続きものの話はここで
『エンジュの警察官』(8)
最近の仕事は、ハイパーカップ会場の警備である。
コガネなんかの事情などどうでもいいが、仕事なので仕方がない。
4年に1度のイベントのせいで人が馬鹿みたいに街に溢れかえるため、犯罪や事故の数も膨れ上がるのだ。
*
今日も相棒のガーちゃんと一緒に、会場内をパトロールする。
毎日てんてこ舞いで、がんばりやのガーちゃんも疲れた顔。かわいそうに。
「がう〜……」
ガーちゃんも鼻先でこちらの腰をつついて心配してくれる。
ああ、早くエンジュに帰って、ガーちゃんと彼女とオレでごろごろ過ごしたいもんだなあ。





クソっ! こんなところで見たくない顔に出くわしちまった!
「あ、お久しぶりっす」
「……なんの用だ、探偵」
「えーん。ツレませんね。一緒に修羅場を潜り抜けた仲じゃないですか」
「よくもまあ、いけしゃあしゃあと」
お前は、俺に後始末を押し付けただけだろ。一緒に、だと?
*
「がうがう!」
「ぶるるっ!」
「この子たちは会えて嬉しいみたいですね」
「うぐ、むぅ」
ガーちゃんと探偵のブルーが鼻を摺り寄せあっている。
その光景は悔しいけれど、なんとも微笑ましい。
「見かけたから声をかけただけっす。あと、この間はありがとうございました。とても助かりました」
*
「ふん、俺は何もしてねえよ」
「そんなことありませんよ。……あ、いけない時間が」
「お、もう行くのか。じゃあな」
「ふふん、そんなに喜んでもらえると言った甲斐があるってものです。
それではまた、おまわりさん」
ブルーを抱き上げるとさっさとそいつは去っていった。
*
ガーちゃんは少し寂しそうな顔で俺を見る。
なぜかあのおばあちゃんブルーがお気に入りらしかった。
思えばあの探偵、ガーちゃんが俺の仕事の手伝いをしてくれるようになる前からの付き合いである。
出会ったころから全く変わっていない。目的も、その手段も。
*
だがなあ、ガーチャンよ、あいつはこないだロケット団残党の溜り場に一人でツッコんで
『きゃーんロケット団に捕まってしまいましてぇ、正当防衛というかぁ
襲われたので仕方なく抵抗したんですけどぉ、なんか勝っちゃってぇ
強奪されたっぽいポケモンもいてぇ、いやあこれは見過ごせないっすよねえ』
*
って電話を平日深夜1時にかけてきたんだぞ。
お前を起こさないようにして家を出たから知らないだろうけど……。

しば ( 2018/04/16(月) 01:10 )