014 失敗ばかりしてるのに
星空町の外れにぽつんと建っている、古ぼけたメカメカしい一軒家。煤だらけでオイルの臭いのする、まるで倉庫のようなこの家から、ジリジリと何かを焼いたり接合させる音が聞こえてくる。それもそのはず、この一軒家には、研究者を名乗る1匹の中年おじさんポケモンが住んでいた。
「よーっし! 今度こそ成功じゃ!」
そのポケモンは、黄金色の身体と長い髭を持ったねんりきポケモン、フーディン。しかしこのフーディン、髭がきれいに伸びておらずやや縮れた形になっており、少々だらしなさが伺える。
フーディンは四角いハコの目の前に立っており、それが完成したようで大喜びしている。ハコ、と言っても段ボールや紙でできた箱とは違い、メカメカしいハコだった。
フーディンは喜んだかと思いきや、すぐに表情を寂しいものに切り替えて呟いた。
「……今度こそは、か……」
* * *
紆余曲折もあったが、正式にチームカルテットの一員となったモモコ。チーム結成の日から数日が経ち、魔法使いとしての生活が本格的に始まっている。そんなある日、ポストの部屋で依頼が来ているかどうかをミツキ達と確認しているところで、フローラからあることを告げられた。
「依頼じゃないけど、チームカルテット宛に手紙来てるわよ」
「俺達宛?」
フローラからその手紙を受け取りながら、ミツキは首を傾げる。チームアースやチームキューティ程の魔法使いならばお礼の手紙や、(だいたいクレイのせいで)飲み屋からクレームが来ることも少なくない。1年近く寂れていたチームカルテットに手紙というのは、なかなか珍しいものだった。
疑問に思うミツキをよそに、早速と言わんばかりにコノハは「開けてみましょうよ」と封筒の中身を開ける。ところが、入ってきた紙切れを読み進めたところ、目を見開き口元を引きつらせた。
「げっ!」
「どうしたんだ? コノハ……ううっ!」
何だと思ったミツキがコノハの持っている紙切れを覗き込むと、彼女と同じような顔をする。
「どうしたの? 2匹して」
モモコが目をぱちくりさせながら尋ねると、コノハは「そうだった」と軽く溜息をつく。
「モモコはまだ会ったことがなかったわね。ポンコツ科学者に」
「ぽ、ポンコツ科学者?」
「星空町の外れに住んでるフーディンのオッさん。ヘボ研究者だ」
「町外れのフーディンって、ふしぎ博士からの手紙ですか!? なんでミツキもコノハも、いつもふしぎ博士のことをそう呼ぶんですか!」
ライヤはまくし立てるように、ミツキとコノハに抗議する。モモコも怒ったライヤを見たことはあったが、あの時とはまた雰囲気や意味合いが違う。明らかにライヤの根本的な価値観や考えが、ミツキとコノハのそれからは逸れていることが伺えた。
「ライヤは何故かヘボ研究者のことを尊敬してるんだ。本当にあいつの変な発明品のどこがいいんだか……」
ミツキはやれやれ、と肩を竦めており、ライヤの尊敬の意を理解出来ない様子である。
「で、手紙に何て書いてあるの?」
「読んでみるわね」
コノハははっきりとした滑舌で、しかし読まされてる感のある棒読み口調で手紙を音読し始めた。
「『チームカルテットの諸君へ。聞いて喜べ、お前達はワシの偉大なる発明品のお披露目会のお客様第一号に選ばれた。今日10時頃、ワシの研究所へ来るがいい! いいお土産を持って来るのじゃ! ハハハハハ!』」
コノハが手紙を読み終え、ゲネラルパウゼにしては長過ぎる沈黙が流れる。だが、その沈黙はミツキが頭を抱えながら叫ぶことで破られた。
「ふざけんじゃねぇぇえ! また酷い目に遭わされるっていうのか!?」
「アタシだって嫌よぉ! あんなことになるのはもう!」
コノハも続けて、ミツキと同じようなポーズをしながら駄々をこねるように言うが。
「いや、でもこれ行かないとめんどくせぇことになるんだよな……」
