『ポケモンリーグ ハイパーボールカップ コガネシティ会場、アルバイト』(7)
今度のハイパーボールカップが、コガネで開催されることになった。
トレーナーや観光客で賑わい、ただでさえ人の多い街がお祭り騒ぎだ。
僕の仕事は出場トレーナーの登録受付。けっこう有名なトレーナーとか見れる仕事だ。
地元の大会に出たがる人が多く、ジョウト出身のトレーナーが割合多い。
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ほら、さっきそこを通ったのは、ギャラドス&ランターン使いで有名な人だ。
あの人もジョウト出身やったんかな。
あっちの男はテレビでよく見る。アサギ出身。コンテスト寄りのスタイルで
彼がバトルすると、会場中が美しさで息をのむ。
今は女の子からサインをねだられていた。羨ましい限りで。
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そうやって会場中を眺めながら、参加申請するトレーナーの処理をする。
そいで、やっぱハイパーカップともなると面構えが違うっていうか、だいたい並んでるヤツほとんど変人っぽいな。
参加資格を得ることすら大変な大会やし、どっかで頭のネジが外れるんかね。
さっきもちょっと変な女がきおった。
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この真夏に手袋と黒いコートという出で立ち。
派手なサングラスがうさん臭さに拍車をかけている。
それなのに汗一つかいていない。
整った顔面がなければ不審人物として警備員に連行されているだろう。
「確認、お願いします」
女がバッジケースを取り出して、僕に見せた。
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専用の機械で、一つ一つの取得年月日を確認していく。
全部一年以内の取得、現ジムリーダーのもの。問題なし。
「大丈夫です。ありがとうございました」
ケースから顔を上げて女を見る。女はサングラスを外してこちらを凝視していた。
紫がかった瞳と視線が合う。
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「えと、どうかしました?」
ぎょっとして尋ねる。
「あ、いえ。その、あなた、以前どこかで会いませんでしたか?」
「は? ん、いや…」
狼狽していると、女が自分の後ろに列が出来ていることに気がついてくれた。
「すみません。機会があればまたお話ししましょう」
女が人混みの中に消える。
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……ああ、思い出した。
バトルの名乗りで肩書きに“探偵”を用いる変わったトレーナーや。
公式戦には今まで出たことがなかったはず。
「よっ! 男前!」
思考中、次のおっさんがニヤニヤしながら声をかけてきた。下品な発声だ。
「羨ましいねえ。俺もアンタみたいな顔に生まれてりゃなぁ…」