結成
三日後、ミユは起き上がって動けるくらいまで回復した。とはいえ歩けるくらいだ。
レナはミユの診察ついでにミユの話し相手になっていた。
「どこから来たのかも覚えていないの?」
「思い出そうとすると怖いんです。思い出すなって言われてるみたいで……」
「でもすごいね、だってギルドのほとんどの探検隊から誘われてるんでしょう?」
「私の力がどれくらいなのかもわからないのになんでだろう」
(だってかわいいもんなー、そりゃあいろんな探検隊が華を欲してるんだよ。口調的に女の子、同性の私でもメロメロよ)
「私は空から落ちてきたんですよね?」
「ええ、エンとフウが見つけたの」
「あのガーディとイーブイの二匹のですよね」
「あの二匹の誘いがしつこいとか?」
確かにエンとフウの二匹は時間さえあればミユにアプローチしている。フウの誘いが一番しつこいらしい。
今ここに誰もいないのは診察だからとレナがミユの周りに寄ってきたポケモン達を追い出したからだ。
「気になるグループはないの?今なら選びたい放題よ」
「皆さんだれもがいい人で、私なんかが選んでいいのかなって」
「あなたが選ばなくてどうするんですか、まさか取り合えなんて言わないでしょう。それに早く決めないとおやかたにも悪いわよ」
ミユは目に見えてしゅんとしてしまった。
「まあしたいようにしなさい、選びたい放題なんだから、じゃあね」
そう言ってレナが出ていった瞬間、ミユが寝ている部屋にポケモン達が入ってきた。
「何か食べたいものある?持ってくるよ」
「何タイプ?一応全種類グミがあるよ」
「どんな技が使えるの?」
次々に繰り出される質問にミユは「えー」とか「うーん」と返答するしかない。
(皆さんにぎやかで楽しそうですね)
その時、ミユは不思議な感覚に襲われた。質問をしてくるうち一匹のニョロゾの事が一瞬、頭に浮かんだ。
(どうすればいいのか、解る……?)
次の瞬間、ミユはニョロゾにへんしんしていた。
「……え?」
「俺?ミユは?」
「まさかへんしん?ってことは君はメタモン?」
(メタモン?知らない。聞いたこともないな、どうやって元に戻るんだろ)
「戻れる?」
(戻る?元の私の姿は……)
その後すぐにミユは元の姿に戻っていた。
「へんしん使えるポケモンってメタモンしかいないはずよね?」
「だよな、メタモンしか知らない」
「……私はメタモンなんでしょうか?」
だが、ミユはそうではないとどこかで確信していた。メタモンではないはずだ。
「んー、まあでもへんしん使えるポケモンがメタモンだけじゃないのかもしれないし、違うのかもね」
みんながざわざわしているとき、ちょうどおやかた夫婦が入ってきた。
「ちょっとみんな席を外してくれ、少しミユと話がある」
みんなおやかたの命令に逆らうわけにもいかず、部屋から出ていった。
おやかた夫婦はミユの横に座ると、レウがこう聞いてきた。
「ケガはよくなったかい?」
「はい。おかげさまで、もう歩けます」
「話とは、君がこれから入るであろう探検隊のことなんだ」
「どこに入ろうと思ってる?」
「……まだ決まってないんです」
ミユは小さくなって言った。
「まあ大事な選択だ、迷うのも無理はない」
「そこで私達から提案があるの、あなた自分で探検隊を作らない?」
「自分で探検隊を作る?」
「探検隊って隊なんてついてるけど一匹でも登録できるものなの。で、あなた自身で探検隊を作って、入ってくれたポケモンをパートナーにすればいいわ」
(確かにそうすれば選ばなくていいけど、それだと皆さんの好意を無駄にしてしまうってことだよね……)
迷っているミユを見て、さらにレウは言った。
「そうするとウチのギルドからいくと、フウ、エン、オルト、ミレナ、コイド、ティン、ハク辺りか、後はみんな各探検隊に入ってるからな。だいぶ絞れたが、全員は多いか」
「探検隊は基本的に4.5匹で組むものだからね」
「考えておきます」
そのあと、ルウは思い出したように言った。
「あ、明日までに決めておいてね」
「明日ですか!?」
レウとルウは笑って言った。
「まあ早く決めてもらわないと、仕事させれないもの」
「そんなにすぐには……」
「三日もここで過ごしたなら選べるわよ」
ルウはさらりと言った。
「そんなぁ……」
「じゃっ、明日の夜また来るからね」
こう言われては仕方がないなと思って、ミユは小さく頷いた。