ある世界の館の主
おや、またここに来てしまった者が現れたか。
ん?ここがどこか?我の名前?
待て待て!焦らなくても時間はたっぷりある。それに我も外の世界の者と話したいのだ。少々付き合ってはくれないか?
あなたは誰なんだだって?
そうだった。自己紹介がまだだったな…。我は名はギラティナ。外の世界でポケモンと呼ばれている存在だ。
何故ポケモンが喋っているのか?
ふふ。それを聞いてしまうか?どうせ君も同じ運命を辿るのだ。教えてやろう。我は人間が大好物でな。ここに来る人間は全て…我の血肉となっているはずだ。
食われる?冗談じゃないだって?
待て待て待て!謝罪しよう。さっきのは嘘だ。不快な気分にさせてしまったのならば申し訳ない…。久々の来客だったのでな。年甲斐もなくはしゃいでしまったのだ。
我が人間の言葉を話せる理由だったな。それは今までこの館に来てくれた人間が少しずつ教えてくれたのだ。君達は短命だからな…。ついさっき会った人間が死んでしまう。悲しいことだ…。
どうした?そこに椅子があるだろう?座ってもいいのだぞ?
そうだ。君達は地面に座るのを嫌う。かといって座らなければ疲れてしまうからな。
この世界はなんなのか?
そうだった。忘れていたな。ここは破れた世界。君達が住む世界とは反対にある、我の世界だ。
そうだ。君が何故ここに来てしまったのかも話しておかなければな。憶測だが君はこの世界に繋がる、空間が裂けた場所に触れてしまったのだろう。
大丈夫だ。君は我が責任を持って君達の世界へ送り返す。だからもう少しここにいてはくれないか?
そうか。ありがとう!見ての通りこの世界に我以外の生物は蟻1匹いない。だから退屈なのだ…。
だったらこの世界を出ればいいじゃないかだって?
そんなことは出来ないな。もしも我がこの世界を出たら管理者がいなくなったこの世界は崩壊する。そしてこの世界と外の世界は2つで1つ。どちらかに起きた事はもう一方にも反映される。つまりこの世界が崩壊すると外の世界も崩壊してしまう。それにこの図体だ。我が外の世界に出ていったら邪魔になってしまうだろうからな。
俺も邪魔者扱いされてるからその気持ち分かるだって?
そうか…。君もなのか。そうか。昔、管理者としての力が強かった我は外の世界で暴れ回ってしまってな。若気の至り、というやつだな。そのせいで人間にも、ポケモンにも、嫌われてしまった。ふふふ…あの時の我は自分の力を見せびらかすだけの子供だった。
俺も手に入れた物をすぐに見せたがるせいでみんなに嫌われただって?
そうなのか。君とは気が合うようだ。出来ればずっとここにいてほしいと思ってしまうが、そんな無責任な事は出来ないからな。
さて!そろそろ外の世界の日が暮れる頃だ。我が儘な我の話を最後まで聞いてくれてありがとう。ここまで親身に耳を傾けてくれたのは君が初めてだ。最後に聞きたいのだが、君の名を教えてくれないか?
なるほど…。それが君の名か。いい名だな。では元いた場所へ帰るんだ。あわよくばもう一度会いたいと思ってしまうが、もうここに来るのではないぞ?
では…。さらばだ。