Episode 6
「……とりあえず、この子、どうしよう。」
茜は、先程手当したこのポケモンを見ながら、ため息交じりに呟く。
そのポケモンは、手当が終わってからぐっすりと寝ている。揺さぶって起こすのもかわいそうだからこのままにしている。
「森に帰すか、あるいは此処で元気になるまで置いておくか。」
「そう。私的には優しいポケモン達に囲まれてる方がリラックスできると思うし、森で預かってもらった方がいいと思うんだけど。」
そう言って、そのポケモンをじっくりと観察する。
全体的に灰色で、猫のような耳がついている。額には大きく「×」の模様が刻まれている。ずんぐりした体に、背中には2つの黄色い尻尾。その尻尾も「×」模様になっている。
「てゆかさ、ホントに知らないの? このポケモン。」
「さっきからいってるじゃん。本当に知らないんだって。」
「記憶の中にちょっとでも入ってないの?」
「だから。」
「ごめんごめん。」
茜の言葉に怒気が含まれていた。ルマはつい謝ってしまった。
ルマがここまで疑っているのは、茶化してる訳でも、疑っている訳でもなく、驚いていた。
これまでポケモンの姿と名前、ついでにタイプや特徴まで外したことがない茜が、かすったならまだしも、「知らない」というとは。
「知らない」筈がない。何かの間違いだ。きっとど忘れでもしているんだろう。ルマはそう思うことで気持ちを抑えることにした。
「この子が起きたら、とりあえず事情を聞いて、何も掴めなかったらひとまず森で預かってもらおうか。私も学校あるし、森ならきっと安全だし。」
「……そう言ってるケド、茜。」
「ん?」
ルマが、時計の方を指(?)差す。
「その、肝心の学校は行かなくて大丈夫なの?」
「あ」
茜は咄嗟に時計をみた。
今の時刻、8時29分
学校登校の原則、8時15分
「過ぎてるじゃん!」
勢いよく立ちあがり、学校の支度をする。先程までもりに言ってたので、外出の支度は大体できている。
赤いランドセルを背中に背負い、髪を適当に結わえる。そしてルマをモンスターボールの中におさめ……ようとして、動作を止めた。
「……そうだ。ルマ、その子が起きたら、話聞いて、森まで送ってあげて! 私も学校終わったら急いで森にいくから。」
「あ、はいよー。」
茜は、そういうとバタン! と大きな音を立てて扉を閉め、部屋を後にした。
「……う、うー。」
その音に反応したのか、そのポケモンが目を覚ます。
「……あ、起きちゃった? ごめんね大きな音立てて。」
「……?」
彼(性別は分からない)は、辺りをきょろきょろし始める。なれない部屋の感覚に、違和感を感じているのだろうか。
「……とりあえず。アタシはルマ。キミの名前はなに?」
「……。」
彼は口を開かない。怖いのか、それとも元々口を聞けないのか。
「……んー、どうしよう。」
茜からこのポケモンの説得(?)を任されたルマであったが、
いかんせんルマはこういう仕事が一番苦手なのであった。
To Be Continued...