第21話 閑話 ルナの想いを言の葉に
私はルナ、ポケモンです。種族はアブソルです。
昔、私はあるトレーナーに暴力を振るわれていました。殴られ、蹴られ、口汚い言葉で罵られていました。そして…捨てられました。
昔は怖くて言えませんでしたが、今なら言えます。最低最悪のトレーナーでした。
さて、気分が悪くなる話は止めてレイと出会った時の話をしましょう!
私は捨てられたあと、人間の街を歩き回って助けを求めました。ですが、人間には私達ポケモンの言葉は通じませんでした。
やがて私の後ろ足の傷が悪化して、力が入らなくなってしまいました。半ば諦めながら最後に助けを呼びました。すると人間が現れて、私の後ろ足に触ろうとしてきました。
人間は危ない生き物なので当然威嚇しましたが、その人間は大丈夫と優しく言いながら近付いてきました。身の危険を感じてサイコカッターを放つと、人間の目をかすめて後ろの壁に当たりました。ですがその人間はまだ近付いてきます。私は諦めて地面に伏せました。しかしその人間は私を優しく撫でて、痛かったよねもう大丈夫だよと呟きました。驚きました。今まで人間は暴力を振るうだけの危険な生き物だと思っていたのですから。
それから人間は私を抱きかかえ、ポケモンセンターと呼ばれる施設へと走り始めました。その間にも人間はすぐ着くから大丈夫と何度も声を掛けてくれました。私の目から涙がこぼれました。その時は涙を理解出来ませんでしたが、今なら分かります。私は嬉しかったのです。嬉しくて悲しくて痛くて…様々な思いが詰まった涙だったのです。
ポケモンセンターに着いた人間は、そこにいた薄ピンクの人間に私を見せて助けてやってくれと叫んでいました。少し待つと台が運ばれて来て人間はそこにゆっくりと私を乗せました。私が運ばれていく時、その人間はひどく心配そうな顔をしていたのが印象に残っています。
時を現在に戻しましょう。
私はあの時の人間、レイと一緒に旅をしています。昔に比べてレイは大人びてきましたが少し頼りない所もまだ残っています。
仲間も増えました。フィルにラック、ライ、最後に朧。様々な種族のポケモンがレイに付いています。毎日が賑やかでとても楽しいです。
私はずっとレイの側にいます。
レイが嬉しい時は一緒に笑いたいです。
レイが悲しい時は一緒に泣きたいです。
レイが怒った時は一緒に大声で叫びたいです。
レイが困った時は一緒に悩みたいです。
今日レイと挑んだ5回目のジム戦、私は何もできずに負けてしまいました。
レイに悔しい思いをさせてしまいました。
レイのあんな顔…もう2度と見たくありません。
だから、私は強くなります。レイと一緒に!
あ!レイが呼んでます!
それでは、またどこかで…。