他の三人と同じく『エクストリーム』の一員である。

「さて、全員揃った所で話を切り出すわね」

ラミナスが四人に言うと、彼らは彼女の方を向いた。
今日は少々違う一日の始まりだった。いつもなら彼女の側に、『ディザスター』の親方代理であるムクホークのティラ=ヴルツェルが居るはずだが、彼は今里帰りをしているので休暇中であった。
「今回の話っていうのはね………」

さすがの四人も、ラミナス直々の話という事で若干緊張気味であった。

「他ギルドへの出張の件について話そうと思ったの」

「「「「出張?」」」」

ラミナスの言った事に四人が同時に復唱した。

「ええ、あなた達もそろそろここの生活にも慣れてきた頃じゃないかしら?」

ラミナスに言われて、四人は顔を見合わせた。
探検隊活動をしていた三人の下にシラヌイが来てから、すでに四ヶ月ほど経っていた。ミレイナとクルスの二人は結成して日は浅いものの、右往左往はしなくなり、シリアは入隊して約五ヶ月辺りだが、すっかり『ディザスター』の一人として馴染んでいる。シラヌイは、成果が上々と言った所で三人と共に行動しながら、腕を上げつつ学んでいるのでリーダーとしての役割と責任感を自覚しつつあった。
そして、この前の成果もあり『エクストリーム』はゴールドランクに到達していた。

「まぁ、俺は三人のお陰でこうしていられる上に、色々と学ぶ事ができるから良いんだけどな」

「うん、慣れてきた、かな………」

「そうだよね、始めは僕とミレイナだけだったけど、今はシラヌイとシリアの二人が一緒に居てくれるからさ。前みたいなお尋ね者が来たって、全然平気だよ!」

「それはそうだけど、私達未だに新米探検隊だけどね」

ラミナスに言われた事を思いながら、四人はそれぞれの言い分を述べる(ただシリアは、肝心な事を忘れ気味のクルスに忠告したようなものであるが)。

「『エクストリーム』には、『ディザスター』の代表として別のギルドに出張して間の滞在活動をしてもらうわ」

「み、三日!?」

これといった反応を見せない三人に対して、クルスだけは異常な反応を見せた。

「そんなに滞在しないといけないの!?」

「ええ。出張先のギルドによって変わるけど、今回は三日間滞在してもらうわ」

ラミナスが言い切るとクルスは肩をガクリと落とすとその理由を言った。

「はぁ、しばらくはナナシの料理とお別れかぁ………」

理由を聞いた全員の心の中で「そっちか………」という突っ込みが一致したのは言うまでもない。しかし、そんなクルスの不満を振り払うような発言をラミナスはしてくれた。

「フフッ、そんなにガッカリする必要は無くてよ♪」

「「「?」」」

「ヘ?」

「あなた達が向かう出張先はね………








  『マリルリギルド』なのよ」

十秒間ほどの間が空いた。最初は呆然としていたが、少しずつ喜びへと変わっていく。

「…………ヘ?」

「『マリルリギルド』、って………」

ミレイナとシリアの二人が口を開き、後からクルスも開いた。

「も………もしかして………!」

彼の問いに答えるように、ラミナスは片目を閉じてウインクしてみせた。クルスとミレイナは互いの両手を繋いでその場で周り始め、シリアは嬉しそうにしている二人の様子を見て「ふふっ」と軽く笑い、シラヌイはひゅう、と嬉しさを表す口笛を鳴らした。

「さて、喜んでいるはいいけど話の続きをしてもよろしい?」

ラミナスがそう言うと、クルスとミレイナは声に反応してそちらの方を向いた。

「確かに喜んでもらっても構わないけど、あなた達は『ディザスター』の代表としてマリルリギルドに行く事を忘れないでね?」

「「はい!」」

「ええ」

「おう」

ラミナスが四人に訊ねると、彼らは一片に返事した。それを聞いたラミナスは話の続けた。

「出発は明日の朝、ここを出たら隣の港町にあるマリルリギルドのトレジャータウン行きの船に乗ってね。」

ラミナスの話は終えたようで、シラヌイ達は親方部屋を出た。



 〜☆〜




親方部屋を出た後、四人は自分達の部屋で依頼への準備をしていた。

「やったねミレイナ、また『マリルリギルド』に行く事ができるんだ!」

「うん、再会できるなんて思わなかったよ!」

準備をしている二人を余所に、クルスとミレイナはまた会える事の嬉しさを喜び合っていた。そんな二人を見ていたシリアは、会話を見越して入ってきた。

「二人共話し合ってばかりじゃなくて、自分達の準備くらいしたらどうなの?」

「だってさ、またあそこに行けるなんて思わなかったんだよ!シリアは嬉しくないの?」

会話に割って入ってきたシリアに、逆に質問してきたクルス。

「それは嬉しいけど、私達は『ディザスター』の代表として『マリルリギルド』に向かうんだから、気を抜いてはいられないの」

クルスはシリアの返答に「まじめだなぁ………」と思いつつ、「シラヌイはどうなの?」と聞いてみた。準備に手を掛けていたシラヌイは、その手を止めてクルスの方を向いた。

「俺か………?そうだな、あの時のポッチャマやイーブイ以外の奴らにも会える事を思えば、嬉しいかな………」

シラヌイの返答を聞いたクルスは「やっぱそうだよね!まったく、シリアってばまじめすぎるからさぁ………」とシリアの事を見ながら言った。それに対して彼女は「当たり前の事を言ったまでよ」と言って再び準備に入った。
そんな他愛のない会話を聞きながら、シラヌイはあの時のポッチャマの事を思い出していた。

