第12話 ヒウンシティ〜カオリとの再会〜
タチワキシティから船に揺られること4時間。俺達はついにヒウンシティに着いた。俺達は船から降り一言ずつ呟く。
「うえ…吐きそう…。」
「目が回ってフラフラします…。」
「ああ…ぎも゛ぢわるい…。」
「これは呪いなのか…。」
俺達は揃いも揃って船酔いしていた。とりあえずポケモンセンターへ行こう。
「残念だけど、船酔いは治せないわよ。」
受付のアスカさんが笑いながら言う。
「ですよねー。」
俺も苦笑いで応じる。
「すいませ〜ん!回復お願いしま〜す!」
俺がカウンターでぐったりしていると見慣れた顔がポケモンセンターへと飛び込んでくる。
「カオリか…。よお…。」
力無く挨拶する。
「レイ君!どうしたの!?それにルナちゃんも!?」
カオリも船に乗ってきたのだろう。なぜ元気なんだ…。
「ただの船酔いだよ…。それより元気になったらまたバトルしようぜ…。」
「うん!わたしはしばらくこの街にいるからいつでも連絡してね!またねルナちゃん!」
カオリはにっこりと笑う。
俺とルナは顔を見合わせ苦笑する。
それにしても体調が悪い。今日はもう寝よう。俺達はポケモンセンターの隣にあるトレーナー専用ホテルへ向かう。
翌日、目が覚めると船酔いは治っていた。大きく伸びをして目をしっかりと覚ます。フィルはもう起きていて太陽光を取りこんでいた。
「おはようフィル。もう大丈夫なのか?」
「おはよ〜レイ。もう元気だよ!」
フィルは俺に気付くと飛びついてきて頬を擦り寄せてくる。
「みんなを起こそうか。」
「そうだね!」
俺はラックを、フィルはルナをそれぞれ起こす。
「ラック、朝だぜ。起きろよー。」
「ルナ〜朝だよ〜。ほらほら!起きて〜。」
俺達は2人の体を軽く揺すり起こす。ラックはすぐに起きたがルナはまだ起きない。フィルはサイコキネシスを発動してルナを上下に揺らす。
「おいおい。流石にやり過ぎな。」
フィルの頭をぽんぽんと軽く叩く。
「は〜い。」
少し不服そうな顔をしながらもサイコキネシスを解除する。
「おはよう、レイ。」
「う〜ん…おはようございまふ。」
2人も起きた。ルナはまだ寝ぼけ眼だけど。
「2人とも。体調はどうだい。」
念のため聞いておく。
「僕は大丈夫だ。」
「私ももう大丈夫です。」
「そうか。良かった!」
みんな元気になったし、カオリとバトルしよう!ライブキャスターでカオリに連絡する。
『もしもし、レイ君?連絡くれたってことは元気になったの?』
「ああ。みんな元気になったよ。どこでバトルしようか…。」
『それならジムがある通りの奥に公園があるからそこでいいんじゃないかな?』
「そうだね。そうしようか!それじゃあまたあとで!」
『うん。あとでねー。』
通話を切る。やっぱりカオリは元気過ぎる気がする。
とりあえず支度しよう。カオリがどこまで強くなってるか…楽しみだ!
「うっわ…混雑し過ぎでしょ…。」
俺の口から出た言葉はみんなも感じていたようで顔が引きつる。
俺達はジムがある通りに来ているのだが、少しでも油断すると人の波に呑み込まる。これが都会の脅威か!
