第1章
始まりはいつも突然
「なあソラ?」
「ん?」
「...暑いよな?」
「...そうだな.........」
何も変わらない、アサメタウンの昼時。しかし暑い。とにかく暑い。遮るものが何もない遥か上空から、もはや痛いほどの太陽の光が襲いかかる。温度計の気温はもう少しで40度に届きそうだった。今日の暑さはニュースでも取り上げられていて、どうやら最高記録を更新しそうな勢いらしい。確かに今日は窓から外を覗くと、ポケモンと一緒に水鉄砲を持って楽しそうに遊んでる子どもがたくさん見える。
「何が最高気温は30度だよ......」
「しかも今日に限ってエアコン壊れるしよー...」
「なんか俺頭が燃えるように暑いんだけど...」
「......つっこむ気はないからな......」
「つまんないな...」
うだるしかないこの暑さは、二人の気力をどんどん削いでいった。しかもさっきまで吹いていた風もいつの間にか止んでいた。
「ところでさぁ...時間...大丈夫か...?」
「...あ......」
暑さのせいでソラは完全に忘れてた。そうだ、サーナイトが来るんだった。ゴウカザルに言われて慌てて時計を見ると、1時10分になっていた。いつの間にかあと20分になってた。ヤバい、早くしないと、そう思った矢先だった。

ピンポーン

「お...宅急便じゃないか?」
「俺なんにも頼んでないぞ?ゴウカザルじゃないのか?」
「俺も何にも...。めんどくさいからソラが出てくれよ...。」
「何で俺......分かったよ。」
椅子に座ったまま動こうとしない体を無理矢理起こし、玄関に向かった。そしてその時だった。
「うお!」
リビングからゴウカザルの驚く声が響いた。その声に反応してソラも急いでリビングに戻る。
「何だ!?どうしたゴウカザル...ってうわ!」
「ソラ、貴方もっと早く出なさいよ。」
ソラの驚きはすぐに消えた。案の定そこにいたのはサーナイトだった。
「何でここにいるんだよ!?」
「貴方が出るのが遅いからテレポートしたのよ。」
「いやいや勝手に人の家に入るなよ!こんなに暑いのに冷や汗かいたろ!!だいたいまだ約束の時間じゃないじゃないし!」
「暇だったから早めに来てみたわ。ダメかしら?」
「自分で約束しといてか!?」
「遅く来るよりはマシじゃないかしら?」
サーナイトは全く声のトーンを変えずにそう言った。自分の回りにはこんな奴しかいないんだろうかと考えると、ソラは頭が痛くなった。しかもこういうときに限って珍しくゴウカザルがソラの肩を叩いて励ましてくれた。
こいつ悩みの種の原因が自分にもあることを知らないな。
「ところで...お前がサーナイトか?」
ゴウカザルはソラの肩に置いていた手を離し、サーナイトの方に向き直ってそう質問した。
「ええ。」
「俺がソラのパートナーのゴウカザルだ。初めまして、だな。」
「そうね。話では何度か聞いてたから、会いたかったんだけど誰かさんがその内ってじらしてたせいでね...」
サーナイトは少し呆れながらその当の誰かさんの方を向いた。
「あーはいはい、悪かったですねー」
「あら、お得意の棒読みかしら?」
「なんだよお得意って。これが俺の謝り方だし」
「......貴方知らないうちに人をイラつかせるタイプね。」
「うん知ってる」
どうやらここの「3匹」は全員似た者同士らしい。
そんなことにも気付けないソラがふとゴウカザルの方を向くと、なぜかにやけてた。
「ん、なんだよゴウカザル?そんなににやけて?」
「いや......二人ともお似合いだな!」
「!?」「!」
「心外だな!」「心外よ!」
「なっ...」「あっ...」
「おい、真似すんなよ!」「貴方も私に合わせないでくれないかしら!?」
ゴウカザルは腹を抱えて呑気に大笑いしている。
「ハハハ!やっぱお似合いだ!」
「そんな訳ないだろ!」「そんな訳ないわ!」

skyline ( 2014/11/22(土) 00:31 )