『ポケモンのお医者さん2』(7)
今日は午前勤務だったので、ライチュウのライちゃんを連れてお出かけしていた。
エンジュの並木道をライちゃんと歩く。
リーグだのなんだのでみんなコガネにいってるのか人もポケモンも、誰もいなかった。
「静かだねぇ」
「らいらーい」
ライちゃんの二息歩行に合わせて、私はゆっくり足を動かす。
*
どうもライちゃんは立って歩くように訓練されているらしかった。
ライちゃん、というのも正式に登録されているニックネームではなく
私が呼びやすいからそう呼んでるだけだ。
ライちゃんが発見されたのは、つながりのどうくつの地下だった。
私が見つけてそのままポケモンセンターに走った。
*
彼女が負っていた傷が、うちの病院の設備で治療できる怪我ではなかったからだ。
あんなところにライチュウがいたのだから、
それは当然“誰かのポケモン”ということになる。
ライちゃんには、ライちゃんをあそこまでつれてきたトレーナーがいるのだ。
*
木陰になっているベンチにライちゃんと座る。
夏の木漏れ日がキラキラ輝くのをぼんやり眺めていると
ライちゃんが私の膝に頭をのせて寝っ転がってきた。わ、あー……。
私はこういうスキンシップをとらないように心掛けているのだけど
ライちゃんは大好きみたいだった。
*
きっと前のトレーナーにも存分に可愛がられてきたのだろう。
ライちゃんが私を見上げる。私に体重を預けて安心しきっている様子。
正直けっこう重い。だがとてつもなく可愛い。
ライちゃんの目は、普通のライチュウよりも大きく、鼻は小さい。
完全な美人顔である。
*
自然発生したとは思えないので
そういう風に生まれた個体なのかもしれなかった。
きゃーわえーのだけけどねえー。
ライちゃんはずっと私を見つめ続けている。
じーっとくりくりおめめに見つめられてるのも辛い。
*
要求されている。トレーナーとポケモンの無邪気なふれあいを。
この世にありふれた人間とポケモンの関係。
だが私には、それはとても難しいのだ。