とあるポケモントレーナーの対戦記録 3ページ目
遂にヒウンシティでも相手をされなくなってしまった。皆、僕を見ると慌てて逃げるんだ。声を掛けようとすると悲鳴を上げて走り去ってしまう。
解せない…!何度も言うようだが僕はポケモン達とバトルを楽しみたいだけなんだ…。ポケモン達が戦う格好良い姿が好きなんだ。あ、勿論普段のエルくんとカルンくんも最高だけどね。
そういう訳で今度はサザナミタウンに来ている。ここはあの有名なポケモントレーナーであるシロナさんの別荘がある事でも有名なんだ。
さて、そんな事は置いておいて今日は雨なのでポケモンセンターの中で相変わらずのスケッチブックに書いた(対戦しましょう!)の文字を掲げて、エルくんとカルンくんをボールから出して楽しさが伝わるように踊ってもらう。…可愛い、本当に。
エルくん達のおかげで僕の周りには人だかりができた。今までで一番の盛り上がりだよ!本当に嬉しいね!
「あのっ!僕とバトルしませんかっ!」
おっと、誰と戦おうか悩んでいたら相手から申し出て来た。いいね、その積極性。凄く気に入ったよ。という事で彼と対戦する事にした。
今回も1対1のシングルバトル形式だ。勿論挨拶も済ませた。彼はドレディア、僕はキノガッサのキノくんに任せる事にした。キノくんは本当に元気なんだよね。ほら、今も雨の中でぴょんぴょんと小刻みに飛びながら構えている。本当に可愛い。
さて、無駄話はこれぐらいにしていよいよバトルだ。
「ドレディア、蝶の舞…!」
「キノくん、キノコの胞子!」
先制したのはドレディアだ。美しく優雅な舞を踊る。が、そんな事は何も意味が無い。続いて行動を起こしたキノ君が頭のかさから胞子を撒いて相手を眠らせた。
「あっ!ドレディア…!」
彼が驚きの声を漏らす。だがもう遅いよ。
ここからは僕とキノくんの独壇場だ!
おっと、いよいよ毒が効いてきたみたいだね。誰にだって?決まっているじゃないか。勿論、キノくん…だよ。キノくんの持っている毒々玉から毒が吹き出す。そして、その毒を直に浴びたキノくんは苦悶の表情を浮かべる…ことは無く、寧ろとても嬉しそうにぴょんぴょこと跳ねている。言ってなかったけど、僕のキノくんは毒が本当に大好きなんだ。
「キノくん!身代わり!」
僕の言葉に頷いたキノくんが身代わりを盾に防御姿勢を取る。何だかその姿も可愛いなぁ…。勿論ドレディアはまだまだ熟睡している。
よく見ると毒を浴びたキノくんは毒を浴びる前と比べて元気になっている。そう、キノくんは毒で体力を回復できる子なんだよね。
さあ、仕上げと入ろうか!チラリとキノ君に視線を送る。すると、キノ君はいつものように拳を握り締めて力を溜める。そう、気合いパンチだ。
「ドレディア…!」
さっきから彼はドレディアを起こそうと必死になっているけど、ドレディアはぐっすりと幸せそうに眠っている。
準備は整った。
「キノ君!気合いパンチ!」
限界まで縮めた腕のバネと助走の力を合わせた重い重い一撃がドレディアへと直撃する。何か鉄板でも殴ったかのような音に彼は目をぎゅっと瞑ってしまうが、そんな事はもう関係無い。殴られた衝撃で目を覚ましたドレディアはそのまま勢い良く吹き飛ばされて行く。
「ドレディア…。…ありがとうございました。」
どうやら彼のドレディアは攻撃に特化した子のようだったらしい。キノ君の重い拳を食らっては流石に耐えられなかったようだね。
「ありがとうございました。楽しかったよ。」
「……っ!」
おやおや、あまりの悔しさに挨拶も忘れてセンターへと向かって行ったよ。挨拶はしっかりしないと駄目じゃないか。
まあ良いか。勝ったキノ君は僕へと駆け寄り、褒めてと言わんばかりの嬉しそうな表情を見せる。だけど毒を纏った状態じゃ僕が耐えられないいからしっかりとモモンの実を食べさせてから思い切り抱き締めてやる。そうそすといつもより更にぴょんぴょこと大きく跳ねる。これを可愛いと言わずに何を可愛いと言うんだ…!
とりあえず今は風邪を引かないように雨で濡れた体をしっかりと拭いてあげないとね。
その後、敢えてポケモンセンターには立ち寄らずに家へ一直線に帰った。キノ君の体から水滴を拭き取ると滅茶苦茶に甘えられた(主にキノ君からだけど)事は言うまでも無いよね。
続く…?