出会い3
朝日が射し込み、ギルドの中は一気に明るくなった。
その光に反応したポケモンは体を起こそうとして体が強張ってうまく動かなかった。
「痛っ!」
動かした瞬間、背中に鋭い痛みが走った。
動いたとき、目の前にガーディの寝顔があることに気付いた。首だけ動かすと周りにはガーディ以外にもイーブイとトリミアンが寝ていた。
「……へ?」
その声で目が覚めたのか、三匹とももぞもぞ動いた。
「目が覚めたんだね、あんたすごいケガしてるよ」
「あっ!目が覚めたんだね!」
エンが尻尾を振りながら言った。
「僕はエン、いきなりなんだけ……」
「お前、抜け駆けすんなよ」
「こういうのは早い者勝ちだよ!」
その大声が頭に響いたのか、そのポケモンは頭を押さえてしまった。
「あんた達、この子ケガしてるんだよ、大声出すんじゃないよ」
その言葉にしゅんとした二匹は小さくなってしまった。
「「ごめんなさい」」
謝られたポケモンは恐縮したように言った。
「あ、いいんです。助けてくださったんですよね?」
その声は耳の中にすっと入ってくる、綺麗な声だった。
「ここはどこですか?」
「あっ、ここは探検隊ギルドのサンセットだよ」
「探検隊ギルド……?」
「探検隊の集まりみたいな感じよ。で、ここがギルドの建物」
「ねえ君の名前何ていうの?何ていうのポケモン?」
「私の名前はミユ、みんなそう呼んでいた気がする、でもそれしかわからない……」
最後の声は消え入るような声だった。
「それしか?……ってことは何も覚えていないの!?」
ミユは横になりながら小さく頷いた。
「ただ、怖かった。それしか覚えていないの……助けていただいたのに、何もできません……」
「いや、あんたに何かしてもらおうって理由で助けたわけじゃないよ、ポケモン助けは探検隊の基本さ」
ミユの声は震えていた。
「ケガが治れば出ていきます、そのあとこの恩は返しますから……」
ミユがそう言ったとき、あちこちの部屋の扉が開いて、ギルドメンバー達が出てきた。
「大丈夫?」
「動けるの?」
みんなが矢継ぎ早に質問していくのをレウ止めた。
「うるさいぞっ!ケガしてるんだからそっとしといてやれっ!」
みんなその剣幕に怯えて黙ってしまった。
その中、ルウがミユに近付いていって尋ねた。
「名前は?」
「ミユです……」
その続きの質問をしようとしたルウをフウが止めた。
「母ちゃん、ミユは名前しか覚えてないんだって」
「おやかたと呼べと言ってるでしょう!で、記憶がないと、そういうことなんだね」
ミユはその言葉に黙って頷いた。
その時、ルウはちらりとエンとフウの方を見た。
「なんだ、それじゃあ助けたのに報酬は期待できないってわけだ」
「……すいません、でもなんとかして返します」
「なんとかできなかったらどうする気だい?」
その様子を見るに見かねたエンが言った。
「そんなに言う必要ないじゃないですか!」
(おやおや、まだ子供だねぇ。おやかたの言葉の真意に気付いてないね)
ネインは心の中でそう呟いた。恐らくエンとフウ以外のポケモン達は気付いているだろう。
「というわけだから、その恩はこのギルドで働いて返しな」
「……えっ?」
エンとフウはここでようやくルウの言葉の真意に気付いたようだ。
「おやかた……」
「ありがとう母ちゃん!」
「だから母ちゃんじゃなくておやかたと呼びな!」
そのやりとりを見ていたミユは言った。
「でも、私なんかがやっていけるでしょうか?」
「できなかったらその時考えればいい。今はそのケガを治す事を第一に考えな」
「あっ、ありがとうございます」
ミユは泣いていた。
「じゃあさ、俺と……」
「僕の探検隊のパートナーになってよ!」
エンは自分が予想以上の声を出したことに驚いた。
フウも呆然とエンを見ている。
「えっ?あの、私よくわからなくて……」
「急がなくても逃げてく訳じゃないんだから、考える時間くらいおやりよ」
ルウは半ば呆れたように言った。