流石に危険だと思い流されかけていたラックとフィルにはボールに入ってもらっていて、ルナは俺が抱きかかえて歩く。ルナはあまりの人の多さに震えてしまっている。
(人が多い所に行くとルナちゃんにはもの凄いストレスになってしまうわ。)
アララギ博士の言ってた事が蘇る。それでも、これは俺とルナが決めたことだ。ルナを見ると震えてはいるがしっかりと頷く。俺は足早に公園へと移動する。
公園に着いた俺は抱きかかえていたルナを降ろし、腰の2つのボールからフィルとラックを出してやる。
「と、都会は凄いですね…。」
ルナは少し青ざめた顔で言う。この人の密集度は俺でもキツ過ぎる。
「水の無いとこで溺れかけた…。」
「あれは地獄か…?」
2人も疲れた顔をして言う。
「いたいた!レイく〜ん!あ!ルナちゃんも相変わらず可愛いね!」
「はぁ…カオリはいつも元気だな。」
走って来たカオリに溜息をつく。
「それじゃ、バトルしようか!」
「うん!」
見物客が集まる中、2度目のバトルが始まる。
「お願いね!トト!」
トトが出てくる。って、トトがチルタリスに進化してる!?びっくりしてカオリを見る。カオリはしてやったりと悪い笑顔を浮かべている。
「今回はラック!頼むぜ!」
「僕が?いいのか?」
名前を呼ばれ困惑するラックにもう一度、頼むと言うと渋々といった感じで前へ出る。ラックの戦い方を見てみたくてな。
「あ!新しい仲間だね!可愛いね!」
可愛いと言われた
「トト!いつも通り行くよ!コットンガード!」
「ラック!お前の戦い方を見せてくれ!」
「分かった。」
俺はラックの普段の戦い方を知らないのでとりあえずは任せることにした。
トトは進化前よりふわふわになった羽毛で体を包み始める。そしてラックは少し苦しそうな表情をしている。よく見るとラックの影で何かが蠢いている。
「ラックどうした!?」
慌てて声をかける。
「なんでもない。呪いを発動しただけだ。それと集中しないと発動できないから話すのは後にしてくれないか?」
「あ、ああ…悪かった。」
苦しそうに見えただけか。なら何も問題ない。
「なんかマズそうな感じがする。予定変更でついばむ攻撃よ!」
呪いを発動させ続けるラックをよそにトトはぱたぱたと羽ばたき空中へ。そのまま急降下してラックをついばむ。彼は痛そうな素振りは見せるもそこまでダメージを受けている様子はない。
「ふぅ…。素早くはなくなったけど攻撃防御どちらもさっきとは比べると桁違いに強くなったはずだ。ただ使うと体が重くなるのが欠点だが…。」
呪いを発動し終わったラックが体に影を纏った、なんかカッコいい。
「トト、もう1回ついばむ攻撃よ!」
「ラック!捨て身タックルだ!」
トトはもう1度急降下してついばむ。だがラックにはほぼ効いていないようだ。そしてラックは影の力を借りて短距離の超加速。それを利用してトトへタックルするとトトは殴られたかのように吹き飛ばされ一撃で戦闘不能となる。
「え…?」
「へ……?」
2人は呆然とする。先に正気を取り戻したのは俺だった。
「一撃であの防御を突破した…?嘘だろ!?凄すぎる!」
後ろを見てみるとルナとフィルも信じられないといった表情でトトとラックを交互に見ている。
「うそ…。信じられない…。凄いねその子…。」
正気に戻ったカオリが目を丸くして言う。
「とりあえず…ポケモンセンターに行こうか…。」
「そうだね…。」
ポケモンセンターに移動した俺達は治療してもらっている間、アスカさんに『呪い』という技について聞くことにした。
「呪いという技はね使うポケモンのタイプによって2つの効果に分かれるの。まずはゴーストタイプが使う場合ね。ゴーストタイプが使う呪いはその名の通り自分の体力を糧に相手に呪いをかけるの。次に他のタイプが呪いを使う場合ね。その場合は少し勝手が違って自分の身に影を纏うことで自分の能力を底上げするの。ただし素早さは下がっていくけどね。あと、何故かは分からないけど呪いを持っているポケモンは他のポケモンが近寄らないらしいわ。」
なるほど。よく分かった。じゃあゴーストタイプ相手のバトルは要注意だな…。
俺達は治療してもらったポケモン達を受け取りポケモンセンターを出る。カオリはこのまま4番道路を抜けてライモンシティに向かうらしい。もうヒウンジム勝ったのかよ…。
ホテルに着いた俺は明日のヒウンジム戦に活かすため、今日のバトルについて語り合った。
夜も更けてきてみんなが寝ようとする中、ラックだけは窓際で空を見上げていた。不思議には思ったが俺も睡魔に負けて夢の中へと落ちていった。