1〜2話読み切り系
『コガネのミニスカート』(7)
今日は友達と焼肉に来てるんよ!
しかも、そいつの奢りで。まあさっき駅で知り合ったばかりやねんけど、
ポケモンバトルしたかもう友達でいいやんな。(うちの勝ちやで!)
対面のこいつ、ぶっちょーづら。まあそらさっき知り合ったばかりの女に焼肉奢るんやもんな。
まあそらなあ。
負けたんやしな。
*
「この店の肉、ミルタンクやって噂知っとる?」
彼、ぶぅと吹き出す。
「うわきったね。まじなわけないやん。そんなん、アカネちゃんにぶっ飛ばされるて」
「アカネちゃん?」
独特のアクセントで彼が聞く。ジョウト出身やあらへんな。
「この街のジムリーダー」
「ふうん」
*
「出身どこなん?」
「キッサキシティの近くの村」
「キッサキぃ?」
「シンオウの一番北」
「え、シンオウのて…そんなとこ人住めるん?」
「そこそこ住める」
話してるうちに頼んでた肉が来た。
ピンクやら赤やらのてかてかをトングで網に載せ始めながらも続ける。
一番気になっていたことだ。
*
「なんで、うちに焼肉奢ってくれるん? 逆ナンされて嬉しかった?」
「強かったから」
「たまたまやよ。うち、いつもは負けてばっかしやし」
「そんなことはない。アリアドス、すごく強かった。レディアンも、
バタフリーも、カイロスも、モルフォンも、最後の子もみんな強かった」
*
「一つのタイプであれだけできるのはすごいことだ」
肉を網に載せる手ごと身体の動きが止まり、じゅうじゅう焼ける肉をぼけっと見つめる。
淀みなく全肯定されて頭がクラクラした。
「最後の子、何のポケモン?」
「シュバルゴ、ぃ、イッシュ旅しててんけどその時手持ちになってん」
*
「そうか、すごい。ハイパーカップ出るためにコガネに?」
「うん。ちっちゃい頃からの夢やもん。…ふぅえへえええ」
思わず気持ち悪い笑いが口から吹き出た。
「ん?」
「あーなんか、焼き肉なんかどうでもよくなってもうたな」
「どうして?」
「どうしてって…」
なんて言ったらいいんかを考える。
*
「いや、虫タイプって悪ほどじゃないけど、あれやん? それにうち女やし。
…そんなん風に言われたん初めて」
初めてはさすがに大げさやけど、でも今のはそれくらいインパクトあった!
「コガネでもそういうのは、あるんだ」
「あんたのマニューラもえらい強かったよ」
「うん。俺の悪友だからね」

しば ( 2018/04/12(木) 01:29 )