序章
001 転生でいきなりピンチな件について
あたり一面木、木、木。木しかない。こういう所を一般的に森と言う。

「どこだよここ……」

俺……望月俊太はこの世界の人間では無い。
つい先ほど転生してきた異民である。

「本当に滅茶苦茶だな…天使ちゃんは」

天使ちゃん。俺をここに転生させた張本人にして俺を殺した張本人でもある。

『望月俊太さん。あなたのご活躍をお祈りしています。』

天使ちゃんのこの言葉を最後に俺はどこに転生するかもどんな特典を貰ったかも聞かずに転生させられてしまった。
しかし、一番不安だった記憶の消去は行われていないことが解る。生前…この場合前世と言うべきか…の記憶がバッチリ脳に記憶されている。

俺はここがどこか……いや、この世界が何なのか全く見当もつかない。

「とりあえず村みたいな所を探してみるか……」

この世界が何なのか。それは村についてから考えよう。







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あれからーーー転生してからどれくらいたっただろうか。現在俺は森の中。時計を持っているわけではないから正確な時間は解らないが既に2、3時間は歩いた気がする。
しかし転生前より体力が減ったのだろうか。少し走るだけですぐに息が上がってしまう。それに木が無駄に大きく感じるのは気のせいだろうか……。

「あーあーあー」

声も少し高くなったような気がする。
まあそれは良いとして。なかなか森の中から抜け出せない。ここら辺一帯は人の手が加えられていないようである。それに今までなんの生物にも出会うことはなかった。

「不気味だ……」

一刻も早くこの場から抜け出そう。何だか日も落ちてきたし。

ガサガサ……‥

しかし喉が渇いてきたな…。

ガサッ

池とか川とか流れてないのか?

「……」

さっきから後ろの茂みがガサガサしてるんだが…。
恐る恐る後ろを振り向いてみる。








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ハァハァハァ……
呼吸をするのが辛い。肺が痛い。足も痺れてきた。足がもつれ転びそうになる。

どんなに走っても後ろの“怪物”は追いかけてくる。
紫色の鎧を纏ったような体。鼻あたりと額に角が一本ずつはえていて、太い尻尾をブンブン振って、二本足で走っている。目はまさに獲物を狩る猛獣のソレだ。

「くっそ…どうすんだよ…」

幸いなことにその“怪物”の足は速くはない。しかし迫力はかなりのものだ。一歩一歩踏み出す度にズシンズシンと振動が伝わってくる。

身を隠すために近くの木の裏に逃げ込む。荒い呼吸で場所が解らないように必死に呼吸を落ち着かせる。

ズドン

自分の隠れている隣の木が破壊された。

どうする…。どうする…。辺りは日が落ちたおかげで暗くなってきた。それにここは森。周りには隠れられる物が沢山ある。それを利用すればこの猛獣から逃げられるかもしれない。

俺は足下に転がっている石を猛獣のいる反対方向に、力一杯投げる。それは遠くの木に当たり、カツンと音がする。怪物がよそ見した隙に別の木へ隠れる。
怪物は音がした方を振り向き……

「頼む……あっち側へ行ってくれ……」

口から砲口を放った。静かな森に爆発音が響く。恐る恐る、砲口が放たれた所を見てみると、そこら一面に生えていた木が全て灰になり、小さなクレーターができていた。

あんな物を喰らったら即死だ。
転生して早々に死ぬなんて事があってたまるだろうか?

俺は隠れることを止め、力の限り走った。その先に村があることを祈って。そしてその村にこの怪物を追い払ってくれるような凄腕チート野郎がいることを祈って。

無我夢中で走る。怪物は一度も吠えない。ただただ、後ろからズシンズシンと言う足音だけが聞こえてくる。通るときに邪魔な木は全て破壊して進んでくる。

なる程……『王』か。コイツが恐ろしいから、この森には他の生物が住んでいないのだろう。名前にピッタリの迫力だなこりゃ。この怪物に出会って怖い反面、少し嬉しかった。生き残れればの話だけれど、これからのこの世界での出来事が楽しみだ。

この怪物の名前は『ニドキング』。

そう。この世界は……
















『ポケットモンスター』の世界だった。

■筆者メッセージ
ポケノベル難しいですね。
オレ様 ( 2016/03/26(土) 22:09 )