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第1話「出逢い」
その少年は船でシンオウ地方までやって来た。
「…寒いな。流石に。」
俺はボソリと呟くと船を降りて、雪が降り続けるキッサキシティに降り立った。
街は思った以上に活気がよく、船着場の辺りでは掛け声が飛び交っている。
…俺はこんな所へ来て一体何がしたいんだ…?
俺は改めて自問する。そして自答する。
…強くなる為だ。アイツにあって、俺に無いものを見つけて…。
ならば一体何をすべきなのだろうか…?
「…………。」
考えても埒があかない、とりあえずポケモンセンターにでも向かうか…と俺は思って足を進めた
が、
「おい、そこの赤髪!勝負だ!」
「…………………………は?」
俺は大声に反応し振り向く。そこには短い金髪に、赤と白の縞模様の服を着た少年が立っていた。この雪の中にしては少々薄着のように思える。
「「は?」じゃねぇよ!勝負だ!」
金髪の騒がしい少年はモンスターボールを突き出している。どうやらこの俺にポケモンバトルを挑んでいるようだ。
「……嫌だね。俺は弱い奴を相手する趣味は無い。」
俺は冷たく言い放って、ポケモンセンターに向かうべく踵を返した
が、
「何だと!!俺が弱いだと!!俺は世界一強いトレーナーになる男だぞ!!!」
金髪の少年が背後で喚く。それを聞いて俺は足を止めた。聞き捨てならない言葉だ。
「世界一強い?お前みたいな弱い奴がか?…笑わせるな。最強のトレーナーになるのはこの俺だ。」
…そう俺は誰にも負けないトレーナーになる。アイツにも「愛情が足りない」とか言いやがったあのマントの男にも…………そして…「あの人」にも…
「だったら、俺と勝負しろ!!どっちが最強か決めよーぜ!」
「勘違いするな。俺は弱い奴とは戦わない。」
俺はそれだけ言うと、金髪に背を向けた。どんなに金髪が喚こうがポケモンセンターに向かうつもりでいた。
が、
「ええい!こうなりゃ実力行使だぜ!いけっ!ゴウカザル!」
「ゴウッ!」
「!!!はぁ!?」
こともあろうにか、金髪はボールを投げてポケモンを繰り出したのだ。そこまでして勝負がしたいのか…コイツは……俺は侮蔑を通り越して、呆れてしまった。
にしてもゴウカザル?見たことも聞いたことのないポケモンだ。炎を纏っている外見から考えると炎タイプだろう。そういえばシンオウ地方に来たからには、この地方のポケモンを把握しないとな…後々ゆっくり調べて強い奴だけ捕まえるとしよう。
「どうした!?やらないのか?」
金髪が指を曲げて挑発する。そしてゴウカザルもそれに倣う。……トレーナーがトレーナーだけにポケモンの性格も似たり寄ったりだ。俺はげんなりする。
…どんだけ強引な奴だよ…。アイツですらそこまでしなかったな…。
俺は改めて金髪を見つめる。…ぱっと見、今まで倒してきた弱っちい奴と似た感じがする…
が、
…どこか…どこかアイツに似ている。ポケモンを大事にする弱っちい…弱っちい筈なのに、俺が一度も勝てなかったアイツに…
そんな筈はない。と俺は頭を振って、アイツの顔を頭から消す。そして金髪を睨みつける。
「…格の違いを教えてやるよ。」
「…ダイル。」
俺はボールからオオダイルを出す。相手は明らか炎タイプ。こいつで十分事足りる。
「…うおっ!何だそいつは!?見たことねえな…よーし、図鑑、図鑑…」
「!?」
驚いたことに金髪はポケモン図鑑をリュックから取り出した。アイツが持っているのと同じポケモン図鑑だ。
その図鑑は決して市販のものなんかではない…才能を認められたトレーナーが一部の研究者から授かるものだ。
…ということは、この金髪坊やにもアイツ同等の才能があるとでも言うのか…?…面白い…だったら尚更だ。コイツを倒して俺はアイツより強いことを証明してやる。
「うーん?図鑑に表示されねえ。なんだこの「UNKNOWN」ってのは?シンオウ地方のポケモンじゃねえのかな、そいつは。」
「………御託はもういい。とっととお前を叩き潰すまでだ。」
「へっ!そんな簡単に倒せると思うなよ!俺は世界一のトレーナーになる男だぜ!」
こうして一癖も二癖もあるトレーナー達によるバトルが幕を開けたのであった……。
To Be Continue…?