おまけ
「何でこのギルドは『サンセット』なの?夕日とか何かなの?」
ミユは気になっていたことを周りのポケモン達に尋ねた。
そうすると、何匹かのポケモン達は苦笑いを浮かべて言った。
「おやかた夫婦に聞いてくれ、ちょっとあれは……なあ」
答えてくれたジャノビーのクナタが答えた。
「まあな、あれはおやかた夫婦に直接聞いた方が……」
「私の口からは言えないわね」
「あの話は本人にやってもらわないと」
口々にみんなそう言った。
「何かあるんですか?」
ポケモン達は顔を見合わせた。
「今、おやかた夫婦いるから聞いてきな」
ポケモン達はみんな一斉に頷いた。
「えっ……でも私一匹じゃあ」
「ごめん、俺ちょっと」
「……ボクも」
エンとフウまで嫌がっている。
なぜだろうとミユは一匹、首をひねりながらおやかた夫婦の部屋に向かった。
「えっ?このギルドの名前の由来?」
レウが顔を上げた。
「サンセットって夕暮れとか夕日とかそういう意味ですよね?」
「ああ、そうか、ミユにはまだ話していなかったか」
その横からルウがひょっこり顔を出して言った。
「あれはね、私達がまだイーブイだった頃……」
レウとルウは同じ村出身の探検隊で、幼なじみだった。
その時、彼らはお互いにこう思っていた。
(進化してから伝えたいことを伝えよう)
ある秋の日、二匹は依頼を終えて海岸沿いの道を歩いていた。
レウとルウのチームは評判のよい探検隊で、独立を考えてもいいくらいだと言われていた。
「今回は少し大変だったな」
「まあ無事に依頼終えれたしいいんじゃない?」
それからまた二匹は黙って歩いた。
「夕日ね」
水平線に下の欠けた太陽が浮かんでいる。空と海は橙色に染まった。
反対方向からは月が昇り、夜が来ていた。
「私いつも思うの、どんな景色ももう二度と見えない、たった一度のことなんだなって」
「何でいきなりそんなことを?」
「こうやって二匹で依頼終えて夕日を見る、でも一度っきりのこと、またこんな景色を見ても、それは前見たのとは違う、別のもの。次の瞬間にはもう変わってる」
レウは小さく息を吐いた。
「それもそのうち忘れていくのか……」
「永遠に覚えておくなんてできはしない、でも覚えていこうとする。ダンジョンと同じくらい解明するのは難しいのかもね」
ルウがそう言い終えたとたん、ルウの体が光に包まれた。
「おいっ、お前……」
今にも沈んでしまいそうな太陽の光よりも強くルウの体は輝き、徐々に姿が変化していった。
太陽の光もルウを包んでいた光も消え、辺りは薄青い月明かりだけがぼんやりとルウを照らした。
「……ブラッキーかと思ったら、エーフィね」
「ややこしい時に進化したなぁ」
二匹は顔を見合わせて笑った。
「……先を越されたな」
「いつ進化したかは関係無いよ思うよ」
その時、レウの体の光に包まれた。先程ルウを包んでいた光と同じものだ。
ルウは黙ってレウの変化を見ていた。
「レウ……おめでとう」
「ありがと」
二匹はお互いの進化した姿を見た。
そしてまた笑いあった。
「ああ、あんたら進化したんだね」
当時のレウとルウが所属していたギルドのおやかたが言った。
「はい、さっき」
「そう言えば、進化したら独立したいって言ってたが、どうするつもり?」
「そうですね……少し南の方にまだギルドがないところがあるのでそこに行こうかと思っています」
「ギルド名とかは決まってるの?」
2匹は顔を見合わせ小さく笑って言った。
「サンセットにします」
おやかたはそれを聞いてひとしきり笑った。
「あと……私達結婚します!」
それを聞いて一瞬おやかたは固まったが、すぐに言った。
「お前達はそうなるんじゃないかと思ったが、本当に結婚するのか」
「はい!」
「……まあこんな感じよ」
「……へぇ」
ミユはどう返せばいいのか解らなかったので、とりあえず答えた。