探検隊
オドシシ達が去った後のギルドは騒然としていた。内装はぐちゃぐちゃで、壁紙もあちこち剥がれていた。
「それはあっち、あっ!気をつけろ」
レウの指示で、ぐちゃぐちゃになったギルドはだんだん元に戻っていく。だが、壊れてしまったものもあり、それがあったところがさみしい。
倒れていたオドシシの仲間は、部屋に閉じ込めて、事情をきいて、警察に引き渡す。
ミユはラッキーにへんしんして、傷付いたギルドのポケモン達を治療した。
(私のせいでみんな傷付いた)
オドシシ達に付いていった先で何があるにせよ、付いていった方がよかったかもしれない。そう思いながらミユは治療していった。
ミユは治療しているポケモンと目を合わせることも出来なかった。
治療はだいたい終わった。
幸い、ポケモン達はみんな戦闘不能になる程度のケガで済んでいた。
「ねえ、ミユ」
レナが誰もいなくなった治療室で話しかけてきた。
「何?」
ミユはレナと目を合わせずにこたえた。
「あのオドシシ達、ここのポケモン達を殺すとか、そこまではするつもりがなかったみたいだね」
「……何で解るの?」
「急所を狙えるはずなのに、わざと外してる。どのポケモンのキズも急所にはなかった」
あれだけの襲撃で誰も死ななかったのは、オドシシ達が手加減したからなのか。本気でミユを連れていくためならなんでもしそうな雰囲気だった。
「……出ていこうなんて考えないで」
ミユは思わずレナと目を合わせた。
レナはミユの表情を見て言った。
「出ていったらみんなよけい心配するよ」
「でも、私がいたらまた彼らが来るかもしれない」
「そこら辺はみんなで……」
ちょうどその時、おやかた夫婦が部屋に入ってきた。
「その事なんだが、確かへんしん使えるんだろう?」
「…ええ、まあ」
「普段からへんしんしてればいいじゃない」
「あっ、それいいですね」
そう言っておやかた夫婦とレナはにこにこしている。
「でも私がここにいるってことは知られてるし……」
「あんたが出てって行方知れずになってるって噂を流せばいい、あんたが何にもやらかさなければ大丈夫よ」
そう言ってルウは意味ありげに小さく笑って言った。
「それに、私らは探検隊だよ。この世界の不思議を探し求めて、それを解明するのが探検隊。あんたは誰も見たことがないポケモンで自身の記憶もない、そんな不思議が転がってきたんだ、それを解明しようともせず放り出すなんて探検隊ギルドサンセットとしてあり得ない」
「あれだけひどい傷を負わされるほど大きな何かがあったのなら、解明したら何が起こるのか、ワクワクするな」
ミユは何を言えばいいのか、言葉を探せなかった。
「も……もしそんな大きな事でもなくて、結果がつまらないようなものだったとしてもですか?」
レウはそれに間髪いれず答えた。
「そんなことはない」
「何でわかるんです?」
「勘だ」
大真面目な顔でレウは答えた。横でルウも同じように大真面目な顔で頷いている。
そんなおやかた夫婦の様子を見ると、ミユの肩の力がふっと抜けた。
「……私、ここで探検隊やりたいです!」
ミユが満面の笑みを浮かべて言うと、おやかた夫婦とレナは笑顔で頷いた。
「チームはどうするんだい?」
「自分で作ります、メンバーは後から決めます」
「チーム名は?」
「『サーチ』です」
「探求かぁ、そのままだね」
それでも、おやかた夫婦もレナもそれ以上言うことなく、笑っていた。
その次の日、ミユが『サーチ』のメンバーを募ると、エンとフウが真っ先に入ってきた。
他のポケモン達は既に自分達のチームに所属していたので、『サーチ』には入ってはこなかったが、新しい探検隊チームを暖かく認めてくれた。
「やっぱ結局その二匹が入ったな、まっ、がんばれ。二匹の喧嘩とかリーダーとして止めろよ」
そうギルドメンバーの内一匹が言った。
(解明するのは私自身、自分の不思議を自分で解明する!でも、ギルドのみんなと力を借りて、私もみんなに力を貸すんだ)
ミユはそう心に誓った。