第2話 カオリとの出会い〜レイの能力〜
俺たちが住んでいるここ、ヒオウギシティについて話しておく。
俺たちが住むヒオウギシティはイッシュ地方タウンマップの左下に位置するこぢんまりとした街だ。ヒオウギにはあの有名なポケモン博士のアララギ博士の研究所があり、ポケモン図鑑の完成度を見てくれる。
そして、最近になってジムも出来た。そこのジムリーダーは俺と同じくらいの年でノーマルタイプの使い手という。なんでも、前チャンピオンのアデクさんに推薦してもらったそう。凄いよなぁ…。
さて、話は変わるが俺達はまずアララギ研究所に行こうと思う。
親父に「アララギ研究所で図鑑をバージョンアップしてもらってこい。」と言われた。なにしろ親父が使ってた時とは発見されてるポケモンの数が桁違いだからな。
気合いを込めて家から一歩踏み出す。興奮が込み上げてくる。今日から俺はポケモントレーナーになるんだ…!
ふとルナを見るとやはり彼女も興奮していた。尻尾をちぎれそうな程激しく振っている。やがて俺がクスクスと笑ってることに気付いたルナは顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでしまった。俺がすぐに謝ったら、振り返って「ご主人様はいつも通りですね。」と微笑みながら言われてしまった。
一本取られた。今度は俺が顔を真っ赤にした。ルナはその様子を見てふふふ、と笑った。とんでもなく恥ずかしい…。仕返しとして全身を撫でまくってやった。
「ふふふ…。楽しそうですね…!」
俺とルナが家の前でじゃれ合っていると、1人の女性が笑いながら近寄ってきた。よく見ると腰に小さくなったモンスターボールが1つぶら下がってる。
ルナは一瞬で俺の後ろに隠れてしまった。やっぱり初対面の人は厳しいか…。
「恥ずかしいとこみせちまったな。」
「ううん、とっても仲良しなんだね!もしかしてあなたも今日からトレーナーなの?」
「ああ!そうだぜ。君もか?」
「うん!そうだよ。あ!自己紹介がまだだったね。わたしはカオリ。そしてこっちが……パートナーのチルット、トトっていうんだ!」
そういってカオリはボールからチルットのトトを出した。
「よ、よろしくね…」
トトは恥ずかしがりながら挨拶した。
「可愛いな!撫でてもいいか?」
「うん!いいよ!」
俺はトトに話しかけたつもりがカオリが答えてくれた。
トトにも確認したが大丈夫だったので撫でさせてもらう。ちなみにルナはまだ俺の後ろに隠れている。
「うわぁぁ〜!フッサフサだなぁ!」
トトの羽毛は良く手入れされていてフワフワだった。
トトが「えへへへ」と照れ笑いをしながらカオリの元へと戻っていった。
「ルナ、少し頑張ってカオリに撫でてもらおう。」
俺は後ろにいるルナに話しかけた。トラウマなのだろうけどルナには苦手を克服してもらいたいからな。
「え…!?で、でも…!私は……無理です…。」
「お前なら出来るさ!それに、トトを見てみろ。トトはどう思ってる?カオリといることを嬉しく思ってるだろ?カオリはお前に酷いことをしたクズとは違う。だから頑張ってみないか?」
「分かりました…。頑張ってみます…。」
俺は必死に説得した。ルナも渋々といった感じだが納得してくれたようだ。
「俺はレイ。こっちはルナ、俺の最高の相棒だ!」
「うわぁ…!可愛いっ!この子なんていうポケモンなの?」
「アブソルっていうポケモンだよ。触ってもいいけど優しく頼むよ。昔人間に酷いことされたらしいから。」
「そうなんだ…。分かったよ。」
カオリはゆっくりとルナに近付いていく。ルナは少し震えて尻尾も下がってしまっている。
「大丈夫だよ。わたしは乱暴なことはしないよ。」
カオリはそう言ってゆっくりと撫で始めた。最初はガチガチになっていたルナも徐々に緊張が解けてきたようで尻尾を振りだした。
「偉いぞルナ!これで少し克服出来たな!」
「はい!」
ルナはタックルするような勢いで俺に飛びついてきた。
「それより、レイ君はポケモンの言っていることが分かってるみたいだね!」
「分かるよ?トトもカオリちゃんは優しくて大好き!って言ってるし。」
「え!?レイ君凄いよ!!ポケモンたちの言葉が分かるなんて!」
カオリは心底おどろいた表情をしていた。どうやらポケモンの言葉が分かるのは普通ではないらしい。結構ショックだ。子供のころから近所の家のポケモンと話していたからな…。
まあ、この力があったからルナと出会えたんだよな…。運命が導いてくれたのか…。