番外編 2人の散歩〜初めてのおつかい〜
『レイ大丈夫?』
声を抑えて聞いてみる。
「大丈夫だぜ…。大丈夫。」
また変な嘘をついたね?レイは何でこんな嘘をつくんだろうなぁ…?
『レイ、私が心を読めること忘れてるよね〜。』
「やっぱフィルには敵わないか…。そうだな。朝から頭痛がしてて…。」
ほら、やっぱり。私に嘘なんて無駄なのにね〜。
『それで〜?まだ私に何か言うことがあるんでしょ?』
「はぁ…。やっぱりフィルには勝てないな…。そう、薬を買ってきて欲しいんだ。出来るか?」
私を誰だと思ってるのかな〜?そのくらい簡単だよ。
レイはもっと私達を頼ってもいいと思うんだよね〜。
『出来るに決まってるでしょ。私が買ってくるよ。』
「本当にありがとう。」
そう言ったレイが私を撫でてくれたんだ〜。えへへ…。
まだ私しか起きてないし、レイに元気になってもらうためにも頑張らないとね!
レイからお金と人間の言葉で書かれた手紙を預かって外に出てみると綺麗に晴れていたんだ。レイとみんなで、外で遊びたいな〜。
(さーて!薬局っていうのはどこかな〜。)
とりあえずポケモンセンターに行って聞いてみようかな?
って思ってたんだけど…。
(おいお前!ここが俺様の縄張りだと分かって来たのか?)
変なのに絡まれちゃった…。危ないハーデリアだなあ…。面倒臭いね〜。
(うるさいな〜。たまたま通っただけじゃんか〜。)
こういう
ポケモン達がいるから人間が怖がっちゃうと思うんだよねえ…。
(何だと!俺様を誰だと思ってやがる!)
も〜…面倒臭いなあ〜。無視して行こっと!
ハーデリアがジャンプしても届かない高さまでサイコキネシスで浮かび上がったら、ハーデリアが文句を言ってきたけど無視が1番だね〜。
追いかけてきてるし〜!もう!しつこいなあ!
(しばらく寝ててよね!)
サイコキネシスで近くにあった石を軽くぶつけて気絶させておいた。これでしばらくは起きてこないはず…だよね?
どうしよう。自動ドアが開かないなあ…。
まあいいか!サイコキネシスで無理やり開けて中に入った。人間達がびっくりしてるね〜。
いつもレイが道具を買ってる、フレンドリィショップ?っていう場所に来てあの手紙を見せてみた。
そしたら店員さんが笑顔で頷いてお薬を持ってきてくれたから、お金を出して受け取った。やっぱり話せないのって不便だなあ〜。
改めて考えてると、レイって本当に凄いよねえ。忘れっぽいのはダメなところだけどね!
宿屋に帰ってみるとレイは少し体調がよくなったようで、私を見つけると手を振ってくれたから私も尻尾を振り返してみたんだ。
そしたらまた撫でてくれたんだよね〜。えへへ〜。
レイは私達を撫でるのが上手いんだよね〜。触られたくないところ(私はおでこの宝石が触られたくないんだよね)は何も言ってないのに触らないようにしてくれるんだ〜。
そうだ!話を戻さなきゃね!
レイは私を撫でてくれたあと、お薬を飲んでまた寝たんだ。
寝る前に、明日は2人で散歩でもしような。って言ってくれたんだよ。嬉しいよね!ルナ以外はレイと2人きりで出掛けたことがないから本当に嬉しいよ!
レイが早く元気になってくれればいいなあ〜。
………
昨日フィルが薬を買ってきてくれたおかげですっかり元気になった。本当にフィルの力あってこそだった。
そして今日はそのお礼を兼ねてフィルと2人だけで散歩に行く。
「フィルー、行くぞー。」
『今行くよ〜、っと!』
フィルが俺の腕の中に飛び込んできたので、そのまま抱きかかえて宿屋の外へ出る。
「おー。今日もいい天気で絶好の散歩日和だな。」
『そうだねえ〜…。さて私も歩こうかな〜。』
フィルも歩きたいと言っているので手を離して彼女を地面へ降ろす。するとフィルはサイコキネシスで俺の頭の位置まで浮かび上がる。そして足を交互に動かす。
それは…歩いてる、と言えるのか…?
何故かおかしくなってしまって笑ってしまう。
『何で笑うの〜?この方がレイと話しやすいと思ったんだけど…。』
笑っている俺を見て、落ち込みながらぶつぶつと呟くフィル。そうだったのか。またフィルを悲しませちまったな…。
「確かにそうだな。笑ってごめんな。」
『…なんちゃって〜!えへへ。引っかかったねえ〜。』
やられた…!大笑いするフィルを睨むと、彼女は舌を少し出してクスクスと笑う。
まるで俺の反応を分かっていたかのように。
俺の負けだ。認めるよ…。何か言う事を聞いてやるか…。
『じゃあ、1週間に1度は2人で出掛けようね〜。』
「はぁ…。降参だ…勝てねえ…。」
やっぱりフィルには勝てる気がしない…。
フィルにだけは一生かけても勝てない気がする…。
『やだな〜。そこまで褒めなくてもいいよお〜。照れるな〜…。』
俺が心の中で敗北を認めていると隣から照れたような笑い声が聞こえたので恐る恐る見てみる。
すると、やはりというか何というかフィルが笑っている。
前言撤回だ。
一生かかっても絶対にフィルには勝てない!
俺が落ち込む一方、フィルはどんどん笑顔になっていく。
ああ…悲しいなぁ…。