第11話 呪いを持って生まれた子〜アスノのお願い〜
ジムバッジを手に入れた後俺はすぐにポケモンセンターへと駆け込んだ。2人を回復してもらうためだ。一応異常がなかったかどうかを聞いたのだが、どくどくの影響も無かったらしく大丈夫なようだ。とりあえず安心だ。しかし、ホミカがどくどくを使ってくるとは思わなかった。本当に怖いバトルだった。
そんな事を考えながらポケモンセンターを出ようとした時、アスノさんに呼び止められた。
「急に呼び止めてごめんね。ちょっと…相談があって…ね。」
急に暗い表情になるアスノさん。
「どうしたんです?何か言いにくい事ですか?もし言いにくい事なら明日まで待てますんで。じゃあ。」
「待って!……今言うわ。」
俺はカウンターへと戻る。
「実はね…さっきここの外でイーブイを見つけたんだ。最初は野生のポケモンかな?って思って見てたんだけどこの子の首には手紙がついていたの。不思議に思って読んだら…」
そこで言葉に詰まるアスノさん。手に持っている手紙を俺に渡してくる。読め、ということだろう。
結論から言おう。
俺は手紙のイーブイと話す必要があるようだ。
手紙の内容をまとめると、
1、この手紙はイーブイの友達だった人間が書いたものだ。
2、このイーブイは「呪い」というものを持っている。
3、その呪いが原因でこのイーブイには他のポケモンが寄り付かない。
4、呪いは人間には効かない。
こんな感じだ。
というわけで、俺はこのイーブイと会わなければいけない。
「アスノさん。この子に会わせてください!」
「いいわ。付いてきて。」
そのイーブイはカウンターの奥、回復装置の横にいた。
「…また人間か。悪い事は言わない。僕には近付かない方がいい。」
そのイーブイは俺の存在に気付くと気だるげに言った。
「いいや。近付くさ。俺は君と話がしたいからな。」
優しく話し掛けながら歩み寄る。
「え!?お前、話せるのか?」
イーブイは心底驚いた。
「俺はレイだぜ。よろしくな!」
「レイか…。僕の名前はまだ無い。それより何故君のポケモンは僕から逃げない!?呪いが効かないポケモンがいるのか…?」
そういえば何で2人は呪いが効いて無いのだろうか。
「何故逃げる必要が?」
「う〜ん…。多分あなたの話す言葉は普通のポケモンと少し違うからじゃないかな?」
ん?言葉が普通と違う?どういうことだ…。
「なんていうかなー、ここに住んでる人間が話す言葉と、ここ以外に住んでる人間が話す言葉が違う…みたいな感じ!」
心を読んだフィルが一生懸命答えてくれる。
なるほど。つまり、呪いを持ってるポケモンと普通のポケモンは話す言語が違うのか。そして、言葉が分からないと仲良くなれない。だから、ポケモン達は離れていく。
ということは、やっぱり俺が翻訳機としてリンクで、呪いを持つポケモンと他のポケモンを繋げることが出来るのか。ならば
「なあイーブイ、俺と一緒に来ないか?俺ならお前の言葉をみんなに伝えることが出来る!」
「…本当に?……本当に他のポケモンと話せるのか…?」
イーブイは驚いたような、感動したような声で聞いてくる。
「ああ、勿論だ!何て言ったって俺はポケモンとポケモン、人間とポケモンを繋ぐリンクを持ったただ1人の人間、レイだからな!」
大げさに名乗ってみる。
「おかしい人間だな…。でも話していると心があったかくなる。不思議な感覚だ…。君といると僕は…なんでも出来る気がする。だから…たから、僕を君の仲間にしてくれ!」
「俺は最初からそのつもりでここに来たんだ。お前を仲間にしないなんて選択肢は無いぜ。とりあえず名前を決める。今日からお前の名前はラックだ!ラック、これからよろしく!」
「ラック…か。分かった!よろしく頼むよ、レイ。」
ラックはにこりと笑う。
俺はラックの目の前にボールを置く。ラックは自分の右足を突起に乗せ、光となって吸収される。ボールは1回のみ揺れてラックを捕まえたことを知らせる。ボールを手に取り、突起を押してラックを外へ出す。
「改めて…ラック!よろしくな!」
「ああ。これからよろしく、レイ。」
俺とラックは静かに笑い合う。
こうして呪いを持ったラックと出会い、仲間としたレイは急いで船に乗り込みヒウンシティへと出発するのだった。