【四十九】
何も収穫が得られない日々が続いている。次の被害者が出る事もなく、ただ尾行を続けるだけの日々が続いていた。
次で一週間。メモに載っていないポケモンや、載っているけどまだ死んでいないポケモンは店に来店していたが、犯行は行われていない。
この間、店長が休みの日も一日だけあったが、綾子と二人交代で店長のマンション近くで張り続けた結果、コンビニに行った事を確認しただけだった。
後は一日中家におり、僕はもちろん、綾子だってこの徒労感は感じ始めているようだった。
素人二人で一人の人間を監視し続けるのはやはり無理がある。
シフトまで無理矢理いじって店長が休みの日の深夜まで監視した割には、得られるものが無さすぎるのだ。せめて時間が絞られれば楽になるのだが、所詮僕等はただの一般市民。捜査情報を知る事もそれを確認する術もない。
一週間が経ったら、尾行は時間を絞り、自分達の事も考えた方が良いと綾子に提案しようと思う。綾子はあまりに事件に入れ込みすぎているようで、身体を壊しそうだ。そちらの方が心配で、少し落ち着いて欲しい。
ポケモンを燃やす。その行為がもたらす惨たらしい結果や、後に残った虚しさや嫌悪感は、僕にも分かる。自分で行った行為を振り返るだけなのだが、何度思い返しても同じものを感じる。この前焼死体を目にした時からは、余計にそうだ。
だからと言って、絶対に犯人を捕まえたいとは思っていなかった。捕まって欲しいとは思うが、自分で捕まえたいとは思わない。
自分で自分を捕まえるような感覚と言っても誰にも伝わらないかもしれないが、この一週間犯人の事を考え続けていると、鏡を見るようで会いたくないと思い始めた。話を聞いてみたいという怖いもの見たさもあるのだが、対面した時に僕はきっと圧倒的嫌悪感と、憎悪を抱いてしまいそうだった。
それは自分への嫌悪感と同種のものでもあるし、憎悪をぶつけていれば、なくならない自分の罪を、そっくりそのまま、八つ当たりの様に相手へ叩きつける事だって出来る気がする。
僕の罪は、僕が背負っていかなければならない。
事件の犯人が捕まっても、結局は何もなくならない。僕はずっと、燃やした事実を考え続けていくのだと思う。