僕は、ポケモンを燃やした
【二十二】
「行くに決まってるでしょ。私だって知らない身じゃないんだから」
 僕の遠慮がちなお願いに、綾子は二つ返事で了承してくれた。
 二人で店からアパートまで歩いている間、明らかな僕の何か話したい様子に綾子が気付いた。「話したい事があるならさっさと言いな」と大いに気を遣われてしまった。
「ありがとう。助かるよ」
「気にしないで、私も気になっている事だから」
「後、里中さんも来ることになってるんだ」
「里中さんが? どうして?」
「本人がどうしてもって言うから。納得出来る理由ではあったし」
 そう、くらいで流されると思っていたが、綾子は黙ってしまった。
「駄目、だったかな」
「いいんじゃない?」
 含みがあったが、僕はそれ以上は聞かなかった。
「事情を話す為に、十三時半に架け橋ってお店で先に待ち合わせることになってるから、よろしく」
「わかった」
 綾子はそれから、いつものように無口に戻った。
 内容は置いておくとしても、綾子と出掛けられる。
 ビルやマンションに切り取られた、タマムシの夜を二人で歩いて、碌に星も見えない殺風景な空を眺める。もう何回目かなんて分からない変わらない風景が、今日は少しだけ違って見えた。

早蕨 ( 2020/07/11(土) 16:59 )