第8.5話 いざ、温泉へ。
注…今回は本編と番外編の間のようなものになります。本編にはほとんど関係ありませんが、お付き合いお願い致します。
あ〜…疲れた…。何故だか知らないけど疲れた…。
「あ…。温泉行きてぇ〜。」
不意に出たその言葉。その言葉は部屋を無意味に駆け巡る…ことは無かった。
「温泉…?それってどういうものですか?」
俺の横で座っているアブソル、ルナが反応する。
「え?温泉?何それ?」
どこからか話を聞きつけたエーフィ、フィルが駆けてきた。
そういえば2人、少し砂埃が付いてしまっている気がする。いい機会だし2人を温泉に連れて行こうか!
「じゃあ2人とも温泉、行ってみるか!」
心を読まれているだろうが提案してみる。まあ答えはなんとなく分かるんだけどね。
「はい!」
「行こ〜!」
案の定2人は同時に返事をする。
ヒオウギシティには田舎にも関わらずポケモンセンターやジムなどのトレーナーのための施設が存在する。
しかしヒオウギにはもう1つ、一部の人が知る温泉があるのだ。俺は小さい頃に親父と行ったことがあり知っていた。
温泉に継いだ俺逹はとりあえず中に入る。
すると久しぶりに見る顔が。
「お!レイじゃねえか!久しぶり!」
彼はウズキ。俺の幼馴染みだ。ここしばらく会ってなかったから元気か心配だったが、相変わらず問題なさそうで良かった。
「よっ!久々に入りに来てやったぜ。ただし2人連れて来たけどな。」
軽く返事を返す。
「うおっ!お前ポケモントレーナーになったのか!」
ウズキが驚愕の声を漏らす。
「ん。まあな。それよりお前受付なんだから仕事しろよ…。」
適当に答えて、サボるな!と通じないであろう念を送る。
「人間1人と小型と中型ポケモン1人ずつでよろしくな〜。」
手短にそう伝えて奥へ進む。するとウズキが、800円だからな!用意しとけよ〜。と言う声が聞こえる。
ここ、ヒオウギ温泉のうりはポケモンと一緒に入れること、そして料金の安さだ。特に料金は破格だ。例えば、人間とフィルのような小型のポケモンは200円、ルナのような中型のポケモンは300円、ガブリアスのような大型ポケモンは500円、それと伝説のポケモンなどの超大型ポケモンは1000円といった価格設定である。最後のはウズキの父親が考えたらしいが…何を考えているんだろうか…。
とりあえず、水着に着替え扉を抜ける。そこには湯気が漂う天然温泉がある。幸い、俺達以外に誰もいない。貸し切り状態だ。
さて、入るか。まずは足先から浸かる。そしてそのままゆっくりと全身浸かる。
あぁ〜…。疲れが吹き飛ぶ〜…!
「お前達もそんなとこでボーっとしてないで入ろうぜ。」
俺が促すとフィルが恐る恐る片足を浸ける。一瞬温かさにびっくりしたようだが、害が無いことを察知したらしく勢い良く飛び込み俺の所まで泳いできた。
「あったか〜い!」
フィルは心底気持ち良さそうにすいすい泳ぐ。
「お〜いルナ?どうした?入ろうぜ〜。」
入り口付近でウロウロしているルナに呼びかけた。
「で、でも…。」
「いーからさっさと入りなよ〜。も〜しょうがないなぁ〜。よい…しょ、っと!」
「うわっ!?」
それでもウロウロするルナにしびれを切らしたフィルがサイコキネシスで無理やり温泉へドボン。
最初はパニックになるルナだったが温かさに段々と落ち着き今では俺の肩に頭の乗せ寝そうになっている。やっぱり温泉は無敵だ。
あ。ルナ寝た。すやすやと規則正しい寝息が聞こえてくる。ちなみに、フィルがサイコキネシスでルナを少し浮かしてくれているので肩は疲れない。フィルは気配り上手なのだ。すると彼女はエッヘッヘッヘッと声を震わせながら笑う。いや、泳ぎ疲れてんじゃねえか…。これじゃ温泉に来た意味が無い気がするのだがフィル自身が楽しいのならいいんだけど…。
「う…ん……?ここ…は?」
あ、目覚めたようだな。
状況を思い出したルナがいつものマシンガンのような謝罪を繰り出したのは言うまでもないことだろう。
温泉から上がった俺達は代金を払いウズキにまた来ると伝えてヒオウギ温泉を出る。少しのぼせてしまったが疲れはすっかり消えていた。散々泳いだフィルは空中に浮かびながら眠るという芸当を見せている。俺は浮かんだフィルの前足を軽く押す。すると、彼女は空中を滑って前へ進む。面白がって前後左右にすすーっと滑らせていると時々俺やルナも浮かばされる。無差別過ぎるだろ。
そんなこんなで何とか家に着く。念のため2人の体を見てみるが汚れは綺麗になっている。それに2人ともリフレッシュ出来たようだし。良かった良かった!
1週間に1回は温泉に連れて行ってやろうと密かに思う。しかし、その心の声がフィルには聞こえていることに何故か気付かないレイであった。