「あのポンコツ科学者、執念深いから絶対マジカルベースにまで迎えに来るわよ……」
「ふしぎ博士をお迎えに上がらせるつもりですか!」
ミツキとコノハ、ライヤの気持ちには凄まじい程の温度差があった。ちょっとの言い合いならともかく、ここまで大きく意見が割れているのを見るのはモモコも初めてである。
どうリアクションして良いのかも分からないモモコに、頭の上で腕を組みながらフローラが気を利かせて解説する。
「あのヘッポコ博士は、あたしが星空町に来る前からミツキ達とよく遊んでてねー。酷い目に遭って帰って来るのがお約束だったみたいだけど」
「そ、そうなんだ……」
「でもまぁ、ライヤは生まれも育ちも星空町で、特に一緒にいる時間が長いからかな? ヘッポコ博士のことは結構尊敬してるみたいなの」
魔法使い以外の星空町のポケモン達も個性豊かな住民が勢揃いしていることは、1週間以上星空町で過ごしてきたモモコにもよく分かる。それにしても、呼び方の定まらないフーディンのおじさんはどんなポケモンなのだろうか__ほんの少しだけ、気になったりならなかったりしていた。
* * *
「ドレンテ! また魔法使いに負けたのか?」
ところ変わってクライシスのアジト。グラーヴェはすっかり、失敗続きのドレンテを馬鹿にするどころか、一周回って呆れていた。それに比例して、ドレンテの機嫌の悪さもクレッシェンドする。ミュルミュールを浄化されただけでなく、自身の“オキニイリ”のモモコが憎きミツキとその仲間達とアンサンブルを奏でるところを目の当たりにした。ただでさえ、いつもよりも気が立っている。
「うっさいオッさん。ボクは負けたんじゃない、見逃してやっただけだ」
「お前なぁ! 歳上に向かってどの口が聞いてるんだ!」
「その辺にしときなさいよ、ドレンテ。グラーヴェを怒らせると、さらに面倒なことになるの分かってるでしょう?」
ソナタが横から入ってくると、ドレンテはさらに煩わしいのが増えたと言わんばかりに顔をしかめる。覚悟はしているものの、誰も自分の考えや思いを理解してもらえないところは一言で表すと「しんどかった」。
「とにかく! 次は俺が星空町を襲撃してくる!」
「あ、今日はあたしはエステ行ってくるから。ドレンテ留守番よろしく」
変装のために黒いガーデンハットを被ったソナタは、スタスタと外の町へと飛び出して行ってしまった。グラーヴェも時間を無駄にするのが好きではないのか、サクサクと外に出る準備を進めている。取り残されたドレンテは面白くなさそうに地面に蹴りを入れ、舌打ちする。
「ちぇっ……」
* * *
結局、ライヤに引きずられるような形でチームカルテット一同はふしぎ博士の研究所を訪問することになった。町中を歩いている最中も、ミツキとコノハはこの世の終わりのような顔をしており、よっぽどよろしくないことが起こるのかもしれないと予感される。ライヤがたとえ軽い足取りで歩いていても、ミツキとコノハがこの調子ではモモコも流石に不安が募る。
お土産は町中で買ってきたリンゴを5つほど。魔法使いとはいえ、高いランクに位置していない子どもの稼ぎでは立派なものは買えなかった。
「ここが、ポンコツ科学者……って言うと怒られるわね。ふしぎ博士の研究所よ」
「オイルの臭いが凄い……」
商店街や住宅街の喧騒から離れた場所にある、鉄やらアルミやらで作られたメカメカしい小さな建物。釘で無理矢理くっつけたと思われる木材の看板には、筆書きで『サイエンスなんでもふしぎ研究所』と汚い字で書かれている。
チームカルテットの足元には、錆びたり捻れたネジやノコギリなどの工具が散乱していたり、モモコの言うようにオイルやはんだの臭いが漂っている。
「そりゃあ発明家だからな、くさっても」
