望み
オーキド研究所についたハイルたちはポケモンの権威、オーキド博士にサトシのきいたポケモンの話をしていた。
「ふうむ…。『望みポケモン』とな…。…まてよ、確かこの辺に…。」
話を聞いた博士が取り出したのは、だれかが書いたらしい論文。ぱらぱらとページをめくった博士は、とあるページを見せた。
「ほれ、あったぞ!」
ページには何やら鹿と狐を足して二で割ったかのようなポケモンが描かれていた。そのポケモンに関する言葉が書かれていた。
「えっと、『望みポケモン ベーテン』その姿は鹿に似て、頭部に狐のような耳を持つ。強靭な足腰を持ち一日に世界を100週できるという。その時の姿は誰にも見ることはできないが、運よく見えた人がいたらその人の願いをかなえるという。だが、この話はただの噂であり、今まで見た者はいないと思われる。少なくとも、記録にはない。・・・ですって。」
丁寧に描かれていた説明文を一字一句違わず丁寧に読み切ったハイルは一瞬だけたった一つの思いがよぎった。
もしかしたら、もしかしたら、そのポケモンに出会うことで自分の願いがかなうかもしれない。・・・カナウカモ、シレナイ。
「ふうむ・・・。どうした、ハイル?」
渡した書類を眺めながら考え事をしていたオーキド博士がぼうっとしていたハイルを覗き込む。ハイルは無理をして、笑みを作った。
「いえ…、あの・・・、あって、みたいなあ…、なんて、思っただけです。」
それを聞いたサトシがいたずらっ子のような顔で笑った。
「博士、ハイルに探しに行ってもらったらどうですか?」
その言葉に目をむくのは博士とハイル。しかし、肩に乗っていたゼーレはどれとも違う反応を示した。
《ハイルが探しに行くわけないだろう、ばーか。》
あざけりを含んだ声音にハイルはゼーレを手で払い落とす。空中で一回転して飛び降りたゼーレは半眼になってハイルをにらみつけた。
《何するんだよ、ハイル。》
じろり、と睨み付けてくるゼーレをしゃがんで頭を撫でることで軽くいなしたハイルは博士に向き直った。
「博士、私行きます。」
その言葉に困惑したように博士はハイルを見る。その瞳にハイルは力強くうなずいて見せた。
「そうか・・・。じゃが、本当にいいのか?」
もう一度頷く。少し瞬きをした博士は苦笑して頷いた。
「分かった、このポケモン図鑑を渡すから、『望みポケモン ベーテン』の姿を記録してきてくれい!」
渡された図鑑を受け取ったハイルは笑顔でうなずく。申し訳なさそうに足元でうずくまっているゼーレを見つめた。
「ゼーレ、ごめんなさい。」
黄金の毛並みを煌めかせながらゼーレは渋々といった
体でうなずく。
《しょうがないなあ…。分かった。一緒に行くよ。》
顔の近くに上がってきた黄金の毛並みを撫でて、ハイルは微笑む。そうしてじっとそれを見ていた博士に向き直った。
「では、行ってきます。」
その言葉に博士は一瞬瞬いたが、すぐにうなずく。
「うむ、行ってきてくれい。」
こくりとうなずいたハイルは研究所を後にした。