002 二次元で幼女な件について
「て…お…起きて!」
「?!」
俺こと俊太は誰かに寝ているところを起こされたので目を開けた。
まだぼんやりしている視界には人のようなシルエット。それもだんだん見えるようになっいき、それがどんな人物なのかはっきり認識できるようになった。
「だいじょうぶ?」
五歳くらいの少女…否、幼女が心配そうにこちらを見つめていた。
髪の長さはロングで、髪の色は茶色。頭には白い帽子をかぶっている。
「…ねぇってば!」
「あ、ああ大丈夫だよ」
俺が返事を返すと茶色の髪の彼女は良かったと言って、安心したのかその場に座り込んだ。
周りをよく見ると此処は室内ではなくどこかの草原のような場所であった。
「ここは?」
俺は気になったので聞いてみる。
「ここは一番道路の近くの草原だよ。」
彼女はすんなり答えてくれた。今、俺と彼女は隣り合わせで座っている。
さて、このまま話を進めるのは良くないので俺が何故ここに倒れていたのかを説明しよう。
ここがポケモンの世界である事に気がついた俺。
ニドキングから命からがら逃げていた俺は走っている最中に、いつの間に森の中から抜け出していたのだろう。そして疲れ果てた俺はここ、一番道路で気を失ってぶっ倒れたと言う訳だ。
そして、この娘に会って気がついたことが一つ。
目の前にいるこの幼女は……『三次元』なんかではなく、『二次元』の姿だということ。
たしかにポケモンの世界なんて二次元の世界なのだから当たり前といったら当たり前なのだろう。しかし、ここにとばされてから、ニドキング以外の生物を見ていない俺からしてみれば驚きなのだ。
そして三次元より二次元を愛する俺からしてみれば、もう最高以外の何物でもないのである。
今までありがとう三次元。そして永遠にさようなら三次元。こんにちは二次元。愛してるよ二次元。
これで俺も……恋愛が……。
5歳の幼女の目の前で怪しくニヤニヤしている17歳。普通に危険人物だと思われるだろう。しかしそんなことは知らない。
俺は今、最高に舞い上がっている。
「あなたの名前は?」
こんなことを思っていると隣の幼女が名前を聞いてきた。
名前か…。どうするかな。望月俊太ってのはこの世界にあわないし…。
そうだ
「俺の名前はシュンタ」
カタカナにしただけですけどね。
「ふぅーん。良い名前だね!」
なんかほめられた。名前でほめられたこと無かったから少し嬉しい。
「私の名前はね…」
あれー?この娘どっかで見たことあるんだよな……。モブキャラでは無かったはず……。ポケモンでしょ…。俺小さい頃ポケモン良く見てたからなぁ…。
「ブルーって言うんだよ。」
「うそぉ?」
「え?」
おっといけない。ついつい口に出してしまったようだ。
この娘は前世でのゲーム、ファイアレッド・リーフグリーンの女主人公。
……の五年前の姿か。
「よろしくね、ブルー。」
なる程。これでこの世界の時系列(?)が解った。単純に考えれば原作開始の五年前と言うことになる。
まだレッドやグリーンも5歳と言うことか。なら俺が今すぐ旅に出れば、チート野郎に出会うことなくポケモンリーグで優勝……とかあるかもな。
しかし、さっきから何か違和感があるんだよな。この違和感が何なのかは解らない。まあ二次元の世界ってのが違和感しかないんだろけど。
それにしてもブルー、可愛いな。
「どうしてあんな所に倒れてたの?」
「‥…」
きましたよ。さて、どうしよう。普通に「森でニドキングに追いかけられて、命からがら逃げてきた。」ってありのままを言うのも良いけど……「なんでそんな森にいたの?」とか聞かれたらどうしようもないし……。
かといってこのまま無言で通すのも気が引ける。
そもそも転生者と言うことをこの世界の人間に言ってはいけないのだと思う。天使ちゃんは言わなかったけれど、ここの世界にある歴史や文化、人とのつながりを大きく替えてしまうのはマズいのだと思う。だから彼女には俺が転生者だとバレてはいけない。
「?」
ブルーはなかなか俺が答えないので不思議そうに見つめてくる。
仕方がない…ここは
「ごめんね、よく覚えて無いんだ。」
「ふーん、そっか」
彼女はそういって俺に笑いかけた。
そのまぶしい笑顔が俺の心を痛みつける。
ごめんなさい嘘ついて。
心の中で謝罪しとく。
「家族はいるの?おうちはどこ?」
またもや聞かれたくない質問をされた。
そもそも家族って転生するときに貰えたりしないのかな?まぁもう旅にでれる年齢を7年ほどすぎている訳だし、必要ないと思われたのかもな。
「家族は…いないんだ」
「え!?そうなの?……ごめんなさい」
あっれー?なんかブルー泣きそうだぞ?
「いや、大丈夫だよ?だから泣かないで?」
やばいやばい。これ誰かに見られたら通報されるわ。それ以前にブルーが泣くとか俺の心が痛んで痛んで……。
「うん…でもお母さんとお父さんがいなくて平気なの?」
「うん。まぁ一人でもなんとかやって行けそうだしね……」
俺、料理もできるし。直ぐに旅に出ちゃえば何の問題も無いだろう。
「そっか…。でも……今日は私のおうちにおいでよ。おなか空いてるでしょ?」
え?この娘の家に俺が!?
「いや、大丈…」
といったとたんに腹の虫がグーと音を立てて鳴った。
「フフ…。遠慮しないで!ね?いこ!」
恥ずかしい…。
すると彼女は俺の手を引いて、笑顔で
「こっちこっち!」
と言った。可愛いい…可愛すぎる…!
俺は手を引かれるままに彼女についていった。
しかし彼女の家で、俺はとんでもない事実を知ることになる。