すると、建物の中から凄まじい爆発音が聞こえ、煙突から大量の煙が放出された。4匹は突然の爆発音にびくっ、と身震いする。リリィのチューバやフィルのトロンボーンといった、金管楽器の美爆音とは全然違うその音は、ただごとではなさそうなことが起こっていると推測させられる。
「な、なになになに!?」
「多分また発明の失敗ね」
「試行錯誤って言って下さい!」
よくあることなのか、ミツキもコノハもこのシチュエーションには慣れっこのようである。もっとも、爆発音にはあまり慣れていないようではあるが。
ライヤがそっと研究所のドアを開くと、今度は焦げたような臭いが4匹を出迎えた。うっすらとまとわりつく煙に咳き込みながら、チームカルテットは奥へと進む。部屋の中心まで来ると、ようやく黒焦げになったポケモンとご対面。
「また失敗じゃったか……」
中年のおっさんの声でそう呟いたポケモンは、目を回しながら伸びていた。だらしなさを感じさせる縮れた髭がトレードマークのフーディン、彼こそがふしぎ博士である。
「何やってんだ、ヘボ発明家」
ミツキが呆れた顔でふしぎ博士を見下ろす。ふしぎ博士はチームカルテットの存在に気付いたのか、素早く切り替えて起き上がる。
「おお、カエルの子に電気ネズミの子、それにキツネの子ではないか! っと、そっちの緑は新入りか?」
ふしぎ博士は舐めまわすように、じっとモモコを見つめる。距離はおでこがくっつきそうなほど近く、じりっと反射的にモモコは後ずさりする。何となくだが、ミツキとコノハがああもここに来ることを渋っていた理由が分かった気がした。
「最近同じチームに入ったモモコです。僕達とは同い年の代になるんです」
「ど、どうも初めまして……」
ライヤの生き生きとした紹介に合わせて、モモコは苦笑交じりに挨拶を交わす。
「お主は……ハリネズミの子じゃな!」
「は?」
「よかったな、電気ネズミの子よ! ネズミ仲間が増えたではないか!」
1匹で納得しているふしぎ博士のテンションに、チームカルテットはついていけていないようだ。
「はい、そうなんですよ! 驚異のネズミ率ですよね!」
ライヤを除いては。
「そんで、発明品のお披露目? そのために俺達を呼び出したんだろ?」
「そうじゃそうじゃ! ワシのとっておきの発明品が出来たのじゃ!」
そう言いながらふしぎ博士が出してきた物は、大きなものということ以外は分からない。というのも、何かの大型プロジェクトよろしく、発明品には白い布がかけられていたのだ。ふしぎ博士は「じゃじゃーん!」という掛け声と共にその布をぴゅっ、とカッコつけたりしながら取る。
「名付けて『テレビ電話くん』じゃ!」
布に隠れていたそれは、人間の世界にある物に例えるなら、巨大なデスクトップコンピュータのようだ。ご丁寧にキーボードもセットされている。ミツキとコノハはどうも胡散臭さを感じており、初めて発明品を見るモモコは、久し振りに人間の文明に近いものを見たのか「おー」と感心。ライヤは目をキラキラさせながら、どんなメカなのかワクワクしている。
「今回は道場の師範殿にも、試作品を手渡しておる! このテレビ電話くんがあれば、遠く離れた場所でも会話ができるのじゃ!」
「わぁ……凄いです!」
えへん、と得意げに胸を張るふしぎ博士の姿は、まるで自信作の工作を作り上げた子どものようだった。彼を尊敬の眼差しで彼を見つめるライヤとは裏腹に、ミツキとコノハは疑いの眼差しを向ける。
「ってか、師範さんに試作品渡したのかよ」
「うわー、師範さんかわいそー」
呆れてまた頭を抱えるミツキと、師範なるポケモンに憐れみの感情を抱くコノハをよそに、ふしぎ博士は早速テレビ電話くんのデスクトップに設置されているスイッチを入れる。カタカタとキーボードを打ち始めているが、人間で言うところのメールアドレスか電話番号の打ち込みだろうか。
