第3話 アララギ研究所〜思い合う2人〜
俺の能力が明らかになった後、俺はカオリと一緒にアララギ研究所に行くことになった。カオリはまだ図鑑を貰っていないようなのでアララギ博士に貰いに行くそうだ。
話は変わるが、ルナはカオリと仲良くなった。時々会話もしていた。勿論俺が通訳だ。
それと新たに分かったことがある。ルナとカオリが会話をしていた時に気付いたことなんだが、人間の言葉はポケモンには通じない。バトルなどで命令するときの技名などは通じているのだが、それ以外のことは言葉が通じないようだ。勿論ポケモンの発する言葉も人間には理解できない。例えるなら日本語を知らない外国人が英語を知らない日本人と喋っている、みたいな感じだ。だからポケモンたちは人の表情や声のトーンなどで何を言っているのか判断しているらしい。
じゃあ何で俺はアブソルと会話出来ているのか?という話になるが、それも予想はついている。
仮説だが俺の能力はポケモンでいうところの特性
シンクロに値するものらしい。カオリの母親のポケモン、サーナイトに協力してもらったのだが、俺がルナに話しかける時とサーナイトがシンクロを使ってルナに話しかける時の感覚が似ているらしい。
俺はこの能力を「リンク」と呼ぶことにした。
ちなみにサーナイトは俺が会話できることに驚いてサイコキネシスを発動してしまった。今度からリンクでポケモンと話すときは気を付けよう。
それと、リンクで他の人間の言葉をポケモンや人間にそのまま伝えることが出来ることも分かった。俺は翻訳機かなんかなのだろうか…。
俺が翻訳機だったことが分かったとき目的の場所、アララギ研究所に着いた。
中に入ってみるとアララギ博士はいなかった。アララギ博士に俺の能力について聞いてみたかったんだけどな…。
「あなたたちがレイくんとカオリちゃんだね。アララギ博士から聞いてるよ。博士は今カノコタウンに戻っちゃってるからいないんだ。」
どうしたものかときょろきょろしていたら女性に話しかけられた。確かこの人は…あ、そうだアララギ博士の助手をしてるベルさんだ。
そしてルナは俺にピッタリとくっ付いている。昔のベルさんはポケモンを見つけると飛びついて来ると噂になっていたので心配していたが徒労だったようだ。
「始めまして。俺がレイです。こっちが相棒のアブソル、ルナです。」
「カオリですっ!それでこっちがパートナーのトトですっ!」
「えーっと…レイくんが図鑑のバージョンアップで、カオリちゃんが図鑑を貰いに来たんだよね?ちょっと待っててね!」
と言って走り出したのだが、急に戻ってきて「そこに博士の番号があるからライブキャスターに登録しといてね!」と一言。
忙しい人だな…。
しばらくしてベルさんが戻ってきた。
「はい。これがカオリちゃんの図鑑ね!あとレイくんは博士に連絡してね。なんか博士が話したいことがあるらしいから!」
アララギ博士が俺を呼び出す?疑問に思いつつも一旦外に出て連絡してみる。
『アララギです!君がレイ君だね?ちょっと待っててちょうだい!』ブツッ
「は?」意味の分からなさに軽くキレてしまったがアララギ博士はこんな人だったな…。大きな溜息をすると心配してルナがすり寄って何か問題でも?と聞いてきたが、大丈夫だよ。と伝え頭を撫でてやった。
5分ほど経った頃だろうか。
上空でバサッバサッと大きな音が聞こえた。上を見るとアララギ博士がウォーグルに乗っているのが見えた。あの博士とんでもない人だな。まさかカノコタウンから飛んでくるとは…。
「ハァーイ!お待たせ!改めて自己紹介するわね。私はアララギです!ポケモンの起源について研究しているわ!」
「知ってますよ…。で、俺に話したい事って何ですか?」
「じゃあいきなりだけど本題に入るわね。レイ君はモンスターボール持ってる?」
「持ってますが」
「じゃあ話は早いわね。レイ君。その子、ルナちゃんをボールに入れてあげなさい。あ!もちろん一生入れてなさいっていうわけじゃないからね!」
「いきなりですね…。何でですか?」
「ルナちゃんは人間が苦手なんでしょ?人間が多くいるところに行く時にそのまま連れて行ったらルナちゃんにとっては途轍もないストレスになってしまうわ。それに何かあった時もボールに入れてあげれば安全だしね!」
ああそうか。完全に失念してた。ボールに入れておけばルナのためになる。だが多分ルナは反対すると思う。
「分かりました。ですがルナはボールに入りたくないと思いますし、正直俺も入れたくない…。じゃあ一応話してきます。」
「分かったわ…。でも、2人でよく話し合ってね。じゃあその間に図鑑のバージョンアップは済ませておくわね!」
「はい。」
俺は博士に図鑑を渡してからルナと街の見晴台に移動した。
俺はベンチに座り軽い溜息を1つ。ルナは俺の隣に座る。サイコソーダを2人で分けて飲む。シュワシュワとしたのどごしが俺の心を落ち着けてくれる。
「……お前はどうしたい?」
博士の話をルナに垂れ流しておいたので考えは固まっているはずだ…。
「私はやっぱりご主人様とずっと一緒にいたいです。だからボールに入るのは…嫌です…。」
「そっか。良かった。正直俺もお前をボールに入れるのは嫌だったからな。」
そういうとルナは目をうるうるさせて飛びついてきた。可愛い奴め…。思い切り撫でてやる!
おっと危ない。もう1つの目的を忘れるとこだった。
「ルナ、俺のことはレイって呼んでくれよ。ご主人様って呼ばれるとなんか寂しいんだよ。」
「分かりました。これからもよろしくお願いします、レイ!」
うん。やっぱこっちの方がいいな!
「おう!それじゃあ戻るか!」
あまり博士を待たせすぎてはいけないからな。
「そうですね。」
「…なんか2人の表情、変ったわね!」
博士は俺とルナが帰ってくるとそう言った。
「少ししか変わってませんよ。」
変わったのは呼び方だけだ。
「それで?答えは出たの?」
「はい。やっぱりボールには入れません。」
「あらら。やっぱりね…。分かったわ!それもあなた達の決めたことだものね!」
俺とルナは同時に頷く。
「はい。図鑑のバージョンアップは終わってるわ。それと…これもあげちゃう!」
そう言って博士が取り出したのは白い石?みたいなものだ。
「なんですか?これ」
「これはライトストーンと言って伝説のポケモンが眠っているといわれている石よ。あなた達ならこの石を任せられる!と思ってね。」
「は、はい。ありがとうございます。」
成り行きで伝説のポケモンが眠る石をもらってしまった…。
「あ〜…。説明長かったぁ〜。」
「ようカオリ。そっちはどうだった?」
「私は…ジャーン!どう?可愛いでしょっ?すごいよねぇ…!」
と興奮気味に見せてきたのは新品の図鑑だった。
トトは「僕に何かを見せつけてすごく笑ってた。ちょっと不気味だったよ…。」と言っている。
カオリ…ほどほどにな…。
「あ!そうだ!あなた達バトルしてみれば?」
アララギ博士が名案だ、という顔で提案してきた。
「いいですねっ!やろう!レイ君!」
「あ、ああ…。」
またもや、成り行きでバトルすることになった。
俺とルナは顔を見合わせて苦笑するしかなかった。