第4話 初バトル〜ルナの力〜
俺は古いけど新しくなった図鑑をルナに向けて画面を見る。
《アブソル(ルナ)》
・レベル…39
・特性…プレッシャー
・技…サイコカッター、つじぎり、フェイント、つるぎのまい
・持ち物…なし
「ルナ…強すぎるだろ…」
そう。これは図鑑の機能『ステータスチェック』というものだ。
そしてルナの強さにびっくりして思わず絞り出すような声が出てしまった。流石にレベルが高すぎる…。
説明がまだだったがレベルというのはそのポケモンが積んできた経験を数値として表したものだ。ちなみにカオリのトトは17だった。駆け出しのトレーナーが最初にもらえるポケモンはレベル5であることからルナの強さがわかるはずだ。
当の本人は「私そんなに強かったんですか?えへへへ…。」とこの笑顔である。まあ強い分には危ない目に合いにくいからこちらとしてはうれしいが…。それに可愛いし!
「どう…する…?」
「どう…しよっか?」
今から行うのはお互いにとって初めてのバトルだ。こうも強さに差があると勝負にならない。
「ならわたしが何とかするよ!」
そう言って右手を大きく振ったのはベルさんだった。
「出ておいで。ムシャーナ!」
ボールから出てきたムシャーナはベルに撫でられて嬉しそうだ。
「ムシャーナお願い。ワンダールームでここにいるポケモンたちの強さを同じにして。」
「分かったわ…。」
ムシャーナは額から勢いよく煙を出して四角い空間を作った。
「ありがとうムシャーナ!」
「またいつでも呼んでちょうだい…。」
ムシャーナは微笑んでボールに戻っていった。
俺もムシャーナにお礼を言ったら「あなた…凄いわね…。」と言われた。何が凄いのだろうか…。
さて、気を取り直してバトルと行きたいのだが、念のためステータスチェックで2人を見てみる。すると、2人のレベルが28になっていた。うん。ばっちりだ。
俺はルナに向き合い、
「ルナ、頑張ろうな!」
にやりと笑う。
「はい!」
ルナもまたにやりと笑い、構える。
「それじゃあ、始めようか!」
「うん!楽しもう!」
ちなみに審判は博士がやってくれる。
「準備はいいようね!それじゃ、バトル開始!」
「ルナ、つるぎのまい!」
「トト、コットンガードよ!」
早速技を繰り出した両者。最初は変化技だ。
ルナは激しい舞を踊り自身を高ぶらせ、トトは自分の羽毛で自分を包んだ。
素早さはルナの方がやや速いのでこのまま突っ切ることにした。
「ルナ、サイコカッターだ!」
「トト、もう一度コットンガードよ!」
ルナは角にサイコパワーを溜めトトへと飛ばす。だがトトの厚い羽毛に阻まれあまり効いていない。そして、トトはさらに羽毛を纏い足と頭以外は羽毛で包まれてしまった。
「マズい…。」
このままだとジリ貧になってしまう。思わず苦虫を擦り潰したような表情になってしまう。
ルナも考えている事は同じようで時々こちらを見て「どうします…?」と心配そうに見つめてくる。
何やってんだ俺は!相棒にこんな顔させて…。まず俺がしっかりしなければ…。
「はぁ………!」大きな溜め息を1つ吐くと少し気が楽になった。
「ごめんな。もう大丈夫だ!」
そう言うとルナは笑顔になってくれた。良かった。
そして、いいアイデアを思いついた。
「ルナ?サイコカッターをもっと長くできるか?」
「どういう意味ですか?」ルナは首を傾げた。
「サイコカッターをもっと長く伸ばすんだ。そしてそれを飛ばさないでそのまま相手を斬るんだよ。要するにサイコパワーを剣にするイメージだよ!」
ルナはしばらく考えていたが、はっとした表情になり「いいですね!」と言ってくれた。
「ルナ、頼むぞ!」
「トト、つつく攻撃よ!」
トトは勢いをつけて嘴でつつこうとしてくるがそれを避けて先ほどよりも長くなったサイコカッターでトトを斬り伏せた。
「そこまで!勝者レイ君!」
博士が終了の合図を出した。どうやら羽毛の防御を突破して当てることができたようだ。
「ありがとうございました!」
「負けちゃったけど楽しかったよ。ありがとう!」
お礼をして頑張った2人をポケモンセンターに連れて行き回復してもらった。
ちなみに、あの技の名前は「サイコブレード」と名付けた。滅茶苦茶格好いい技だった。
俺はカウンターの奥から飛び出てきたルナに驚きつつもしっかりと抱きしめてやる。ルナは満面の笑みで顔を舐めてきた。
やっぱりルナは最高の相棒だ!
俺はこいつを何が何でも守る!改めてそう決心した。
一方のルナもレイの存在が自身の中で無くてはならない大切な存在として根付いている、そのことを自覚し始めていた。
レイに危険が及ぶ時は私が守らなくては。ルナは決心した。
その頃、アララギ研究所では…
「レイ君…。あなたはポケモンと会話が出来る唯一の存在よ…。苦労もするだろうけど…ルナちゃんと協力して頑張るのよ。」
アララギは1人そう呟いた。
次の日…
俺とカオリはいよいよ旅立つ。
昨日のバトルの後、「明日19番道路に出るとき一緒に出ない?」と誘われた。断る理由もないので勿論了解した。
「君たちは今日から正式なポケモントレーナーになります!辛いことや苦しいこともあるかもしれません。でも君たちのそばにはいつもポケモンがいてくれる。それを忘れないでね!」
博士はそこで言葉を区切る。
「それじゃあ、ベストウィッシュ!良い旅を!」
「アララギ博士、ありがとうございました。行ってきます!」
「行ってきま〜す!」
それぞれ挨拶が済んだのでいよいよ初めの一歩を踏み出す。
「「せーの!」」
ついに俺達の冒険の幕が上がった。