story4 無事
「う、うう…」
目を覚ました俺が見たのは、天井。ギルドでの、医療室だ。
「いって…」
左腕に走った鋭い痛みに左腕を見る。そこには包帯が巻かれていて、動かせないように固定されていた。
「やっと起きたね。体は大丈夫かい?」
その声のしたほうへ目を向けるとギルドの仲間の一人、リオが立っていた。軽く腕を組んでこっちを見つめる姿はなんていうか、とても絵になる。
「エバ、何があったか、覚えているかい?」
……?確か、[滝壺の洞窟]の奥地っぽいところにヤドキングがいて、そのヤドキングがサイコカッターを…あれ…?そっから先の記憶が・・・・?
俺はそのことをそのまま話す。リオは軽く眉を顰めながら、俺の記憶を補足してくれた。
「君はリンちゃんにここまで運ばれたんだ。その左腕の傷は、その【サイコカッター】によるものだ。…ここまではいい?」
俺は理解できたので、軽くうなずく。
「ああ。」
「その左腕の傷はそう簡単に治るようなシロモノじゃない。ざっと、一、二週間はかかる。」
それもわかっていたので、軽くうなずく。
「うん、それだけわかっていればいいかな。じゃあ。」
「ああ。……ありがとう。」
小さな声で言った感謝の言葉に、リオは軽くうなずいて部屋を去った。
「エバ?入っていい?」
「リンか、はいっていいぞ。」
と、はいって来たリン。俺を見て、泣き出したいような、それができないような不思議な表情をしている。
「リン…?」
「良かった…。無事で、ホントに良かった…!」
「ごめん。」
へたりと座り込んだリンにぼそりとつぶやいた謝罪の言葉。リンはこくりとうなずく。
「うん。次からは、あんなムチャなしね!」
強い口調だが、心配してくれていることがわかり、少し、笑みが浮かぶ。リンが目を点にし、つぶやいた。
「エバが、笑った…」
・・・・・・・そんな俺笑ってなかったのかな?案外ダメージの大きいショックを受けた。
「うん。じゃあ、またね!ゆっくり休むんだよ〜。」
満足そうな笑みを浮かべ、リンは去っていった。少したってから、ノックの音が響く。
「エバ、入るよ?」
という声とともに入ってきたのはリオだ。そのリオの姿を見た途端、ぽろっと言葉がこぼれた。
「リオ、俺は波導を使えるのか?」
ダメもとで言ってみた言葉に以外にもリオはうなずく。
「うん、使えると思うよ。エバは質がいいみたいだし。」
「本当か!?なら……」
「分かった。いいよ、使い方ぐらいは教えてあげる。…強くなりたいんだね。」
その言葉に俺はうなずく。あんなことをもう二度と起こしたくない。
「ああ、だから…」
うなずいたリオは用意をする、と言い残して出て行った。
……それか二週間俺の体が治るまで、波導を使うための地獄な訓練を受ける羽目になった。
この話は、いつかどこかでできるといい。