「師範さんって、どんなポケモン?」
「この町で道場を構えているゴロンダの師範さんです。見た目はちょっと厳ついですけど、とっても優しいんですよ」
「2匹子どもがいて、上の子がガッゾの同級生なんだ」
ミツキ達の話を聞いているうちに、ようやくデスクトップに1匹のポケモンの顔が映し出された。鋭い目つきと大柄な身体つき、しかし葉っぱをくわえている姿がちょっと可愛らしいこわもてポケモンのゴロンダ。彼こそが町に道場を構える師範である。
「おー、ふしぎ博士か?」
「おぉ、師範殿! しっかり繋がったようじゃな! 今魔法使いの子ども達を招いて、テレビ電話くんのお披露目会をしているところなのじゃ!」
この師範、ふしぎ博士と師範は友好的な関係にあるようで会話も弾んでいる。ふしぎ博士に促されながら、チームカルテットもせっかくということで師範とテレビ電話越しで会話をすることにした。
「師範さん、暫く振りだな」
ミツキ達と師範も昔ながらの顔馴染みであるためか、会話もスムーズに進む。ヘッポコ発明家だけでなく、魔法使いの子ども達とも気兼ねなく話しているところから、師範の懐の大きさが伺える。
「おー、ミツキ達じゃねぇか! それと、そっちの緑のヤツは?」
「新しくチームに入ったモモコです。僕達とは同い年なんです」
ライヤからふしぎ博士の時と同じ紹介を受けたモモコは、画面越しで師範に挨拶と共に一礼する。
「は、初めまして! モモコっていいます!」
「俺は町で道場をやってる師範だ。身体鍛えたくなったらいつでも来てく……な……!」
途中から師範の声は、だんだんノイズが混じって聞き取りづらくなっていく。心なしか、画面も映りが悪くなってきており、師範の顔がブレたり、砂嵐のカーテンがかかっているように見える。
「おや? ちと電波が悪いようじゃな」
疑問に思ったふしぎ博士は、テレビ電話のデスクトップをバンバンと力強く叩き始めた。非常に古典的な方法ではあるが、デスクトップの映りも電波も良くならない一方だ。むしろ、メカがガタガタと音を立てている様子から、悪化しているようにも見えた。
「ん……ど……た……?」
やがて、メカは蒸気のような音と煙を発してショートしてしまった。師範の声はもう聞こえず、画面は砂嵐一色だ。
「「えっ?」」
この場にいる全員がマメパトが豆鉄砲を打たれたような顔をしたのと同時の出来事だった。
ショートしたメカは暴走し、爆発。無様に木っ端微塵となってしまったのである。師範サイドからの画面は完全にブラックアウトしており、師範もまたこの発明品がポンコツだったことを悟った。
「あちゃー、また失敗作だったのか」
一方の研究所では、ふしぎ博士だけでなく、チームカルテットも巻き添えを食らって身体中煤だらけになってしまった。ライヤは「おかしいな」と目を白黒させており、モモコはあまりの煙たさに激しく咳き込んでいる。
「ま、また失敗かよ……」
「もう、このヘボ博士! また毛並みが乱れちゃったじゃないの!」
コノハはぷるぷると身体を震わせ、煤を取り払いながら怒っていた。美意識は高い方なのだろう。ミツキ達も身体に着いた煤をはたき落としていた時、力強いアクセントを効かせてドアをノックする音が聞こえた。
「おい! ヘボ科学者はここにいるんだよなぁ!?」
ふしぎ博士はというと、爆発の衝撃で未だ床に伸びておりとても対応できる様子ではない。かなり気が触れている様子の、大人のオスポケモンの声だったためこのまま無視しても厄介__チームカルテットは4匹で玄関対応をすることにした。代表で、最も丁寧な受け答えができるライヤが玄関のドアを開ける。
目の前にいたのは、ザングース、サンドパン、ストライク__鋭い爪やカマを携えたポケモン達。マントをつけていないことから、魔法使い以外の職業、探検隊か何かと考えられる。
