第5話 新たな仲間〜イーブイの災難〜
俺とカオリはサンギタウンに着いてから別れた。またバトルする約束をして…。
「寂しくなりましたね…。」俺の相棒、ルナが呟いた。
「確かにそうだなぁ…。でも、いつかまた会えるさ!」
務めて明るくしてみたが、ルナにはお見通しだったようで「無理はしないで下さいね。力になれるかは分かりませんが私に相談して下さい。」と不満気に言われた。
ヤバい…。泣いちまった…。
「実はさ…」
「っていう訳で俺は今まで友達がいなかったんだよ…。最初の友達はルナだったんだ。まぁ、今は…なんて言うか…その…家族みたいな存在なんだけどよ。」
あれから30分。俺はルナに全てを打ち明けた。
ルナは黙って聞いてくれ、肩の荷がおりた気がした。
「また心配させちまったな…!今度から何かあったらお前に相談するよ。」
「はい!」
ルナは人間に殺されかけた。
だけど俺を信じてくれる。
俺も同じ人間なのに。
俺だったら…出来ない。
ルナは特別だ。
改めてそう思う。
「この先にサンギ牧場というところがある。そこのモーモーミルクが美味いって聞いたから飲みに行こうか!」
ヒオウギジムに挑む前に気分転換も含めて、近所で有名なモーモーミルクを飲みにいく。
「いいですねっ!」
ルナが食い気味に答える。そして顔を赤く染める。俺はその様子に苦笑して、歩き出す。
幸い草むらからポケモンが出てくる事も無くスムーズに着くことができた。
しかし、そこで事件が起きた。
牧場の入り口、そこで1人の男と1匹のポケモン「イーブイ」が大声を出して揉めている。
「いい加減に離れろ!」
「嫌ですっ!」
「チッ…。いいか!お前は弱い!だから俺はお前を捨てる!分かったか!?出来損ないめ!!」
男はそう言ってイーブイを蹴った、それも何回も。
俺の中でプチンッと何かが切れる音がした。
「オイ!待てよ!そこのイーブイ、お前の相棒だろ!?何でそんなことできンだよ!」
「何だお前?人の話に口出してんじゃねえよ。見てみろこいつを…右耳が無いだろ?そのせいで危険察知が遅い。だから捨てるんだ。じゃあな。」
男はバイクで去っていく。
俺は追いかけようとしたが、ルナが服を噛み止めた。文句を言おうと思って振り返るとそこには足が震え、顔にはびっしりと汗をかいている。
「あ、あいつを追うのは…止めて下さい!あいつは…私の元…トレーナーです。」
ルナは震えながらそう言った。
「あいつが…お前を……?」
俺は静かに言った。そして決めた。
いつかあいつをぶっ倒す!!
「(あなたもなの…?)」
ひとまず牧場に入ろうと歩み始めるが誰かが話しかけてくる。しかし、その言葉は2重になって頭に反響する。歯を食いしばり声の主を探すと先ほどのイーブイがルナに話しかけている。彼女もまた歯を食いしばっている。
「(あなたもあの人間に捨てられたの…?)」
まただ…!頭が割れそうだ…!
これはイーブイがごく稀に持つとされる「シンクロ」だ。俺はまだリンクを制御出来ていない。そのためリンクは常に発動した状態なのだ。
対するイーブイもシンクロを制御出来ていない。
そして、リンクとシンクロは似た効果を持つので共鳴してしまったのだろう。
「そうです。私もあの人間に殴られ、蹴られ、捨てられました…。」
ルナは苦しみつつも答える。
「(じゃあ何で人間と一緒にいるの?)」
「この人間、レイは他の人間とは違います。あの人間とは違って瀕死の私を助けてくれました。」
ルナは笑顔で語る。
「レイ、お願いがあります。」
ルナはこちらに振り向き聞いてくる。何を言いたいかは予想はつく。
「分かった。いいぜ。だけどこいつの意志を最優先にしてやれよ!」
そう答えるとルナは笑顔になった。
「イーブイ、提案があります。私たちと旅をしませんか?レイはさっきの人間とは違います。あなたが
を悲しませることは決してしないでしょう。」
イーブイはしばらく考え、「分かった。私を仲間にしてください。」と答える。
俺は男が置いていったモンスターボールを踏んで壊した。そしてバッグからモンスターボールを取り出し突起部分をイーブイの額に優しく当てる。するとイーブイは光となって吸収される。ボールは3回揺れた後カチッという音がなる。初ゲットだ。
そのままイーブイを出してやり、名前を付ける。付ける名前はもう決めている。
「今日からお前の名前はフィルだ。どうかな?」
「いい名前です。これからよろしくお願いします…。」
フィルは少し緊張しながら言った。
ルナは満面の笑みで頷いた。