「(確か、あのポッチャマは普通のポッチャマじゃ覚えない技が使えるんだったな………)」

シラヌイは再び手を止めて部屋の窓から見える空を見ながらその時の光景を浮かべ、思った。

「(もしかしたら、その秘密を聞けるかもな………)」




 〜☆〜



所変わって、ここは北の大陸(ノースランド)に存在する四大ギルドの一つ、『マリルリギルド』。
そして、その中にある一つの部屋にて―――








「へっくしゅんっ!!!!」

部屋の中にいたポケモンは、大きな声を上げてくしゃみをしていた。そのポケモンは、青と水色を基調としたペンギンのようなポケモン、ポッチャマであった。

「何だ。誰か俺の噂でもしてんのか………?」

そのポッチャマは、手で鼻を擦りながら読んでいた本を閉じて本棚にしまうと、ドアを開けて部屋から出た。




 〜☆〜




ポッチャマは『マリルリギルド』の広間に来ると、今日も今日で多数のポケモン達が他愛のない会話をしていた。

「いやぁなんだ。ここ最近、妙に俺ら討伐隊の出番が多くなったよな」

「出番が多いってのは嬉しいけど、なんか歯応えのない奴らばっかなんだよ」

「こう、張り合いのある奴らと戦いたくなってくるよな」

「だったらどうする、俺とやるか?」

「お、ちょうどいいな。お前とは一回張り合ってみたかったぜ!」

「やめとけやめとけ、マリルリさんにそんなとこ見られたら、締め上げられるかもしれないぜ?」

「うっ………そ、それを言われるとなぁ……」
ポッチャマはそんなポケモン達の会話を見ていると、彼は後ろから声を掛けられた。

「おはようございます、トリトン君」

自分の名前を呼ばれたポッチャマ――トリトンは振り返るとそこには三人のポケモンが並んでいた。

「アッサムさん、おはようございます」

「おはよう、トリトン君」

トリトンはアッサムと呼ばれたロトムに挨拶すると、彼の左側にいるエネコロロというポケモンが彼に挨拶をした。

「おはようございます。カモミールさん、グレイさん」

トリトンは左側のエネコロロ――カモミールと右側のアブソル――グレイに挨拶をした。

「少し起きるのが遅かったようだけど、何かあったの?」

カモミールは、普段よりも遅めに部屋から出てきたトリトンに聞いた。

「いえ、なんでもないですよ。少し早めに起きたので、時間潰しに本を読んでいたら時間が経っていたので」

トリトンの訳を聞くと、カモミールは「なるほどね〜」と納得してくれた。

「お、トリトンじゃねぇか」

彼はまた自分の名を呼ばれて振り返ると、その先には一匹のヒノアラシがいた。
彼の名はアポロ。この『マリルリギルド』の探検隊第三番隊隊長であり探検隊『フェニックス』を勤めている。

「おう、アポロか」

「おはようございます。アポロ君」

「おはよ〜、アポロ君」

「………」

グレイは相変わらずの無口だが、アッサムとカモミールはアポロに挨拶をすると彼も三人に挨拶をした。

「あっ、アッサムさんにカモミールさんにグレイさん。おはようございます」

「今日も相変わらず見回りですか?」

「はい、今回は範囲を広めた上でヘルメス達二番隊の隊員にも手伝ってもらうつもりです」

トリトンは、アッサムとアポロの会話のやり取りに少し聞き覚えのない言葉を聞いた。ヘルメスの事はともかく、見回りとはどういう事だろうか。
彼はその事についてアポロに詳しく聞こうとした所だった。

「アッサムさん、カモミールさん、グレイさん、おはようございます」

アポロとトリトンは声のした方を向くと、そこには『マリルリギルド』の探検隊第二番隊隊長で『フェニックス』の一人、リオルのヘルメスの姿があった。

「おはようございますヘルメス君。アポロ君達の手伝いをすると聞きましたが………?」

「はい。三番隊の隊員が討伐隊の手伝いをしているので、僕ら二番隊が支援に回る事になりました」

ヘルメスは、事情を聞いてきたアッサムに丁寧に説明をした。

「なあヘルメス。見回りって、一体何をするんだ?」

事情を知らないトリトンは、先程気になった見回りという言葉の意味を知ろうと思いヘルメスに聞いた。

「最近ここら辺一帯で、怪しげなポケモン達の集団を見掛けるようになったらしいんだよ。その情報を聞いたマリルリさんは、そいつらの調査をするために『マリルリギルド』の一番隊から五番隊のポケモン達に一日交代で見回りをさせている訳なんだよ」