「こないだ押し付けられたダウンジングマシン、爆発したぞ!」
チームカルテットに怒鳴りつけるザングースが手に持っているのは、ボロボロに壊れた機械だった。本体は煤だらけであり、ネジは欠け、バネが所々から伸びている。
間髪入れずにザングース達を押し寄せながら、腕を組みながらいちゃいちゃしているニャオニクスのカップル、さらに顔を真っ赤にしてヒステリックになっているビークインが順番にチームカルテットに詰め寄る。
「ボクのニャオたんがお化粧ぱふぱふロボットの爆発に巻き込まれて、真っ黒メイクにされちゃったのはどう責任取ってくれるのかな?」
「ニックぅ、もういいわよぉ。火傷も怪我もなかったんだからぁ」
「うちのミツハニーちゃんが迷子になったものだから迷子探知機を使ったら、よそのミツハニーちゃんに反応したんだけど!?」
そんなこと、自分達に言われても__たじろぐチームカルテットをよそに、他にもふしぎ博士の発明品に困らされたポケモン達が、文句を言ってやろうとスタンバイしていた。
「のわぁああああっ!?」
快晴の空には不釣り合いなポケモン達の苦情が、一気に押し寄せてきた。
* * *
結局、ふしぎ博士への苦情は後を絶たない上に、一件一件クレームの内容が長すぎたため、チームカルテットも巻き添えを食らう形で苦情処理班と化していた。13歳の大人になろうとしている子どもには、この苦情の量はかなり堪えるものだったのだろう。チームカルテットはぐったりしていた。
「何で俺達まで苦情処理させられなきゃいけなかったんだ……」
「もう疲れたよ……」
壁に寄りかかるように座り込みながら、ミツキとモモコは愚痴をこぼす。不謹慎ながら、自分達の方が一般ポケモンよりも先にミュルミュールになってしまいそうな程に、体力も精神力も使い果たしたのだ。ふと、コノハはふしぎ博士にある問いを投げかけようと喋り疲れた口を開いた。
「ねぇポンコツ科学者。前々から気になってたんだけど__」
その呼び方はやめろ__ライヤの殺気を感じ取ったコノハは、一旦コホンと咳払いすると、もう一度ふしぎ博士に尋ね直す。
「……ふしぎ博士は、何で失敗ばかりしてるのに、そんなに懲りないの?」
悪態を吐くように尋ねるコノハに対して、ふしぎ博士はまるで遠くを見るようにして答えた。その横顔が、年相応の哀愁を漂わせていることから、チームカルテットはごくりと息を呑む。
「それは、いつか必ず成功すると信じているからじゃ」
そのふしぎ博士の、おふざけを感じさせない静かな口調に圧倒されたのか、チームカルテットは誰も茶化さなかった。チームカルテットから素直な返事も憎まれ口も返ってこないことを確認すると、ふしぎ博士はさらに続ける。
「失敗って、そんなに悪いことかのぅ? ワシはそうは思わぬ。間違えたら「じゃあ次はどうすれば失敗しないか」を考え、また何度でもやり直せば良いのではなかろう?」
「ま、まぁ……ポケモンに迷惑かけなければいいんじゃないかしら?」
コノハはふしぎ博士を励ますような言葉を探しながら返すが、これが思わぬ地雷を踏んでしまうことになった。決して逆上するということではなく、コノハの言葉はむしろさらにふしぎ博士を落ち込ませてしまったようだ。
「そうじゃな。ポケモン達に迷惑をかけてしまい、今じゃ町のヘボ科学者呼ばわりじゃからな……」
ふしぎ博士もまた、自分の発明品で町のポケモン達に迷惑をかけていることは分かっていた。それでも、いつか成功すると信じて日夜研究や発明に明け暮れている。いつもは冷たくあしらっているミツキとコノハも、流石にしょんぼりしたふしぎ博士を目の当たりにして申し訳なさを感じる。
「ぼ、僕達、まだ仕事があるのでパトロールに行ってきますね!」
ライヤはこの重い空気を察したのか、今は一旦引き上げようと他の3匹を促し、外へと出て行った。