プライバシーの関係でお答えできません
最近プライバシーについて厳しくなり、人だけではなくポケモンも対象になったらしい。これは「ポケモンだから」という理由での犯行が年々増えているから、というのが大きいそうだ(警察などの力もあり少しは減っているようだけど、それを上回る勢いで犯行が増えているというから大変だ)。
確かに、僕の周辺でもポケモンがいつの間にか別の人のポケモンにされる(どうやらモンスターボールの情報を書き換えたらしい。器用なことだ)、何者かに攫われる(これは単純に連れ去ったらしい。目立つからすぐに捕まったようだけど)といった事件が起きたというのを聞いたことがある。
これなら厳しくなるのは当然と言えば当然だし、僕もこれには反対の意を述べる気はない。ポケモンは僕達にとって大切な「家族」だ。「家族」を危険に晒されてのうのうと笑っているやつは至極少数派だろう。
先ほど流れてきたニュースを聞いてそのようなことを考えながら、僕は長年連れ添ってきた相棒……サーナイトが入院している病院へと急ぐ。年齢のこともあって運転免許が持てないから、自転車でしか行けないのがもどかしい。
彼が一緒ならすぐに向かえたのだが、その彼自身が入院しているのだから、この状況はどう頑張ってもひっくり返せない。他に移動手段を持つポケモンを仲間にしていれば状況は変わったのだろうが、僕は残念ながらボール投げのセンスは壊滅的だった。彼と出会えたのは奇跡に等しいだろう。
そんな彼(彼の希望でそう進化させた)が入院するきっかけを作ったのは、間違いなく僕の判断ミスだ。あそこでゲンガーの攻撃を避けられていれば、かすり傷程度で済んだというのに……。
「チッ」
思わず舌打ちをしながら、ペダルを漕ぐ足に力を籠める。相棒が入院している病院もプライバシーについて厳しくなったのだろうか。でも、僕は相棒の「おや」なんだ。そんなもの、気にする必要なんかない。
駐車場に着くと少々乱雑に自転車を駐車スペースに止め、受付の人に違和感を持たれないよう乱れた呼吸を整える。ある程度整ったことを自身の心臓の音と呼吸のリズムで確認すると、自動ドアを潜り抜けて真っ直ぐ受付へと向かう。
相棒の種族と名前(一応つけていたのだが、彼が恥ずかしがるので普段はあまり呼んでいない)を言い、彼との面会を希望する。
そんな僕に告げられたのはとても残酷で、「思い込み」で肥大化した頭に「事実」の剣を突きつけるには十分な言葉だった。
「プライバシーの関係でお答えできません」 終わり