続きものの話はここで
『シダケのベテラントレナー』(5)
「はぁ、負けちゃったわねえ。わざわざシダケからここまで来たってのに」
しょうがないねえ。次やるとき生きてるかどうかもわからないし。
はなと、ちびと、ふわんをボールから出した。
「3匹とも、今日はありがとう。いいバトルだったよ」
「しゅしゅしゅしゅ……」
「ばぁか、泣くんじゃないよ」
*
「それでまあ、今答えを出さなくてもいいんだがね。
残りの3匹は私と一緒に暮らす。みんな老体だからねえ。
でもあんたらはまだ若い」
3匹ともが目を合わせた。
「ここで新しい主人を探すのもいいと思うがね」
「もぅ?」
ちびが首を傾げた。この子、話を理解できたかね。
なんたって虫だからねえ
*
「きゅい!」
はながつるぎのまいを踊り、大きな花弁が揺れた。
赤いオーラを、花がまとう。はなが焔のついた目で私を見る。
「うむ、そうかい。明日からさっそく探そう。がんばるんだよ」
「きゅぅうい!」
「ちびとふわんはまだ考えるかい? 帰るまでに決めとくれよ」
「も……、もぅ」
「ん?」
*
ちびが羽ばたいてボールに引っ込む。
ううむ、あの子はまだまだ子供だからねえ。
アメタマの頃からこうだったねえ……。
「ん?」
下を見ると、ふわんが私の服のすそを掴んでいる。
さすがの私でも、ここまで近づくとふわんの臭いがちょっとキツい。
ふわんの赤い瞳がじっと私を見上げる。
*
それだけで言いたいことはわかった。
「そうかいそうかい」
ふわんがはなを見やった。2匹が見つめあう。
……この2匹は特に仲が良かったからねえ。
その時、控室の扉がどっと開く。応援に来ていた孫だった。
「おばあちゃん、おつかれさ……
ってうわっ、なんだこの臭い!!」

■筆者メッセージ
180430
赤いオーラが、はなをまとう。
→赤いオーラを、花がまとう。
ご指摘ありがとう!
しば ( 2018/04/29(日) 02:10 )