ある青年の終わりへの道
#5 青年の回復と白い翼の後悔
(本当に済まなかった…!ハル…。)
「大丈夫だって言ってるだろ?もうここまで治ったんだから。」
静かに涙を流すハクに、もう何度目か分からない「大丈夫」を言う。
あの出来事から2週間。今日、火傷も治った俺は退院出来るようになった。
俺はあれから部屋を変えてもらって、大型のポケモン達が入院するための部屋に移動させてもらった。理由は勿論、ハクが心配だったからだ。それにハクの温かい体はとても安心するから。
だがハクは私にはハルと一緒に寝る資格などないとか、私は君を傷付けてしまったから側にいる事はできないとか色々と言っていた。
冗談じゃない。俺はそんなことが聞きたくてハクと一緒にいる訳じゃない。
「いい加減にしてくれ!俺はお前が悪いなんて微塵も思ってない!悪いのはアクロマだ!だからもう謝らないでくれ!」
流石に俺の我慢は限界を突破してしまって大声で怒鳴った。
ハクは落ち込んだままだった。

入院中、俺はハクの隣で寝た。時々ハクの体が震え、同時に小さな泣き声も聞こえてくる。ハクのせいではないと言ってるんだがな…。
そんな時は彼の足を、泣く必要なんてないという思いを込めて少し強めに抱きしめる。すると、彼は俺をチラッと見て少し笑顔になる。それからしばらくすると温かい風が送られてくる。
やっぱり触れ合いは大事だ。
触れ合いは気持ちを伝えるための最も簡単な手段だ。
人間同士でもポケモン同士でも、人間とポケモンでも。
それは変わらないはずだ。

お世話になったジョーイさんにお礼をして、久しぶりの外へと出る。冷たい空気が肌を刺す。それと同時に、あの出来事があった倉庫が見える。倉庫は所々焦げて黒くなっていたり、溶け落ちていたりしていて原形を留めていない。
ハクは一瞬悲しそうな顔になったが厳しい表情へと変わる。声を掛けようと思ったが、何だか話し掛けてはいけない気がして止めておいた。
運良く朝に退院できたので、これからヒウンシティに向かおうと思う。ハクを見るといつもの表情に戻っていたので、背中に乗せてもらい出発する。
それより…あの厳しい表情は何だったのだろうか。


…………


私は怒りに我を忘れ、あろうことか守るべきハルに火傷を負わせてしまった。ハルの仲間として許されない事をしてしまった。自覚が足りなかった。
そう思うと何故だか涙が流れてくる。初めて泣いたのだが、私の心の中には良く分からないものが湧き出てくる。この時の私は混乱していたのだろう。
何度謝っても許される訳がないのは分かっている。ならば…私のやるべきことは、ハルの元を去ることだけだ。ただ、何も言わずに去るのは絶対にしてはならない。とりあえずはハルの回復を待ってから言い出そう。

ハルがだいぶ回復してきた頃、私は彼に伝えた。しかし彼は私に、行かないでくれと言った。俺はお前と旅を続けたい、と。
とても嬉しかったが、ハルがそう言ってくれるだろうと考えていた自分に嫌気が差した。
私はズルい。ハルがそう言うと分かっていながらそのまま伝えた。
自分に対して、怒りが芽生えた。
私は何て身勝手なのだろう!
私は何て理不尽なのだろう!
私は何て暴力的なのだろう!
私はどんどん自分が嫌いになっていった。
何度も何度もハルの元を去る、と彼に言った。しかし答えはいつも、それこそ許さないだった。
私はハルに謝ることしか出来なかった。

そんなある日。遂にハルが退院出来る日が来た。
2週間、ずっとハルの側にいた。その間に私の考えも変わった。彼の元を去るより、今まで通り彼の元で真実の実現を手助けする。それが1番の償いになるはずだと。
ポケモンセンターの外へ出る。ここからはあの倉庫が見える。
何故私は暴れてしまったのか…。
何故ハルまでも傷付けてしまったのか…。
何故…何故…何故…。考えると何故が湧き出てくる。
…止めよう。私はハルの守護者。もう二度とハルを傷付けないために逆鱗の制御を覚えよう…。

ハルを見る。ハルは清々しい表情で空を見上げている。約2週間ぶりの空はどう見えているのだろうか…。
私は彼と共に歩みたい。だから、逆鱗を抑える術を…一刻も早く習得しなければ…!


―――


「久々の空…。気持ちいいな…。」
(ハル…。君は鳥ポケモンみたいなことを言うのだな…。)
ハクが普段よりスピードを落として飛びながら言う。俺を気遣ってくれているのだろう。やっぱり、ハクの温かさは心地良い。

さあ、次はヒウンシティか…。あまり人がいない所があればいいのだけどな…。

ささくれ ( 2019/02/05(火) 21:05 )