ポケモン不思議のダンジョン〜隷従と自由の交響曲(シンフォニア)〜 - 第1章
第8話:救助要請
大量の紙束に埋もれた部屋。
窓らしいモノがなく、少し薄暗くて埃っぽいそこに、突如として電子音が鳴り響いた。

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ―――

まるで目覚ましのように、音は止むことなく鳴り続ける。
もぞりと紙の海の一角が動き、1匹の薄ピンク色のポケモンが身を起こした。

「うあー……なに?」

クマの残る目元を前足でごしごしこすり、それでもまだ半目のまま、彼女はふらふらと音源に向かって歩き出す。

「まだ起こさないでって、言ったでしょー?」

若干不満げな言葉に、彼女の他にこの部屋にいたもう1匹の存在が振り返った。
それまでオロオロと、途方に暮れたように右往左往していたのが、彼女の姿を認めてほっとした表情になり、次いでふっと掻き消える。

「……なにごと?」

“自分のみがわり”が消えたことに訝しがりながら、彼女は音が発されているモニタを覗きこむ。
その瞬間、眠気が完全に吹き飛んだ。

「――たいっへん!!!」

ひとっ跳びでとある機材の前に着地すると、額の玉を光らせ、念力によって邪魔な紙を払い落すと同時に電源を入れる。
長い二又の尻尾で、付随のマイクを引っ掴むと、彼女は鋭い声で叫んだ。

「緊急事態発生!!緊急事態発生!!」













『緊急事態発生!!緊急事態発生!!』

“アストラル”の通信関係を一手に担う、エーフィのアカリからの緊急放送が流れた時、レイは丁度依頼を終えて、ギルドに帰還したところだった。

『本日午後2時過ぎ、「コロコロ洞窟」内部にて、緊急救助要請信号を受信!危険度レベル4!ギルド内にいる全ての隊員に連絡します、稼働可能な者は火急的速やかに現場に移動し、救助を実行してください!対象者は――』

皆まで聞かず、レイはだっと駆け出した。
悪い予感しかしない。
『コロコロ洞窟』。そこは確か、“あの子たち”が今日初めての冒険に行くと言って出掛けた場所ではなかったか。
背中を今回のパートナーだったセレナの声が追いかけてくるが、振り返らない。
鬼気迫る彼女の形相と勢いに、ギルドのメンバー達が驚いて道を空ける。
しばらくして、レイは自分の隣に誰かが追いついて、並走しだしたのに気づいた。

「救助、行くんでしょ?付き合うわよ」
「――サクラか」
「そうよ。…あらなぁに?私じゃ不満って言うの?」
「いや、そうじゃない。――しおりを置いて来ていいのか?」
「あなたには言われたくないわねぇ。――大丈夫よこれくらい。いくら隊長とはいえ、レイだけじゃ万が一何かあった時に怖いもの。それに、私も噂の“あの子”に一度会ってみたいって思ってたから」
「分かった…。恩に切る」


レイが聞かなかった、アカリの言葉の続き。
それは、こういう内容を言っていた。


『対象者は、第3隊“テンペスト”所属のチーム“アイリス”の4匹です』







時は数時間前に遡る。

■筆者メッセージ
こんにちは。随分とひさしぶりに更新しました。
僕の住んでる地方は滅多に雪が積もらないのですが、今日は特別ですね、寒いです。
しると ( 2014/02/14(金) 14:26 )