穴埋めその一
僕はまず、彼の心のケアから始めることにした。
僕がついているとはいえ、親を失ったショックは大きい。
食欲はないし、他のポケモンとも遊びたがらない。
このままでは彼は身も心も駄目になってしまう。
そこで、僕はあるものを彼に見せてみた。
それは「ポケモンバトル」だ。
ライト「ランプラー、チラーミィ、頼んだぞ。」
ランプラー『了解デス』
チラーミィ『仕方ねえな…』
ランプラーはヤル気満々に、チラーミィは渋々とバトルを引き受けた。
イーブイは、未だにうかない表情のままだ。
ライト「それじゃあ始めるぞ、バトル開始!!」
ランプラー『行くデスよ、はじけるほのお!!』
チラーミィ『アクアテールで弾き返してやるッ!!』
バトル用の室内で、咆哮する火山の如くランプラーの炎が迸る。それをチラーミィが、たゆたう水流の如く跳ね返す。それをイーブイは、興味深そうに見つめていた。
家がぶっ壊れそうになったので、そこまでにさせた。
ライト「ご苦労様、戻って休んでくれ、ランプラー、チラーミィ。」
僕は2体をモンスターボールに戻し、イーブイにこう問いかけた。
ライト「今の見てて、どうだった?」
イーブイ『……え?』
ライト「争っているようにしか見えなかったかい?」
イーブイ『いや……タノシソウと思った………』
ライト「そうか、他に思ったことは?」
イーブイ『え?』
ライト「あるんだろう?言ってみなよ」
イーブイ『……っ』
イーブイは一旦黙った。
イーブイ『自分も…やりたいと思った…』
ライト「へへへ、そうだろ?やってみるか?」
イーブイ『えっ…?』
イーブイは驚いた様子だったが、少し嬉しそうにしていた。
ライト「じゃあ早速やるぞ、出て来い!キルリア!!」
キルリア『…出番か』
モンスターボールからキルリアが飛び出した。
ライト「バトル開始!!」
キルリア『行くぞ、サイコキネシス!!』
イーブイ『う、うわあ体が!!』
キルリア『シグナルビーム!!』
イーブイ『わあああ!』
キルリアが押しているようだ。どうやらイーブイは、バトルが久しぶりらしい。
イーブイ『くっ…シャドーボール!!』
キルリア『うぐっ…』
効果は抜群だ。
あいつ、相性わかってんのかな。だとしたらすげえ。
イーブイ『シャドーボール!』
キルリア『シャドーボール!』
2体のシャドーボールが相対する。
力は互角のようだ。
二つのシャドーボールがぶつかり合い、爆発した。
またまた家がぶっ壊れそうになったのでそこまでにさせた。
イーブイは、とても楽しそうにしていた。
イーブイの穴をひとつ、埋めた瞬間だった。