一、灰色のポケモンは何を思う
Episode 7

(視点あり)




 丁度、僕らが1時間目の準備をしている間に、彼女はやってきた。
 彼女がランドセルを背負っていたのと、教室のドアを思いっきり開け放ったのとで、クラスの注目を集めた。授業間の時間だったから丁度先生が教室を離れている訳で、それを確認した彼女は、「ラッキーッ」と小さくガッツポーズをとりながら教室の中に入ってくる。
 彼女は、周りの視線に赤面しながら、そそくさと僕の隣の席にランドセルを下す。だいぶ走ってきたようで、少し息切れている。僕が彼女の様子を伺っていると、彼女はこっちを見て微笑んだ。

「……めずらしいね、篠崎が遅刻なんて。森でなんかあったの?」
「他に遅れる理由があると思う?」

 なんて言って、更に笑顔。いやこの笑顔はちょっと苦笑いが入っているような気がしなくもない。
 
 彼女……篠崎 茜は小学四年生で僕と同級生。同じクラスで隣の席。仲もそれなりに良くて家も近い。幼い頃からの仲なので、お互いの事はある程度知っている。……といった僕の大親友である。
 篠崎は登校前、かならず近くにある森へ散歩に出かける。そこでたくさんのポケモンと触れ合った後に学校に来る。これが彼女の日課らしい。
 たまに今日のように学校に遅れることがある。そういうときは大体森でなにかあったときだ。

「―――んで、何があったの?」
「全部話せば長くなるけど、……簡単に言うとポケモンの手当、かなぁ。」
「へえ、そうなんだ。」

 それ以上の詮索はしなかった。どうせそんなとこだろうと薄々感づいてはいたし、なにより自分には関係のない話っぽいし。


 しばらくして、一時間目を知らせるチャイムが鳴った。立っていた人が一斉に席に着く。僕らも体制を正面に向け直した。
 先生が教室に入ってくる。学級委員が号令をして一時間目の始まり。

「あれ、篠崎さん。いつ来てたの?」

 僕らの担任の先生、……光珠(ミタマ)先生が茜の名前を呼ぶ、「え」と一言、茜の声が聞こえた気がした。篠崎のあの顔……何か言い訳を考えんとしてる顔である。

「あ、えーと……。最初からいたと思うんですけどー、気づいてませんでs」
「さっき来ましたよー、完全に遅刻してました。」
「ちょっと、宮野ォ!」

 案の定だったので言ってやりましたーと。

「あらあら、そうなの。」
「もーッ、なんで言うかなー!」

 怒る篠崎に舌を出して応える。周りのみんなから、小さく笑いが起こっていた。



 
 全部の授業が終わる。下校時間になり、教室は一気に喧騒が広がる。僕が帰りの準備をした頃には、もう既に彼女は帰っていた。
 余程大変なことがあったんだろうか。授業中も時計や窓の外をしきりに気にしたり、心配そうな顔をしてたり。
 僕は割と最後の方に、教室を後にする。
 なんであろうと、僕には関係のないことだから。



 この世界には、ポケットモンスター、略してポケモンという生き物がいる。
 森や海、岩場や街中など、至る所にポケモンは住んでおり、人々から愛されている。
 人間と行動を共にしているポケモンもいる。どうやらこの世界の大人の5分の1がポケモントレーナーとして旅をした経験があるらしい。
 どんな人でも10歳になったら自分のポケモンを持つことができる。ポケモンセンターというところへ行き、簡単な申請をしてトレーナーカードというものをもらうと、誰だってポケモントレーナーになれる。
 僕らの学年が丁度その時。今は7月なので、10歳になった人はまだ半数以下。その中でポケモントレーナーになった人は、篠崎含め3人。以外に少ないようであるが、時間もたてばどんどん増えていくのであろう。
 



 僕……、宮野 めぐるは、ポケモンが嫌いだ。
 幼いころ野生のポチエナに追い回されてからのトラウマ。それ以降ポケモンには触れたことすらない。
 確かにポケモンは、かっこいいのもかわいいのもいる。……だけど、一度近づけば、いつその牙を向けられるか分からない。野生というものは、いつだって獰猛だ。
 篠崎は大のポケモン好き、学校にいてもニャルマーのモンスターボールを持ち歩いている程だ。口を開けばポケモンの話である。
 でも、篠崎なりの気遣いなのか、僕の目の前では一切ニャルマーをモンスターボールから出そうとしない。僕的にもありがたいんだけど、なんか居た堪れない気持ちだ。


 僕は、帰りの道を一人、歩いていった。

■筆者メッセージ
非常に後味の悪い終わり方ですサーセン。
めぐるくんの容姿は大体チェレンです。はい。

更新空けてごめんなさいでしたッ
( 2012/03/24(土) 00:51 )