トリトンは謎が解けて、そうなのかと納得したように呟いた。

「本来なら今やるべき事に全うしたいとは思っていたけど、もしかしたらアポロがドジを踏む所を見れるかもしれないから、おもいっきり笑ってやろうと思ったのさ」

「あ?………お前、俺に焼かれたいのか?」

ヘルメスがさらりと言った言葉を聞いたアポロは、彼を睨む。

「ああごめんごめん、つい口が滑っちゃったよ」

「ふ・ざ・け・ん・な!あとで表出ろ!炙り倒してやるぞ!!」

「これから外に出掛けるっていうのに体力を使うなんてね。僕はそんな事をするほどアホじゃないよ」

「こ、このやろう………!!」

ごもっともな事をヘルメスに言われたアポロは、悔しさに歯ぎしりぐらいしかできなかった。そんな二人の言い合いを中断するかのように、とある人物が現れた。

「三人共おはよう!」

明るい女の子の声で名前を呼ばれた三人はその方を向くと、一匹のイーブイがこちらに向かって走ってくるのを確認した。
こちらのイーブイは、ここ『マリルリギルド』の探検隊第三番隊副隊長であり、トリトンのパートナーのアテナである。

「よう、お前にしては早かったじゃねぇかアテナ」

トリトンは自分のパートナーを見て珍しそうに言うと彼女は頬を膨らませた。

「もう、何その言い方。私はいっつも早く来てるつもりなのに………」

不機嫌そうにするアテナを見て、トリトンは慌てて謝った。

「あぁ、悪い悪い。機嫌直してくれよ、冗談なんだから」

トリトンの素振りにアテナは「それなら別に許すけど………」と言って彼に向き直ると、トリトンの後ろにいたアッサム達三人に気付いて挨拶をした。

「アッサムさん、カモミールさん、グレイさんおはようございます」

アテナの挨拶に、アッサム達もそれぞれ彼女に「おはようございます。アテナさん」「おはよ〜、アテナ」と返事をした。

「よし、俺はそろそろ見回りに行きます。あんまりここでのんびりしていられないので」

「そうだね、僕もそろそろ行こうと思います」

アポロが見回りに向かおうとすると、ヘルメスもそれに釣られてこの場にいる全員に言った。

「わかりました。お気をつけて」

アッサムが二人に言うと「はい」と同時に言って『マリルリギルド』の出口に向かった。二人の歩いている様子をしばらく見ていると、ヘルメスがまたアポロをおちょくったらしいようで、アポロはヘルメスに対して何やら怒っていた。

「それでは、私達もやることがあるので行きますね」

アッサムはトリトンに言うと「あ、はい」と返事をした。三人はその場を離れて行きトリトンとアテナの二人だけになった。
そしてトリトンは、彼女に一言言った。

「さて、今日も行くか!」

「うん!」

トリトンの言葉にアテナは答えると、二人もまた出口に向かった。




 〜☆〜




「やれやれ今日も今日とて、書類処分が大変ねぇ………」

トリトン達が依頼をこなそうとしている頃、一つの部屋で呆れた気味に机に積まれた書類処分に励んでいるポケモンがいた。
このギルドの親方であり、海神の異名を持つポケモン――マリルリであった。

「まったくもって迷惑千万よ。こんなに多くの盗賊団が存在するなんて」

マリルリの持っている資料の中には、盗賊団リストが入っており、その盗賊団の名前やポケモンの種族といったものが書かれてあった。

「でも、迷惑じゃない物が混じっているけどね」

マリルリは持っている資料を置いて、別の資料を持って内容を再び見た。










『マリルリギルドの親方様へ


こんにちは、マリルリさん。いかがお過ごしでしょうか。そちらの噂は時々お聞きになられています。
今回、手紙を送った訳はこちらで活動しております一チームの探検隊をそちらで三日間の間、滞在活動させていただきたいのです。こちらもマリルリギルドとまではいきませんが、実力を付けてきた者達が居ります。そんな彼らにも、あなたのような有名な方が居られるギルドにいれば、少しでも学べる事があるのではないかと思いました。
もし承諾なられるなら、この手紙と一緒に入っておられます紙にサインをお書きください。
マリルリさんの良い返事を期待しております。


        『ディザスター』ギルドマスター
               ラミナス=フランより』




「迷惑どころか、むしろ大歓迎よ」

マリルリは内容を読み終えて呟くと、もう一枚の手紙を見た。




『   『ディザスター』所属探検隊
      チーム『エクストリーム』
       ミナヅキシラヌイ
       ミレイナ=ハバグ
       クルス=セロ
       シリア=ヴァリエ
               以下四名のマリルリギルド滞在活動を許可する            』




「もしかしたら、彼の正体を聞けるかもしれないわね」

マリルリは、滞在活動リストに書かれてあるシラヌイの字を見ながら微笑した。


Nazelu ( 2014/09/26(金) 19:05 )