友情の輪(リング)

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友情のリング
本編「友情のリング」
★1 "闇の火口"


「しんそくっ!」
俺は目の前にいた「ダークライ」目掛けてただ突っ走って行った。
バシュッ。
鈍い響きと共に、しんそくが命中した。
「グググ……ッ!これ程までの力があるとは……!勇者『ビルス』の力を、甘く見ていた……」
「当然だ。ここまで辿り着くには、相当の努力が要る。努力をすれば……!お前だって倒せる!」
「生意気なぁっ!『シャドーボール』!」
俺の前には何度も見た黒い塊が飛んできた。この期に及んでまだそれを連発するとは…哀れだな…
俺はそれを余裕でかわすと、体の電気を準備した。
「とどめを刺させてもらうぞ…!『10万ボルト』!!!」
ダークライへの放電は…当たった。
フラフラと崩れていくダークライには、恐ろしい程の恨みの力が見えたような気がした。
遂に…俺がダークライを殺した。
途端に、今まで夜のように暗かった外が一気に明るくなった。
俺は一安心すると、ふと周りに目が移った。
いつの間にか、ダークライの配下であるボスコドラ、マグカルゴ、ムウマージなどのポケモンがダークライの周りを囲って涙していた。
ふと、その時「あの事」が頭を掠めた。
しかし、俺はそれを気にも止めず、俺の故郷である「トレジャータウン」に帰って行くのだった……。


★2 "トレジャータウン"
俺は、歩いて歩いて、ようやくトレジャータウンに戻ってきた。
この町にはだれもいない。
当然といえば当然だ。ダークライの直下攻撃において、廃墟と化してしまったからだ。
俺が、なぜここまで戻ってきたのか分からない。ただ、何となく…そんな思いで来たのだ。
トレジャータウンには、本当に誰もいなかった。
昔世話になったヨマワルさんやガルーラおばちゃん。
俺が大人になってもひいきにしていたカクレオン商店のレオンさん、カレンさん。
小さい頃、俺を鍛えてくれた道場主のガラガラさん。
今思えば、懐かしいものだった。
俺は「みんな、戦いは終わったぞ……」とだけ心で伝え、トレジャータウンを通り抜けていった。

★3 "温泉"
俺はふらりと、「滝壺の洞窟」の裏にある温泉へ立ち寄った。
疲れた体に、お湯が気持ちいい。
俺以外にも、10人位のポケモン達が温泉を満喫していた。
俺以外は、みんな2人、3人以上で来ていた。
そんな時、とあるポケモン達の会話が聞こえてきた。
「いやー、やっぱり温泉は気持ちいいよねー。」
「やっぱり、皆で来ると、楽しさも上がるよねー。」
「楽しさ」。
俺はそんな妄想、考えた事もなかった。更に、他人との交流も。
この時、俺は初めて「孤独」を感じた。
まだ不安な思いを残しつつ、俺は温泉を後にした。

★4 "とある道路"
『俺は何を信じ、これからどうして生きていけばいいんだ』
だんだん、俺はそう思うようになった。
俺は……友達もいないし、友達を作ることもきっとできないのだろう。
少しずつ気持ちも傾いていた俺。
こんなにも精神が弱かったっけ…とまでも屡々思ってしまう…。
もう......いい。
俺は「決意」を固めると、「崖」へ向かってゆっくり、ただゆっくりと歩いて行った。

★5 "サメハダ岩"
俺は、「サメハダ岩」の崖にやってきていた。
ここは...。
俺の唯一の「友達」とのオモイデの場所。
自分を唯一認め、支えてくれた「あいつ」との思い出。
でも...
もう、あいつはいない。ダークライに殺されたのだ。
「あの時...あいつを護れていれば......!」
そんな思いは今でも俺の胸に巣食い、渦巻いている。
俺は...そんな自分が悔しい。
あいつの命が戻る訳ではない。あいつが帰ってくる訳でもない。
でも、そんな思いは捨てられない。

もう...俺は弱くなった。




「思いを抱えるのはもう...嫌だ...。」


















「もう...死のう......!」




俺は、蒼い、真っ青な海に、身を投げて行った。

「............」
きっと、かなりの速さで落ちているのだろう。でも、俺はゆっくりと、ただゆっくりと落ちているようにしか感じれなかったのだった。
ああ、これが死なんだ。
俺の体もゆっくりと昇って行って。







「ん?」

これは...
「『サイコキネシス』?ど、どうして...?」


「バアッ!」

「うわあ!」
突然、俺の目にポケモンー?が飛び込んだ。
「フーパ!ねえ?ビックリした?ビックリした?」
「お、おう...」
俺は上の空で答えるしかなかった。まだ、状況が把握出来ていない。
「ねえ?どうして崖から落ちようとしたの?どうして?」
「うるさい!俺は一人なんだ!お前に関係ないだろ!」
「フーパ、トモダチ、いっぱいいる!」
「だからなんだよ!俺は...友達も持てないんだぞ!!」
「ちがう!」
「……?」












誰でも、誰とでも、友達になれる! 『友情の(リング)』は、みんな持ってる!





「えっ...?」
「分かってくれるなら、イイ!フーパ、帰る!」
「えっ!?ちょっ!待っ...」
俺が言うが早いや、あいつは自分の(リング)を出し、帰っていった。

まだ明るい空。優しい波。少しだけ揺れている木々。
俺を決して裏切ることのない自然が、優しく囁いているように見えた。

★エピローグ"ワイワイタウン"
あれから。
俺は、大都会「ワイワイタウン」にやって来た。自分を確かめるために。
その結果...

俺は職を手に入れた。鍛冶屋の仕事だ。
俺にはこれが天職のように思えた。今までの戦士より、ずっとずっと。

さらに...
俺は友達も手に入れた。よく町で、他愛もない話をしている。
そんな友達が、俺は大好きだ。


「『友情の(リング)』は、みんな持ってる!」
あの言葉がなければ、きっと俺は死んでいたのだろう。
あのポケモンとは、あれから会っていない。もしかしたら、もう会えないのかもしれない。
だから、今。
君にこの言葉を......。





君と俺はもう友達だよな?な、そうだろ!?


fin...[2520文字]
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■筆者メッセージ
ここまでご閲覧いただき、ありがとうございました。
そして、お久しぶりです。
英雄(トレーナー)は、3/1までにはに再開する予定です。
もしよろしければ、ご閲覧をよろしくお願い致します。
蒼馬 ( 2016/02/26(金) 22:26 )