第1章
そしてすべてが始まる
甘くないさ♪バトルはいつだって♪

「.........んー......何だよ?」

電話の着信を知らせるtogetherに、ベッドで寝ている15才の高校生―ソラは無理矢理起こされた。
カーテンの隙間から入り込む日の光が、机の上でうるさく騒いでいるホロキャスターを照らしている。枕元の目覚まし時計は、8時15分を指していた。
「はぁ.........休みの日くらいぐっすり寝かせてくれよな......」
まだぼんやりとした意識の中、重たい体を起こしてホロキャスターが置いてある机に向かって歩く。こんなのはソラにとって日常茶飯事なのだが、疲れがたまってるのか今日はいつにも増してめんどくさそうだ。
「はーいつもいつもよく飽きないな...」
どうせ「あいつ」だろうと思いながら電話に出た。いつもはソラが遅刻を免れるのに役立つ安眠妨害も、夏休み&帰宅部&バイトなしの今はただのいやがらせ電話でしかない。
ピッ
「...遅いわよ。」
―サーナイトは不満そうな口調をしながら、いつもと変わらない上から目線と、どこか気品を漂わせる声でソラに話し始めた。
「...いや、いつものことだろ?」
ああ、また1日が始まるんだな、内心そう思いながらソラはお決まりのフレーズを返した。
サーナイトとの言葉のキャッチボールでソラの一日は始まる。とはいえ、面倒くさいのでソラは大抵サーナイトの話は聞き流しているのだが。
「ちょっと?聞いてるの?」
「あ、ああ...。で、何?」
「やっぱり聞いてないじゃない...ま、いいわ。ところで貴方、すごいわね。」
「え?俺なんか凄いことしたっけ?」
「テレビを見てみなさい。」
「?」
「見れば分かるわ。」
言われるがままにテレビをつけてみるが、やっているのはいつも見ているお気に入りのバラエティー番組だった。時計は12時30分を指していて、特に変わったことはない。
ん?12時30分...?
「...!もうお昼かよ!?」
「はぁ...貴方、私がいないと起きることも出来ないのね。いつまで子供のままでいるつもり?」
「う、うるせー...」
「これじゃあ1時は無理そうね...。1時半に貴方の家にお邪魔させてもらうから、それまでに準備しときなさい。」
「は?いやちょっと待」
ツーツー...
結局言いたいことを言えなかったソラの耳に通話終了音が響いた。
......まあ、これも毎日のパターンなのだが。
「来るなら先に言っとけよ...
あー、昨日のうちに時計の電池交換しとくべきだった...ってうわ!?不在着信30件!?おいおい......」
ぶつぶつ文句を言いながらカーテンと窓を開けると、まるでソラに落ち着けと言わんばかりの涼しい風が吹いている。一度テレビを消してメールの受信BOXも確認するが、予想通りの0通。それもそうだ。ソラの電話帳には家族と親戚以外にはサーナイトの連絡先しかない。学校では無口キャラを演じているソラは、まともに会話をしないクラスメートと連絡先の交換など出来るはずがない。そんなことがあるから、ソラは自分と友人関係を築いてくれているサーナイトには感謝してたりする。



お嬢様育ちで毎日が充実してるサーナイトと、ぼっちでただなんとなく生きている俺。こんな接点がまるでない二人が出会ったきっかけってなんだったんだろう?

気がついたらそこにいた。

本当にこんな感じだった。昔のことを思い出そうとしてみるけど全然思い出せない。サーナイトは「ぼっちの貴方が可哀想だったから、私から声をかけたのよ。」とか言っていたが、そもそも学校に通ってないサーナイトが学校での俺のことを知ってるのは不気味だ。サーナイト曰く「私はエスパータイプよ?」だそうだが、それならなんで俺なんかのことをを気に入ったんだろうか?それに、初めてサーナイトと会ったとき、俺はなぜ警戒もせず話をすることができたのだろうか?



「...もうやめておこう。」考えることに夢中だった頭に言い聞かせるようにソラはつぶやいた。考えるだけ時間の無駄だった。時計を見ると、もう起きて15分は経っていた。こんなことをしている間にも(サーナイトが勝手に決めた)約束の時間は迫ってきている。少し意識をはっきりとさせ、階段を降りようとした瞬間―
バーン!
何かが吹っ飛ぶ音が耳に入って、嫌な予感がして急いで階段を駆け降りる。
ドーン!
続けて何かにぶつかる音がしてきた。
階段を降りるソラの表情は、いつの間にか不安からあきれに変わっていた。

skyline ( 2014/11/11(火) 01:04 )