第23話 勝利の余韻〜進化の先の進化〜
「おはよう…。ふふふふ…!」
「何だよぉ…。レイ起きちまったのかぁ…?それと…レイ…?何か気持ちわりいぞぉ…。」
いつもより早く起きた俺は、首にぶら下げているキーストーンを見て笑いが止まらなくなってしまった。
それを見た朧に気持ち悪いと言われたので、お前も同じだと心の中で反論しておいた。
「うはははは!」
笑いが止まらない。あのキーストーンと、アブソルナイトを手に入れたんだぜ…!
「ウヘヘヘヘ…!」
笑いが止まらない。
「うぅん…。レイ…?朝からどうしました?何となく予想はつきますけど…。」
布団の中からルナがジト目でもぞもぞと這い出てくる。彼女の首に掛かっている薄い紺色のメガストーンが太陽の光を反射してキラキラと輝く。
「うへ…うへへへへっ!」
「やっぱりですか…。私もこれを手に入れることが出来たのは嬉しいですけど…。」
俺の視線に気付いたルナが自分のメガストーンと俺のキーストーンを交互に見て言う。
「いやぁ…。だってさぁ…。むふふふ。」
メガシンカしたルナのあの滅茶苦茶格好良い姿を思い出してまた笑う。あれは2度と忘れられない…!
「たったら…もう一度だけメガシンカでバトルしてみますか?でも、これ以上騒がないでくださいね?」
「よしやろうっ!」
ずっと笑っている俺にルナがやれやれといった様子で提案してくる。勿論即答して寝ているみんなを見守っておいてもらうために朧はお留守番をしていてもらう。
「2人だけで出掛けるのって久しぶりだよな。」
「そうですね。ヒオウギジムの前にはフィルが仲間になってましたからね…。」
ホテルを出た俺達の頬を風が撫でていく。少し感傷に浸ってしまったが、とりあえずアスイさんに聞いてみよう。
ポケモンセンターを訪れた俺達を見つけたアスイさんが手を振る。そして、その隣には…。
「レイくん!ジムバッジもらったんだぁ〜。ついに抜かれちゃったよ…。」
相変わらずカオリがいた。そうか。やっとカオリを追い越せたか…!それよりも!
「カオリ!1対1のバトルしようぜ!凄いもの見せてやるからさ!」
「うん!いいよ。凄いものかぁ…!楽しみだよ!」
カオリはルナを撫でながら言う。ルナはもうカオリに撫でられることに抵抗はないようだ。目を細めて嬉しそうにしている。
とりあえず外に出よう。
「よし!準備いいか?」
「いつでもいいよ!」
俺達は白い橋の上で向かい合う。カオリも勿論トトとバトルするようだ。
それじゃあ…バトルだ!
「早速見せるよ!ルナ本気で行こう!」
メガシンカ!キーストーンに触れて、叫ぶ。
キーストーンとアブソルナイトが強い光を放ち、ルナが青白い光に包まれる。そして光が収まるとルナは翼の生えた姿、『メガアブソル』になり大きく鳴く。
「な、何それ…!すごい!メガシンカってすごい!」
「話には聞いてたけど凄く格好良いわね!」
カオリとアスイさんが驚く。掴みは成功だ!それと…カオリは相変わらずオーバーリアクションだなぁ…。それとトトは口と目を大きく開いて固まっている。
「大丈夫かー?トトー?」
「ふぇ…!あ、大丈夫だよ。」
ずっと固まっているトトに呼びかけると、変な声を出して驚いたが気を取り戻してくれたようだ。カオリもようやく現実に戻ってきた。
「さて!ルナ、行くよ!」
「はい!」
少し落ち着いてバトルをしよう。深呼吸をして高ぶる気持ちを落ち着かせる。
「トト、コットンガードよ!」
「速攻で行くぞルナ!辻斬り!」
先に動いたのはルナだ。彼女は普段より1回り2回りも速い動きでトトに接近して、鋭い爪で横一線。スピードの乗った攻撃はトトの体力を刈り取るのに充分な威力だった。
「ほえぇ…。すごく強くなったはずのトトが一瞬で…。」
トトをアスイさんに診てもらいながら呆けたように呟く。バトルが終わるとルナは力を抜いて、いつもの姿へと戻る。俺とルナはハイタッチをする。やっぱりあの姿は格好いい。
カオリとアスイさんに付き合ってくれたことへの感謝と、次の街へ行くことを伝えてホテルへ戻る。
「やっぱりメガシンカ…いいよな!」
「そうですね。けど…もう朝早くから笑うのは止めてくださいね?」
ルナには凄くいい笑顔で釘を刺されてしまったので、あははと軽く笑っておいた。今後は少し自重しよう。
「ただいま〜。ってうわ!」
「俺もメガシンカ見せてほしかったぞ!」
帰ってきた俺にラックは体当たりの勢いで、腕に飛び乗って言う。確かにあの時、ラックは戦闘不能になってボールの中にいたからな…。
「ってな訳だ…。もう1回…やるか…。」
「ラックだけ仲間外れはひどいですから…仕方ないですね。」
そして本日2度目のメガシンカをラックに見せる。
ラックは驚いて固まってしまった。やっぱりそうなるよな。
「あれ…?」
「何だかふらふらします…。」
ルナの言う通りだ…。眩暈か…?いや違う。メガシンカの影響か?
「ルナ。お前もか…?」
「はい…。凄くふらふらします…。」
やばい…。意識が遠くなってきた…!
(フィル!アスイさんを呼んできてくれ…!頼んだ…ぞ…。)
何とかフィルに助けを呼んでくるように頼んだ俺は、ルナと一緒に意識を失った。
「うぅ…。ここは…ポケモンセンター?」
「ようやく目が覚めましたね。大丈夫ですかレイ。」
俺が目を覚ましたのはポケモンセンターだった。隣には既に目覚めていたルナが座っている。心配そうに俺を見ている彼女を撫でる。
「あ!レイ君。目覚めたわね。良かったわ。」
心底嬉しそうにしているアスイさんに俺達が倒れた原因を聞いてみた。
あすいさんが話してくれたことを要約すると…
メガシンカするには強い精神力が不可欠で俺達は精神力を消耗し過ぎた。
ということらしい。つまりは、メガシンカのし過ぎという訳だ。情けない理由だった。恥ずかしい事この上ない…。
とりあえず体調が悪くなっただけらしいが今後は十分に気を付けよう。
今の段階では1回が限度か…。よく考えて使わないと…。みんなに心配かけたくないしな。
俺達はアスイさんに礼を言ってポケモンセンターを出る。
この後ポケモンセンターの前で待っていたみんなのお説教タイムが始まったが、それはまた別のお話。