二章
[2-15]
僕らは一体何をしているのだろう。
 ここに来て一体何がしたかったのだろう。
 逃げている気が一切しない。茶番劇にも程がある。仕組まれすぎだ。付き合うのもいい加減に辞めたい。もういいだろう。僕は嫌なんだ。ポケモンが苦しむのも、人が苦しむのももう見たくない。こりごりだ。
強いトレーナーと戦って、楽しく世界を旅する。僕は強くなりたい。誰にも負けないトレーナーになりたい。そんなありふれた夢を思い描くトレーナーなんだ。それの何が悪いって言うんだ。もういいんだ。全てを捨てろ。何ものにもとらわれるな。僕は僕だ。構うな。誰も指図するな。誰も命令するな。誰も縛ろうとするな。自由にやらせろ。
はるこ、お前もそう思うだろう? なんだって皆僕達に絡んで来るんだ。こんなことに何の意味があるんだ。皆苦しんでいるだけじゃないか。誰が得するんだ。何にも面白くない。やってられるか。
 でも僕はずっとそんなことを考えてきた。こんなことやめたいといつでも思ってきた。それでもやめられなかった。僕が弱かったからかもしれないし、それは関係ないのかもしれない。勇気がなかっただけかもしれないし、臆病だっただけかもしれない。なんでこうなっているのかなんて、結局のところ僕にもわからない。
 そんな僕がまたこうして出会った機会。はること出会い、サエさんと話し、ナオトの終わりを見た。あまりに時間がかかりすぎている。これだってほんの一握りだ。僕がここまで来るのにあまりに多くの犠牲を払いすぎている。人一人の命だけでも、何ものよりも大きな価値があるはずだというのに、僕はそれをいくつも犠牲にしてきた。見殺しにしてきた。地獄に落ちるべきはきっと僕だ。ナオトじゃなくて僕が殺された方がよかったとさえ思える。そろそろ茶番劇に幕を下ろそう。こんなところまでやってきてしまった。もう、終わりにしよう。


早蕨 ( 2013/01/21(月) 01:00 )