一、灰色のポケモンは何を思う
Episode 5





 「……よしっ。これで大丈夫。」

 そう言った茜の声には、安堵感が含まれていた。


 

 茜が森から駆け出してから約10分程、ほとんど問題なくまっすぐ家に戻れた。
 家に戻ってからは早速そのポケモンの応急処置。本当はポケモンセンターでも連れていくといいのだが、如何せん此処の近くには「ポケモンセンター」というものが存在しない。
 なので一週間に一回、此処の森にはジョーイさん(と呼ばれる新種のポケモン)が出張でこの森にやってきて健康確認をする。
 とはいっても一週間に一回だ。その間は何の確認もされないのが少し難である。

 そしてその確認がつい一昨日あったというのだからもうポケモンセンターには恵まれていない。
 幸い、茜は処置能力の腕に覚えがある。将来は、そういうポケモン医療系の仕事に就きたいと思っているらしい。

 茜は手早くそのポケモンの処置を終わらせた。
 ポケモンの安全を確認すると、茜はほっ、とため息を吐いた。

「はぁ、やっと終わったー。」
 茜がそういうと、いままでおとなしくしていたルマが話しかけてきた。

「……おつかれ。ずいぶん大変だった……っぽいね。」
 ルマは茜とそのポケモンを見比べて言う。

「そだねー。かなり苦労したよー。」
 そのポケモンを観察しながら茜は言う。



「……、ところで、さ。」


 んー? と、茜からそっけない返事が返ってくる。
 目線はまだそのポケモンに向いていて、何故か体が左右にぶらぶらとうごいている。



「このポケモン、アタシは知らないんだけど、なんていうポケモン?」






茜の動きが止まった。

「……え、え? だから、なんていうポケモンなの?」
 ルマがもう一度聞き返す、瞬間、再起動。






「……それが、分からないんだよ。」









「……はい?」


ルマは、茜が吐いた言葉に疑問を抱いた。








「分からない、この子がどんな種類で、どこに生息してるかも。」





「……ぶっ。っはははははっ!」

「!?」
突然、ルマが笑い出した。

「はははっ、茜に限ってそんなさ、『種類が分からない』? そんなことありえないでしょう! っはー笑える!」

「ンな、何! そんな笑わなくてもいいのに!」
茜は、笑い転げているルマを見下げて、顔を赤らめながら反抗する。

「いや、だってさ? 茜、全てのポケモンを把握してるんだよね?」
「そう、だけど。」
「だったらさ、……え、分からないの?」

ルマが不思議な目で茜を見る。

「だから分からないって。さっきから言ってるでしょ。」

「……本当に? フリじゃなくて?」

「フリって、フリを言う程こっちだって余裕じゃないんだよ?」




「……そう。」
ルマは、そのまま考え込んでいた。








To Be Continued...

■筆者メッセージ
長年の時を掛けて(ry
やっとまぁ一話、とちほときました。
( 2011/10/01(土) 00:18 )